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Aフリカ  作者: summer_afternoon
31世紀MOLLYアプリ
23/82

だれがそれを欲しがるか

「2649年にドメスティケーション遺伝子を連邦政府が探したのは、難民に手こずったからです。だったら、同じように人々を従わせたかったときがあります。2303年の無境の境ができたとき以降の連邦以外の国々です」

「じょーほーそーさでみんなに教えなかったんじゃないの?」


とルツ。


「一般市民は情報操作でなんとかできる。けど、貿易に絡んだりする富裕層や、いろんなこと知ってる支配層を、ある程度、言うこと聞かせたかったんじゃないかって思います。そーゆー国のTOPオブTOPは、ひょっとしたらドメスティケーション遺伝子を、配下の富裕層、支配層のデザイナーベイビーに組み込もうとしたかもって想像しました」

「なるほど。2303年以降を重点的に調べてみます」

「2250年にあったなら、2303年に武漢の遺伝子バンクから買ったかもしれないね。武漢の遺伝子バンクは、どうやって今の連邦政府の直轄研究所になったのかな。昔、遺伝子バンクは世界中に怪しい企業のものがわんさかあったって噂を聞いたことがある」


ハオラン氏がコノハナサクヤヒメさんに尋ねる。


「怪しい企業の遺伝子バンクがたくさんあったのは事実です。けれど、旧中国は国立の研究所が武漢にあって、そこに世界中から人間だけでなく、多くの動植物の遺伝子が集められて研究されていました。大国の研究所だけあって、当時もかなり大規模だったようです」

「だから、連邦政府は武漢に遺伝子バンクと極秘研究所を作ったのか」

「恐らく」


森羅の口が開いている。何かに一生懸命になると、森羅の口は開いてしまう。


「何考えてんの? 森羅」


ルツがつつくと、


「多い気がして。そんなにいろんな遺伝子コレクションしてたなら、日本人だけで1万人分って。他にも国ごととか民族ごとでストックしてたんですか?」

「それは分かりません。1万人分というのは、明らかにデータ分析をする数です。現在は大部分がアイスランドで冷凍保存されています。そちらも調べる予定です。でも。武漢は連邦政府直轄の極秘研究所だから、なかなか調べられないの」


その時、突如の声。


「行けばいいじゃん」


サミュエルさんだった。


「ヒメさんなら、上に直談判なんて面倒なことしなくても『ヨハネスブルグの極秘研究所の者です』っていうだけで簡単に接触できる」

「そうね。本来ならば、私はもう少し配慮をする人間ですが。……武漢に行くことにします」


武漢行きを決めたコノハナサクヤヒメさんにサミュエルさんがアドバイスする。


「今すぐ、向こうに行くことを連絡した方がいい。で、歩きながら飛行機のチケットを取って、夜間飛行。できれば朝『来ちゃった♡』ってパターンで。情熱が伝わる」


コノハナサクヤヒメさんは、目を剥いた。

美人が怒ると怖いよー。

けれど、コノハナサクヤヒメさんは、アドバイス通りに研究室を去っていく。


「ルツ、森羅、しばらく留守にするわ。ナニーに面倒見てもらって」

「「はい」」


いってらっしゃい。

ハオラン氏は感心している。


「サミュエルさん、素晴らしいよ」

「VRを作るには、それくらいしないとダメだったんだ」


VR作成は、歴史オタク、サミュエルさんのライフワーク。細部にこだわればこだわるほど、専門的な資料が必要になってくる。パキスタンと旧インドの国境はどうなっているのか、旧チュニジアのチュニスのカレー屋はどんな内装だったのか、VRに感触や匂いを与えるためにはどのような技術を用いるのか、2300年ごろのみみず爆弾の威力はどれほどなのか。様々なことを調べるためには熱意とエネルギーが必要だった。

VRにするには多くの映像が必要になる。いきなり「お願いします」と頼みこんで、どこであっても撮りまくる。相手が社会奉仕中で忙しくても教えを乞う。

サミュエルさんの押しの強さは一朝一夕のものじゃなかったんだね。


武漢か。

今まで、多くの地名が登場した。チュニスはあまり関係ないが、ワルシャワ、ボツニア・ヘルツェゴビナ、インド、イスラエル、ラファ、イングランド、ヨハネスブルグ。ルツには不思議に思う。


「アメリカって、あ、えっと。旧アメリカって研究所はないんですか? 21世紀はアメリカがとっても力を持っていたんです。ヨーロッパ、アフリカ、中国、中近東が出てきたのに、アメリカの話がないので。聞いてみました」


