元カノ③
「なにすんのよ!放しなさいよ!」
雄ちゃんは手を放した。
「何で放すのよ!」
「お前、言ってること滅茶苦茶だなあ・・・」
苦笑いしてる雄ちゃん。
「あの人誰?」
「大学時代の知り合いだ。」
「雄ちゃんの彼女だったの?」
「そう。でもそれ以上聞くな。」
「なんでよ。」
「聞いてなんかいいことあるか?」
・・・・・・・
「聞いて嬉しいことは多分何にもないだろ?」
それは分かってる。
正論。
じゃ、何も聞かずに知らん顔してればいいって事?
そんなことあたしには出来ません。
「じゃあ、雄ちゃんが誰と何してても
いっさい聞くなってこと?
あたしがどんな気持ちで見てたか分かってる?
雄ちゃんがあの人と学校出ていくのを。
そんなことはどうでもいいって事?
雄ちゃんってそんな人だったの?
よく分かった。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「そんな風に思ってるならもういい!帰って!」
雄ちゃんは、ため息をついた。
「そんな風にしか思えねぇのか?」
「目の前で、彼がきれいな女の人と
車でどこかに行ってしまいました。
しかも、その人は元カノです。
それを見てどう思えって?
良い解釈の仕方があったら教えて欲しいわ。」
あたしは、悔しいのと悲しいのと酔ってるのとで
暴走を止められないまま
雄ちゃんの前で泣いた。
何が一番悲しいって
「聞くな。」
と言われたこと。
交流を閉ざすって事でしょ。
こっちに入ってくるなって事でしょ。
雄ちゃんの中には
あたしには入れない秘密の場所があるって事でしょ。
それから、
考えたくないけど
言えないことがあるって事でしょ・・・・
雄ちゃんは黙ったまま
何かをじっと考え込んでいた。
そして、一言。
「今日は帰るわ。」
そう言うと、雄ちゃんは立ち上がった。
「それから、ケータイの電源は入れとけよ。
連絡つかねぇだろ。」
あたしは玄関で靴を履いてる雄ちゃんの背中に
思いっきりチューハイの空き缶を投げた。
雄ちゃんは振り向きざまに缶をパシッと受けて
「あぶねーな。そんなことするんじゃねぇ。」
と、コトンと下駄箱の上に置いた。
そして、
「鍵閉めとくんだぞ。」
と、言い残して
ドアの向こうに消えた。




