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本好き令嬢は、転がった先で幸せになる

作者: とと
掲載日:2026/02/01

読んでいただきありがとうございます。


あ~。なんて素敵なの。


もー。この、両片思いって言うの~。

上手くいきそうで♪うまくいかない。くー。

ドキドキしちゃう。

この頭、ポンポンのシーン。すて!


「きゃーーーーーー」

私は、ドキドキの、ロマンス小説が盛り上がると共に、つまずき、図書館の坂を見事に転がり落ちた。


「やややややや〜、止まらない」


ガン!!


「いたたあ……」


ギギギギー。     ゴン。


「ぎゃ」

うううううっ。痛すぎる。


私は、図書館の帰り道、本に夢中で。

坂道でつまずき、そのまま本に、頭を挟んで前転を数回。


何かにぶつかって止まった。


そして、止まったその直後、頭に何かが落ちてきた。


「あははははは、あはは」


そして、誰かの笑い声。


おそるおそる、笑っている人を、見上げると!


「れれれれれ 冷徹の貴公子!」

  

「はは。私がそう、呼ばれている事は、知っているが、直接言われたのは、初めてだな」


冷徹の貴公子は、そう言って、馬車の中から、私に手を差し伸べた。


おずおずと、手を取り立ち上がる。


どうやら、私は坂を転がり落ち、冷徹の貴公子様の、乗る馬車に激突、さらに開いていたドアを破壊。


そのドアが、私の頭に直撃……。


「立てるな。

痛いところは無いか?見たところ、傷は無いようだが、土だらけだな」


「ははは」

侯爵様は、私を上から下まで見て、口に手を当てまた笑った。


「侯爵様、度重なる失礼。申しわけありません。私は、シフロ伯爵家の娘、アメリアでございます」


私は、土埃で汚れた、ワンピースの裾を持ち、あいさつした。


公爵様は、口元に笑みを浮かべ……。


「まあ、馬車に乗りなさい」


「とんでもございません。我が伯爵家は、この国立図書館の、裏手にあり、歩いて10分もかからないのです。

急ぎ、家に戻り、父に侯爵様の馬車を、破壊したこと、ご迷惑をお掛けしたことを伝え、早急に対応いたしますので」


「いいから乗れ」


侯爵様に腕を掴まれ、馬車に、引き上げられる。


「いたた」


体を動かすと、背中や腰が痛い。


「ほら見ろ、あれだけ派手に、転がったんだ直ぐに医者に見せた方がいい。痛みが引くまで安静だ」


私は、侯爵さまの勢いに押され、馬車の座席に、ぺたりと座った。


侯爵様は、御者とお付きの人に声をかけ。破壊した扉は、そのままに、眺めのいい馬車は、明らかに家とは、反対方向に走り出した。


「あ あの侯爵様。家はあちらの方角です」


「まずは、侯爵家に向かう」


「どうしてですか?」


「侯爵家の方が、怪我の処置がしやすい」


そう言いながら、侯爵様は私の隣に、移動した。


「じっとしていろ」


侯爵様は、綺麗なシルクのハンカチを、出して私の頬や頭の土を払う。


ややや。侯爵様近い。


近いです……。


ロマンス小説、どころではない。


侯爵様!私の心臓を、潰す気ですか? 


