音楽会の季節⑤
今週もいろいろありましたが
やっと土曜日。
いつにもまして疲れる一週間だった。
来週の音楽会まで頑張らなきゃ・・・
ということで
「息抜きに連れてってやるよ。」
と、雄ちゃんがデートに誘ってくれた。
朝、あたしの部屋に迎えに来た雄ちゃんは
いつものジャージではなく、普通の格好。
普通の格好に見慣れていないあたしは
思わず目をそらしてしまった。
なかなか雄ちゃんの格好良さには慣れません。
今でもいつもドキドキする・・・
「今日は、電車で行くぞー」
何故ゆえ?
はてなマークのあたしの手を取って
「いいからいいから。今日は、黙ってついて来な!」
って、ウインクされた。
はい。付いていきます!
「はい、これ切符。」
えっ?まだ券売機に着いてないのに?
切符の時間を見ると、朝6時37分。
先に買ってたのか・・・
電車は割と空いていて座れた。
行き先は、ここから40分ほど。
話をしてる間にいつの間にか40分たっていた。
はやっ。
「俺、行きたい所あるんだけど、よっていい?」
雄ちゃんが行きたかったところは・・・
マジック用品売り場。
そんな趣味があったとは驚き・・・
いくつか買い物をして
「はいちょっと手ー出してみ。」
って、にこっ。
なんだよー、嬉しそうな顔しちゃって。
そう思いながら手を出したら・・・
次々、この前のチョコレートを手の上に乗っけてきた。
いくつ出てくるんやー!!!
結局出てきたのは10個。
あなたはマリックさんですか・・・
文房具屋さんにも行った。
いろんなボールペンやクリップがある。
「キャー、これかわいいー。」
果物や動物、ハートや星のクリップを嬉しそうにみてると
「全部買ってやるよ。貸してみな。」
「いいよー。こんなに使わないから。」
「じゃ、使う分だけな。」
って雄ちゃんは手を出した。
「自分で買うからいいって。」
あたしが言うと、
「俺が買ってやるから、それ見て今日のこと
思い出せばいいじゃん。仕事楽しくなるぜ。」
そりゃそうかも・・・
雄ちゃんは
「遠慮するなそんなもん。」
って、いうから、あたしは3つお花とハートとクマのクリップを選んだ。
あたしの宝物にしよう。
パン屋さんでおいしそうなパンを買ったり、
雑貨屋さんでかわいいお揃いのカップも買った。
お昼は海辺で潮風に吹かれながら
さっき買ったパンを一緒に食べた。
遠くの船を見ながら芝生の上に座ってると
何か日頃の面倒な事なんて
どっかいっちゃうみたい。
「このままずっとここにいたいなー」
あたしがついつぶやくと
「ほんとだな。イヤなこと全部忘れられそうだな・・・」
なんて言うから
「雄ちゃんにもイヤなことなんてあるの?」
って思わず聞いてしまった。
「あったりめーだろ。」
雄ちゃんはあきれたように言う。
「お前、どんだけ俺に心配かけてると思ってんの?
まさか気が付かなかったとか言うなよな。」
「え?そうなの?気が付かなかった・・・」
「しんじらんねー」
雄ちゃんはパタッと後ろにひっくり返ってしまった。
「雄ちゃん?おーーい。どうしたの?」
よんでも動かない。
「おーーーーい、起きてよーーー雄ちゃーーん」
って、閉じた目を指で無理に開けようとした。
そしたら、急に雄ちゃんはあたしの腕を掴んで引っ張った。
きゃっ。
あたしは雄ちゃんの胸の上に着地。
そのままぎゅうっ。
真っ昼間からこんなとこで・・・
「離してよ・・・」
「やだ。」
幸い人は誰もいない。この時期、潮風はちと寒いか・・・
「こんなやつ、ほんとに初めてだ。」
雄ちゃんは言う。
ふーーーん。今までにもいろいろいたけどっていう意味なのね・・・・
あ、これはあたしの心の声。
ちょっとやきもち。
ま、これだけかっこよかったら
何もない方がおかしいんだけどね・・・
複雑・・・・でも、まあいっか・・・
「さて、どっか行こうか。」
やっと離してくれた雄ちゃんは、
ケーキのおいしい喫茶店に連れて行ってくれた。
何でこんな所知ってるのとは聞かないことにしよう。
また買い物に行ったり、散歩しながら
たわいもない話をしてるうちに
だんだん暗くなってきた。
「そろそろ時間だな。」
「何の?」
「晩ご飯。」
なんだそれ・・・
雄ちゃんは駅の近くのホテルに入っていく。
ん???
びっくりするあたし。
まさか泊まるんじゃないよ・・ね・・・
「先ゆっとくけど、泊まるんじゃねーぞ。」
あたしの気持ちを読んだかのように
雄ちゃんは笑いながら言った。
赤くなるあたし。
エレベーターが着いた先は
最上階のレストラン。
あ、それで、晩ご飯・・・・
あたし達は窓際の席に案内された。
「わあ・・・きれい・・・」
窓から見下ろす街は
何とも言えずきれいだった。
雰囲気に酔ってしまいそう。よわいのよね・・・あたし・・・
雄ちゃんは、予約してくれてたんだ。
じゃなきゃ、こんないい席座れないくらい込んでいた。
ワインが運ばれてくる。
乾杯して少し飲んでみる。
ワインの味は分からないけど
こんなところで雄ちゃんと飲むワインが
まずいわけがない。
もちろんご飯もおいしかった。
でもその後、雄ちゃんは、カクテルを注文した。
あたしはこんな所でカクテルなんか飲むのは初めて。
運ばれてきたきれいな色の飲み物を
一気に飲んだ。
「おい、だいじょうぶか?」
雄ちゃんがびっくりして言う。
「え?なにが?甘くておいしいよ、これ。」
知らなかったんです。
カクテルがこんなにきついって。
お店を出てエレベーターに乗ると
なんだかふらっ。
「大丈夫か?」
雄ちゃんが腕を支えてくれた。
「だいじょうぶ。」
答えたけど、かなりテンション高くなってる。
駅までの道で
「雄ちゃんだーーいすき。」
って、大きな声で言ってしまった。
「はいはい。俺も好きだよ。」
雄ちゃんがなだめるように言う。
あたしはにこにこ顔で
「ねえ、雄ちゃん、チューして。」
かなり酔ってたんですねぇ。後で思うと恥ずかしい。
雄ちゃんも酔ってたんだろうか。
そのままチュってしてくれた。
駅に着くとちょうどいい時間。
そのまま電車に乗って帰った。
電車は、すごく込んでた。
出入り口の近くにあたし達は立っていた。
電車が揺れるたびに乗ってる人たちも揺れる。
あちこちで人が押し合いになる。
でもあたしには誰もぶつかってこなかった。
雄ちゃんはあたしをドアの側にやって
ドアに手をつき突っ張っていた。
誰もぶつからないはずだ・・・
雄ちゃんの優しい気遣いに気付いたとき
あたしは嬉しくなって
混雑に紛れて
雄ちゃんの胸にそっともたれた。
照れ笑いする雄ちゃん。
「きょうは、ほんとにありがとう。楽しかったよ。」
雄ちゃんにそっと言うと、
「まだ終わりじゃねーよ。」
雄ちゃんが言った。




