音楽会の季節⑥
電車を降りたら
あたしの部屋まで15分。
「雄ちゃん、今日どうやって帰るの?」
飲酒運転は出来ないでしょ。
って、雄ちゃん、朝から電車で来てたっけ・・・
電車で帰るなら、駅でさよならかな・・・
寂しいな・・・
「一人で帰らせたりしねーよ。心配すんな。」
心配してるあたしの顔見てそう言った。
雄ちゃんはあたしの気持ち、読めるの?
「お前の考えてることくらい分かるぞ。
むちゃくちゃ分かり易いからな・・・」
そうなんですか・・・
ゆっくり並んで歩いてると
いつまでもこのまま歩いていたくなる。
だんだん近づいてくるデートの終わりに
何だか切なくなる。
自然につないでいた雄ちゃんの手をぎゅっと握った。
ふっとこっちを見て優しくニコッとほほえんで
雄ちゃんもギュってあたしの手を握り返した。
いくらゆっくり歩いても
いつしかあたし達は、部屋の前に着いてしまった。
「コーヒー飲んでく?」
あたしは雄ちゃんに聞いた。
「そうだな。」
今日買ったお揃いのカップでコーヒーを飲んだ。
「これ、学校じゃ使えないね。」
あたしが残念そうに言うと、
「ここにおいといていいか?」
と雄ちゃんが言った。
「せめてコップくらい一緒においときたくってさ。」
「うん。」
ふと思い出したように、
雄ちゃんは、
「そうだ、忘れるといけないから・・・」
って、ポケットからちっちゃな包みを取り出した。
「これ、かわいかったから。開けてみな」
中から出てきたのは、
ラピスラズリを抱えている天使がついたペンダント。
これ、今日お店であたしがかわいいなーって見てたやつ・・・
いつの間に・・・
固まってるあたしを見て、雄ちゃんは???
「あれ?喜ぶかと思ったのにな。おかしいなぁ。」
・・・・・・・・・
雄ちゃんは固まったままのあたしに困った顔をした。
「なに固まってんだよ。おい!」
固まってたというより、どう反応したらいいか
困ってた。
嬉しすぎて。
心の中はふるえてた。
目はもう少しで泣き出しそう。
それは嬉しいからか寂しいからか分かんないけど。
いろんな言葉があふれそうで
何からいっていいか分かんなくなってた。
ようやく、あたしは一言だけ
「ありがとう。」
やっと言ったかと思うと、
あ、・・・涙も出てきそう・・・
自分でもよく分からないけど何故か
雄ちゃんをぎゅーーーって抱きしめてた。
やっぱり酔ってたのかな・・・
「俺、帰れなくなるだろ・・・いいのか?」
「帰っちゃやだ・・・」
そしてお母さんが来たとき隠してたパジャマ、
この日、また出してくることになったのでした。




