出会い①
ここは、開校100年を越える小学校。
すぐ前には海。
工場地帯の煙突もすぐ側にある。いっつも白い煙が上がってるけど
これは水蒸気らしい。
4月にここに来たときには
学校の事なんてさっぱりわかんなくて
いまだに、全部の配置なんて覚えられないくらい広かった。
で、あたしの仕事は音楽の先生。
音楽室には訳の分からない写真や冊子が
山のようにあった。いつのや?
昭和45年?生まれてへんやん
捨てたろー
といろんなものを
ポイポイ
さて、春休み最後の日。
新6年生は入学式の準備にやってくる。
もちろんあたしは初めて来たので
6年生の顔なんか知るはずもない。
「ねえ、ここのゴミほうきで掃いてくれる?」
見回りをしながら近くで掃除をしていた子に頼んだ。
「それ、俺の仕事じゃねーし」
はい?なんですと?
あんた掃除をしにほうき持ってきてるんでしょ?
ふざけるなこのやろー
と言いたいところだが
(だれやこいつは・・・・山下?ぜーーったい忘れへんし。)
と、心の中で考えて別の子に頼んだ。
なんやねんあいつは・・・
さて新学期
「おはよーございまーす!」
あたしのモットーは
明るい挨拶 元気な笑顔。
初授業ではついついリコーダーで
肩をとんとん
桜塚やっくんのポーズを取っていたらしい。
んでもって、あんまりざわざわすると
「やぁかましぃー!」
「しゃべってるヤツ だれや!」
しーんとしたなかでポツリ。
「ヤツって・・・・・そんなこと先生が言っていいんですか」
「・・・・・・・」
どんな坊ちゃん嬢ちゃんや・・・はぁ
そしたら付いたあだ名が
『ヤンクミ』
その日から
「なあなあ、ヤンクミー」
「なんやねん 雄ちゃん」
などという会話があちこちで聞かれるようになった。
だいたい普通先生に
「ヤンクミ」
ってよぶか?
それに返事するあたしもたいがいですが・・・