シトラスの、さわやかな香りもする。


私は、意識を保つのが、精一杯のまま、侯爵家に到着した。


「さあ。手を貸せ」


侯爵様が、馬車を先におり、私に手を差し出す。


「自分でおりれ。 きゃ」


立ち上がって、馬車の踏み台に、足を下ろしながら、返事をしたが、返事を終える間もなく、私は既に、侯爵様に、お姫様抱っこされていた。


「降ろしてください侯爵様、お召し物が汚れてしまいます」


だいたい、生まれて初めて、男性に抱きかかえられています~。


今度こそ、心臓が潰れます。


真っ赤な顔で、抵抗する私の事など、気にすることなく、侯爵様はどんどん進み、何もせずとも、大きなお屋敷のドアが開いた。


「まあまあ。アルフレッドが、女性を抱えているわよエマ!」


「はい。奥様私の眼にも、見えます」


「ならば、幻覚ではないのね」


「はい。奥様」


「母上、何をとぼけた事を言っているのです。エマ、専属医師を直ぐに呼べ、そして湯の用意だ!部屋は、二階に準備しろ」


「あらあら二階に準備。私にも、そのかわいらしい、真っ赤なイチゴちゃんの、お顔を見せて。あらまあ。土だらけ、どうしたの?」


「もも 申し訳ありません。私が馬車にぶつかってしまい」


「我が家の馬車が、迷惑をかけた、頭も打っているので、家で看病したい」


かぶせる様に、侯爵様が私の話を遮った。


「まあそれは大変、エマ直ぐに準備を」


それから私は、侯爵家の侍女達に、びかびかにしてもらい、上等な部屋着を着せられて、私はふかふかの、ベッドに乗せられた。


ほどなく、侯爵家のおかかえ医師が、やってきて、診察をしていただいた結果。


背中と腰の打撲で、傷などの怪我はないが、頭を強く打っているので、一週間ほどは、安静にするように、とのことだった。


「あの。メイヴィン様、私がかってにぶつかったのに……。たくさん親切にしていただき。ありがとうございます。

これ以上、ご迷惑を、お掛けするわけにいきませんので、シフロ伯爵家に、迎えに来るように、連絡していただけないでしょうか?」


ベッドの横には、冷徹の貴公子こと アルフレッド・ブロア侯爵の、お母様が、私の手を握り看病してくれている。


「気にしないで。伯爵家には、先ほど、こちらで安静期間は、看病させていただくことを、お知らせしたばかりよ、それにね。あの子が、他の人に親切にするなんて、今までなかったのよ。まして女性に触れるなんて」


どう…返事をしていいか、考えているとメイヴィン様は、私が転ぶ原因になった、本を取り出した。


「それより、これこれ、今話題の、ロマンス小説でしょ♪私も若いころは、ロマンス小説をよく読んだわ~。ロマンス小説が好きなの?」


「ロマンス小説だけでなく、物語では、探偵ものや、怖い話まで。創作された、もの以外も、物理から医学など、本が好きでいろいろな、ジャンルを読みます。

伯爵家の裏が、国の全ての本を貯蔵する、図書館と言う事もありますが、時間があれば通って、本を読み漁りっています。今日も、散歩がてら、図書館に出かけ、この本を借りたのですが…。家まで待ちきれずに、歩きながら本を読んでしまって、図書館の前の、急な坂道で、つまずき転んでしまいました」


メイヴィン様が、私の頭を優しく撫でる。


「なんだかうれしいわ、娘ができたみたい」


あぁ……。お母様が生きていたら、こんな感じかしら。


私は小さなころに母を亡くしている。


兄とは、10歳も年が離れているため、あまり遊んでももらえず、小さなころから、本ばかり読んでいた。


「本の、どんなところが好きなの?」


「本は私を、いろいろな世界に、連れて行ってくれます。本を読みながら、その世界に広がる、街並みや空の色、山や川。人が暮らす音や、食べ物の匂い、いろいろなことを、想像しながら読むのが楽しいんです。 

それにそれに。ロマンス小説なら、ヒロインが恋する、男性はこんな感じかなーって、好みのタイプを、想像してみたり、医学書なんかは、血液になったつもりで、体の中を旅してみたり」


「それ楽しそうね~。アメリアは、想像力が豊かなのね。私もまたいろいろ、読んでみようかしら」


「ぜひぜひ。どんなジャンルが好きですか、私いろいろ、紹介できます」


嬉しくなって、ついつい起き上がり、メイヴィン様の、手を勢いよく両手で握ると、同時に、廊下につながる扉とは、別の扉が開いた。


「母上!怪我人に、何をしているのですか?

