表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/218

音楽会の季節⑬

聞きたくなかった。


何であんなとこにあたし、居たんだろう・・・


あの声は・・・


江藤先生。


今なら分かる。


何であんなにあたしに突っかかってきたか。


なんで更衣室に連れて行ったか。


なんであたしにあんなにしつこく言ったのか。


そうだったんだ・・・


あたしの知らない時間が


・・・・あったんだ・・・。


思いこみじゃなくて、ほんとに。


だから、あんなに必死に・・・・





何にも知らなかったのはあたしだけ。


雄ちゃんも知ってたんだ・・・


あたしは、何も知らなかった。


雄ちゃん、しょうもないことじゃなかったんだね・・・


あたしの心配は、外れてなかったじゃない・・・


あたしだけ


知らなかったんだ・・・・・・





どのくらい時間がたっただろう。


辺りはすっかり暗くなった。


倉庫から出て職員室に帰る。


教頭先生が一人居るだけだった。


他の先生は教室かな・・・


いつも早く帰る先生達はもういないだろう。


あたしも帰ろう。


教頭先生は電話中。


あたしは左手から指輪を外すと


雄ちゃんの机の上にそっと置いた。


そして、


ゆがみそうになる景色にぐっと唇をかみしめて


学校を後にした。





「これで、明日の準備はばっちりだな。」


「そうですね。雄ちゃん先生、掃除までばっちりやって


すごいです。ぼく、気が付かなかったなぁ。」


「あ、あと、楽譜、もう一度見直しておこうかな。


お前も復習やっとくだろ?」


「はい、じゃ、今から職員室に帰って楽譜のおさらいしましょう。」


職員室に帰ってきたら、机の上に何かある。


「あれ?なんですか?それ・・」


これは、俺がはめてやった指輪じゃないか・・・





予想はしてたけど、かなり早く


雄ちゃんはあたしの部屋に飛んできた。


ドアをどんどん叩いて


「居るんだろ!開けろよ!」


近所迷惑でしょうが・・・・・


ドアを開けるなり


「お前の手かしてみろ!」


雄ちゃんは何もはまっていない薬指をみて


「なんだよ!これ!」


あたしの目の前にさっき置いてきた指輪を出した。


「これはめている自信ないから・・・」


あたしはうつむきながら言った。


「何があったんだ?」


そんなこと言わせる気?


「黙ってちゃ分かんないだろ!」


「そうよ!黙ってたから分からなかったのよ!」


あたし、我慢の限界。


顔を押さえて、泣き出してしまった。


え?って顔して雄ちゃんは黙ってしまった。





しーーんとした部屋。


あたしがしゃくり上げる音だけしか聞こえない。


どのくらいそのままだったろう。


雄ちゃんがあたしの手をそっと取って


あたしが置いてきた指輪をもう一度はめようとした。


手を振り払ったあたし。


勢いではね飛ばされた指輪は扉にぶつかった。


その音がやけに大きく聞こえる。


「何があったか言ってみろよ。」


「聞いちゃったの・・・・」


「やっぱりそうか・・・ゴメン。でも済んだことだ。」


「・・・・・済んでないって・・・・」


「俺の言うことが信じられないか?」


・・・・・・・・・・・


「俺を信じろ。な?」


・・・・・・・・・・・


「信じろって言ってるだろ!迷うんじゃねー!」


そう言って雄ちゃんはあたしを抱き寄せたけど


あたしの周りには何だかガラスが貼ってるようで


何を聞いても外の世界の遠い声にしか聞こえなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