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スタート⑥

昨日は1時間年休を取って


雄ちゃんに心配かけたから


今日は普通に頑張ろうと思ったのに・・・




3時間目のこと


あたしは空き時間。


音楽室から運動場を見ると


5年4組が学活をしていた。


言うまでもなく雄ちゃんのクラス。


 


何やってんのかと思えば、


雄ちゃんの得意な野球。


雄ちゃんは審判。


「ストラーイク!」


雄ちゃんの声が響く。


楽しそうだな。雄ちゃん。


多分クラスで一番楽しんでるんじゃないかな・・・




「ほら!走れーー!」


子供と一緒に夢中になって遊んでる。


いや、学級活動してる。


しまいには我慢できなくなったらしく


バットを握ってバッターボックスに立った。


ピッチャーをやってるのは章吾。


こいつがまたいい球投げるんだよねえ。


章吾と向かい合った雄ちゃんは


いつになく目が真剣。


ほんとに野球は大好きだから。


で、子ども相手にホームラン打って


ピースしながらダイヤモンドをまわってる。


いくつになっても少年の雄ちゃん先生。


そんなあなたが 大好き・・・




って、ボーっと運動場を眺めてたら


4時間目のクラスが音楽室にやってきた。


「先生何やってるん?」


「え?は、早いねえ。


じゃあ4時間目、はじめよっか」


4時間目は6年生。


リコーダーで少年時代の二重奏。


ピアノ伴奏しながら、


(雄ちゃんはいつも少年時代だな・・)


なんて思ってた。




放課後職員室に戻ると


雄ちゃんと、江藤先生が楽しそうにしゃべってる。


江藤先生はあたしより一年先輩。


そう言えば何げに雄ちゃんによく話しかけてる。


雄ちゃんも楽しそう。


職員室ではよくある風景。


なんだけど・・・・・




面白くなかった。


イヤなんだもん


あんなの見るの。


分かってます。


ただのやきもちです。


あたしのわがままです。


でも、いやなんです。


そんなこと言ってたら仕事できないんだけど


でも、イヤなんです。


そして、そんなこと


誰にも言えるわけもなく


職員室から逃げ出した。。。




音楽室に戻ると


あたしは、ピアノを弾き出した。


曲は風の丘。


魔女の宅急便の曲。


あたしがつらいとき、


この曲はなんだか心に寄り添ってくれる。


大学生の時からよく弾いてた


大好きな曲だった。




今、何も考えずにピアノを弾いている。


なのに、胸がつかえて苦しい。


知らない間にまた涙があふれていた。


おかしいぞ あたし!


しっかりしろ!


そう自分に言いながら


ピアノを弾き続けた。




「おーい!そろそろ帰ろうぜー」


音楽室に雄ちゃんがやってきた。


泣きながらピアノ弾いてるあたしに気付き


「なんかあったのか?」


と、心配そうに聞く。


「なんもないよ、さあかえろっか」


理由を言ったら


「ボケ!しょーもない事考えるな!」


って、絶対言うよな。


だから言わない。っていうか、言えない。




「今日は一人で帰るね。じゃあ、お先ー」


なんだか自己嫌悪で


とぼとぼ家に帰った。


「おせーぞ!」


ドアの前には雄ちゃん。


あたし、先に出てきたのになぜ?


どこでもドアがあるのか?


「様子が変だからさ、なんかあったんだろ?」


「なにもないよ。じゃ」


ドアを閉めようとしたら


「そりゃ無いだろ・・・」


と、足でドアを止めて、一緒に入ってきた。


今日は雄ちゃんの好きな笑顔は出来ないのに・・・




部屋に入るなり雄ちゃんは先生と化した。


あたしと向かい合わせに座ると


「言ってみな。いえば楽になるぜ。な。」


これじゃ、まるで生活指導です。


教育相談室に呼ばれた子どもみたい・・・


「俺がちゃんと聞いてやっから」


「誰かにイヤなことされたのか?」


あたしは子どもか!


自分がいけないのは分かってるけど


それをどうしょうもない。


やっぱり子どもか・・・・


人のこと言えないな・・・




「イヤなことあったけど言わない。」


そう雄ちゃんに言った。


「でも・・・お願いがある。助けてくれる?」


あたしが言うと、


「いいよ、何?」


雄ちゃんはじっとあたしを見つめた。


あたしもじっと雄ちゃんを見つめて・・・


雄ちゃんの胸にそっと顔を埋めた。


「このまましばらく じっとしてて。」


「なにがあったんだよ・・・」


言えません・・・


でも、冷たくなっていた心が


ゆっくりと溶けだした。


雄ちゃんはあたしの心が温かくなるまで


ずっと 暖かい胸をかしてくれた。


「もう泣くんじゃねーぞ」


優しく言われて、また泣きそうになった。


「晩飯、まだ作ってないだろ、


今から食べにいこーぜ」


にっこり笑って雄ちゃんは手を差し出した。


あたしはそっとその手を握った。


「さ、行くぞ!」



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