アメリア嬢も、寝ていないとだめだろう」


侯爵様に、布団の中に戻される。


「侯爵様!いったい、どこから」


「アルフレッド!未婚の女性の部屋に、こんな時間に、入ってくるなんて、なんて子なの!」


侯爵様は、気まずそうに頭をかいた。


「心配でちょっと……」


「まあまあ、許してあげてね、アメリア。お話しするのが楽しくて、こんな時間に、なってしまったのね。そうだ!このロマンス小説、貸してくれない?」


「はい。メイヴィン様」


「では、ゆっくり休んでね。また明日、お話ししましょう、アルフレッド!あなたも、部屋に戻りなさい」


「ア。アメリア嬢、痛いところは無いか?」


「はい。お薬をいただいて、今はどこも痛くありません。ありがとうございます。侯爵様」


「では、ゆっくり休め」


そう言うと、侯爵様は、お部屋に戻って行った。


メイヴィン様は、もう一度、私の頭を撫で、柔らかく微笑んだ。


「アメリア。おやすみなさい、いい夢を」


私は、あっさり眠りに落ちた。



✿ ✿ ✿



アルフレッド 視点



部屋に戻り、仕事を片付けると、またアメリアが気になり、部屋を覗いた。アメリアは、すやすやと、寝息をたて寝ている。思わずヘーゼル色の髪に触れる。


1年前、資料を探しに行った、図書館で偶然彼女を見つけた。窓から差し込む光に、髪がキラキラと輝きら目を引いた。本に集中し、くるくると表情を、変える彼女から、眼を離せなくなり、自然とほほ笑んでいた。


17歳の時、俺の父親は、事故で急死した。


それ以来、笑ったことのない俺が……ほほ笑んだ、自分に驚く。


もともと、侯爵家の嫡男として、厳しく育てられていたが、父の死は、大きく俺の人生を変えた。


数か月後に、18歳になる予定だった俺は、国王陛下の許可と、後見を受け、爵位を継いだ、するとまだまだ未熟で、若い自分に、金や名誉を、欲するいろいろな者が、群がってきた。


母には、迷惑をかけたくなかった。


他に、信じられる人も、いなかった。


自分で、踏ん張るしかなかった。


群がる者の中でも、特に女性は、俺から得られる金と名誉を計算し、近寄って来ているのが透けて見え、吐き気すらおぼえた。


侯爵夫人の座を、得るために、いろんな手を使われ、散々ひどい目にあった。


侯爵家を守るため、ひたすら頑張るうちに、冷徹の貴公子なんて、二つ名がつく。


父上が死んだ、あの日以来、表情すらなくした俺に、彼女は、笑顔を取り戻してくれた。


それからというもの、図書館に行けば、彼女を探してしまう。


見かけるたびに彼女は、涙ぐんでいたり、笑っていたり。


何より気遣いがあり、周りに、自然に声をかける。


会うたびに、俺はどんどん彼女に、魅かれていた。


調べれば、彼女はアメリア・シフロ伯爵令嬢と、直ぐに分る。


侯爵家から、婚姻を申し込めば、伯爵家は、断らないことは、わかっていたが、冷徹と呼ばれる、会ったこともない自分に、婚姻を申し込まれ、アメリアはどう思うだろうか。


怖がられるのではないか……。


できれは、こんな自分を、受け入れてもらってから、求婚したかった。


今回のことも、侯爵家の力を使い、強引な事をしていることは、自覚している。


ただ、アメリアが、前転するリスの様に、コロコロ自分の元に、転がってきた時、驚いたが、あまりのかわいらしさに、声を上げて笑ってしまった。


これは、神様がくれた、チャンスだと思った。


差し出した俺の手に、彼女が触れた時。


この手は、絶対に離さないと決めた。 


とにかく、一緒に居たくて、連れて来てしまったが、落ち着いたら、彼女の怪我が、ひどく心配になり、何度も確認してしまう。


自分でも、どうしていいかわからない、感情だが、母上は、いつの間に、あんなに仲良くなったんだ。


アメリアと名前で呼び、メイヴィン様と、名前で呼んでもらっていた。


俺は、冷徹の貴公子と、侯爵様としか、呼ばれていないのに。


明日から、挽回しなければ。




✿ ✿ ✿




次の日、眼が覚めると、メイヴィン様と侍女たちに、代る代るに世話を焼いてもらい。


トイレと、食事以外は、ずっとベッドに押し込められている。


父が、一度訪ねてきたが、ちらっと顔をのぞかせ。


「ちゃんとよくなるまで、お世話になりなさい」と一言だけで、そそくさと、帰ってしまった。


侯爵様も、朝・昼・晩と、様子を聞きにやってくる。


本当に、のあの方は、冷徹の貴公子様なのかしら?


