元カノ④
ドアの閉まる音と同時に
あたしは立ち上がった。
ちょっと余談だけど
大学でアドラー心理学ってのを習った。
そんなこと出来るか!!ってことをやれっていう
無茶を言うおじさんがアドラーさん。
だけど、このときばかりは
アドラーさんの言うことを聞く気になった。
何かって?
じゃ、行きますか!
「雄ちゃん!」
階段を下りかけていた雄ちゃんが振り向く。
あたしは、急いで雄ちゃんの所まで走っていくと
雄ちゃんの手をつかまえて
部屋まで引っ張っていった。
「どうしたんだよ・・・」
ビックリしてる雄ちゃん。
ドアを閉めてカギ締めてから
「雄ちゃん、ちょっと座って!」
といった。
素直に座る雄ちゃん。
「言い残したことがあるから、
聞いてもらいたいの。」
「いいぜ。言ってみな。」
あたしは雄ちゃんの顔を見つめて言った。
「あたし、寂しかったの。
雄ちゃんが他の人と二人でどこかへ行くのは
例え用事でも仕事でもイヤなの。
でも仕事の時は我慢する。
それ以外はしたくない。」
雄ちゃんは黙って聞いてる。
「あたしは、雄ちゃん取られたみたいで
とっても悲しかったの。
なのに雄ちゃんは何も言ってくれなかった。
聞くなって言った。
お前には関係ないって言われてるように聞こえたの。
秘密があるように聞こえたの。
そんなのはイヤなの。」
あたしは、また涙が出てきそうになった。
「お前の言いたいことは分かってる。
つらい思いしてたことも分かってるつもりだ。」
「じゃぁ、何で?」
雄ちゃんは真面目な顔して
「今は言えない。ただ、心配すんな。
お前を裏切るようなことだけは絶対にないから。」
そう言って、あたしの顔をのぞき込んで
「言いたいことはそれで全部?」
と聞いた。
・・・・あと一つ・・・
「帰らないで。」
そう言って、あたしは雄ちゃんの首に手を回した。
「ちゃんと責任とって。
こんなに不安な気持ちのまま
置いて帰らないで・・・」
雄ちゃんはゆっくりと
あたしの気持ちをほぐしてくれた。
雄ちゃんの優しさに包まれて
何度も何度も
「もう心配すんじゃねーぞ。」
って、ささやかれて
「悲しませてゴメンな。」
って、謝ってくれて。
愛されてることに疑問はないけど
なんで疑惑ってわいてくるんだろう・・・
信じるって難しい・・・
「雄ちゃん、信じられない時ってどうしたらいいの?」
「俺のことがか?」
あたしがうなずくと
「今日みたいに言え。どうにかするから。」
「今日、まだどうにかなってないよ。」
え?って顔して雄ちゃんは
「じゃ、どうにかなるまで一緒にいてやっから。」
「やったー。」
あたしはにっこりして
「じゃ、なかなかどうにかならないことにする!」
たわいもない話をしながら
あたし達の心はゆっくりと歩み寄った。
アドラーさんありがとう。
こっぱずかしくって、絶対出来るか!と
受講生一同言い合った本音トーク。
しらふじゃ出来ないけど・・・
おかげで何だか遠く感じた雄ちゃんを
また近くに感じることが出来ました。