とても、お優しいのに。


私のベッドでの、一週間生活は、あっと言う間に、過ぎていった。



✿ ✿ ✿



その日は、朝から医師の診察を受け、安静解除の、合格を貰ったが、徐々に起き上がるように、指導を受けた。


「アメリア。それじゃあ、まずはサロンで、お茶から始めない?」


「メイヴィン様。こんなに、甘えてしまっていいのでしょうか?」


「シフロ伯爵には、あなたの様子を、毎日伝えているし、こちらでの滞在の許可を、得ているわ。私も、アメリアがいてくれたほうが、侯爵家の中が、明るくなって嬉しいのよ」


メイヴィン様が、私の手を握る。


そこに大きな音で、ドアが開き、侯爵様が入ってきた。


「動いてよくなったんだね、アメリア!一番に、連れていきたい場所があるんだ」


今日は、一段とキラキラで、満面の笑み。


「まあ、アルフレッド。私が先に、サロンのお茶に、アメリアを誘ったのよ」


「母上、これだけは譲れません」


侯爵様が、私の手から、メイヴィン様の手をひき外す。


「まあ、怖い。でも…決意したなら、仕方ないわね。ここは、かわいい息子に、アメリアを譲ってあげましょうかね」


メイヴィン様が、両手を上げた。


「アメリア、どうしても、見てほしい場所があるんだ、そして私の話を聞いてほしい」


「はい。侯爵様、そんなにおすすめの場所が、あるんですか?」


「気に入ってくれると思う、久しぶりに、長く歩くから、私の腕に掴まって」


「失礼します」


私は、侯爵様のエスコートを受け、本邸に隣接する、渡り廊下の先、蔦の這う素敵な建物に、案内される。


少し、大きめの扉を入ると、そこは、広い空間の、両サイドに、中二階がある立派な図書館。


「わ~。 素敵」


グリーンの絨毯には、小さな白い花が描かれ、チョコレートブラウンの落ち着いた壁と階段、階段の手すりには、蔦バラが巻き付いた、細工がされている。


本棚は、天井まで届き、本がぎっしりと詰まっている。


いくつもある、大きなガラス窓の淵は、色とりどりの色ガラスがはめられ、差し込む光に、色が差す。


夢かと思うほど、美しい光景だ。


「祖父が、本好きでね、ほかの国の本も、沢山あるよ」


「侯爵様。なんて美しい、図書館なんでしょう。連れてきてくれて、ありがとうございます、見せていただけて、嬉しいです」


「アメリア、あの椅子に座ろう、俺が子供のころの、お気に入りの場所なんだ」


侯爵様が、指さした先には、窓がある壁の下が、ベンチの様になっていて、かわいらしいクッションが、いくつも置かれていた。


「さあ。どうぞ」


二人で、横並びに腰掛ける。


あまり大きくはない、ベンチは、二人の肩が、当たりそうなほど近い。


侯爵様が、私の手を取り、自分の膝に乗せる。


「…………」


「侯爵様?」


沈黙に思わず、侯爵様の方を向いた。


わあ。顔がちち近い。


侯爵様の、握る手に力が入り、前を向いたままつぶやいた。


「ああ。アメリアのこととなると、本当に自分は情けない」


「?」


小首をかしげ、侯爵様の顔を覗き込むと、侯爵様は、勢いよく、こちらに体の向きを、変え私の肩を、両手でつかんだ。


近い位置で向き合い、侯爵様の青く澄んだ瞳と眼が合う。


なんて……。奇麗な瞳。



「アメリアのことが、大好きだ!私と結婚してほしい」


「は。はい?」


ままさか、こんなに優しく、素敵な方が、私を好きだなんて!


それも結婚!


私は、耳まで赤くなり、体感的には、頭から蒸気が出ていたはず。


「急に、こんなこと言われて、戸惑うだろうが、めちゃくちゃ頑張って、俺の事を好きになってもらう。そして、アメリアを、いっぱいっぱい、甘やかして幸せにする」


「俺を選んでほしい。俺では、だめだろうか」


「いえいえ、こちらこそ、私でいいのでしょうか?」


侯爵様に、きつく抱きしめられる。


それから侯爵様は、さらりと私を、膝の上に乗せ、1年ほど前から、私を知っていたこと、自分の生い立ち、などなど。いっぱいろいろ話してくれた。


そして……今日、決まった決定事項は……。


「俺のことは、フレディと呼べ、俺はリアと呼ぶ」



私が、つまずき転がった先には、沢山の本と優しくて、素敵な新しい家族が、待っていた。


~ 終わり ~




























いつも誤字脱字などありがとうございます。

この後、フレディとメイヴィン様はどんどん話を進め

アメリアはそのまま侯爵邸から学院にも通い。卒業とともに(*^-^*)

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