経済大国、軍事大国、技術大国のアメリカ合衆国。


「今でも旧アメリカは当時の色を残してるよ。資源もなんでも持ってる上に、戦争があっても地理的に戦場にはなりにくい場所だからね。通貨廃止で衰えるかと思いきや、優秀で個性的な人間が集まる土地になってるよ。リングのデータを管理してるのは旧アメリカのIT企業が母体、拠点はカリフォルニア。連邦政府があるのはワシントン、兵器を作ってるのも主に旧アメリカだよ」


グレイト。

ルツはサミュエルさんの説明に納得した。


「連邦内の子供は成人すると里親から離れて暮らす決まりなんだ。そのとき、ニューヨークは1番人気が高い。世界で2番目の大学密集地になってる。多くの人は半分恋愛目的なんだけどね」


ハオラン氏はプチ情報まで教えてくれる。

お金に関係なくしたいことをできるなら、たくさんの人が大都市に住んじゃうじゃん。恋も生まれるよ。恋愛対象者だらけなんだから。


「ニューヨーク、住むとこ足りなくなっちゃいますね」


とルツ。ハオラン氏によれば意外と大丈夫なのだそう。


「大学の研究がハードなんだ。知識のダウンロードから能動的な研究になると、ギブアップ者が続出するんだよ」

「さって。オレもそろそろ行くよ。カリフォルニアに」

「仮想通貨について調べるんですか?」


森羅がサミュエルさんに尋ねる。


「ああ。MOLLYアプリの1番古いオープン・ソースを見てくる」

「そーゆーのは、ネットの中にあるものじゃないんですか?」


ルツは不思議に思った。誰でも見られるからオープン・ソースと言うのでは、と。


「ははは。ルツ、太古のプログラムだよ。ハードもソフトも言語も変わりまくってる。まあ、MOLLYアプリより新しくなると、AIに作らせることが多くなったらしいけど。少なくとも、カリフォルニアに展示されてるのは最古のMOLLYアプリだと言われてる。ああ、ちょうど、君らが来た年の日付だよ」

「そんな偶然、」


偶然じゃない。ルツは森羅を見た。森羅は首を横に振る。無声で唇が「やってない」と動く。


ハオラン氏はサミュエルさんに「じゃ」と手をあげて見送った。


「すごいよな。2250年の大規模なデータ破棄をかいくぐって1000年も残ってるんだから」


なんだか、ウチらが和同開珎見る感じ?

ルツの隣で、森羅がリングに依頼した。


「カルフォルニアのMOLLYアプリのソース出して」

「MOLLYアプリは危険因子として登録されている言語です。これ以上追求する場合は連邦政府に通報します」


サミュエルさんは堂々とMOLLYアプリって言ったじゃん。

森羅はルツと同じように不満な顔。


「森羅は未成年だからね。サミュエルさんはおじさんだし、政府からの依頼で動いてる。大人の事情ってやつだよ」


そして、ハオラン氏は、ルツと森羅にタイムマシンの説明をしてくれた。

ガラスで仕切られた部屋には高さ1mほどのスタンドライトのような物が立っている。3箇所。そこから時空を歪める粒子のようなものが出るらしい。3箇所からの粒子のようなものが交わった中の指定した範囲の空間が歪む。

ハオラン氏はスタンドライトについている太いコードを触る。


「これで電流を流すんだ。エネルギーが大量にいるんだよ。これでもチャージに15分くらいかかる。空間に比例するんだ。さすがに2mの立方体は1000年は凄かったよ」

「どーしてそんな大きいので試したんですか?」

「ヒメが荷物を持っていくだろうから。場合によっては、これと同じタイムマシンを持って」


森羅が聞き返す。


「タイムマシンでタイムマシンを運ぶんですか?」

「ああ。じゃないとこっちへ戻れない。今、タイムマシンの指定目的地を自動で計算できるようにプログラムを考えてるんだ」


タイムマシンはスリム。コノハナサクヤヒメさんは長身でナイスバディだけど、さすがに2mの幅はいらない。


「体積を減らせばいいんじゃないですか?」


ルツは安易に提案した。


「危険だ。もし境界に物があったら、それは時空を超えて分断される」

「そうなんですね。デザインアプリみたいに囲ったところだけ運べたらいいですよね。んーっと。また変なこと言ってたらすみません。歪んだ時空の接点って、立方体じゃなきゃいけないとか制限があるんですか?」

「いや。連続した空間なら大丈夫」

「私、アイデアはあるんです。でも、頭悪くてうまく伝えられないし、指定する空間をどう表すか分かんないし、物体を包むように大きめに空間を指定するって出し方も分かりません。どんな知識をダウンロードすればいいんだろ」


ルツがテンパっていると、森羅が助け舟を出してくれた。


「カエルの卵みたいにしたいの?」

「そーそれ!」


代わりに説明してくる。


「カエルの卵を時空を超えて運ぶ時、卵の周りに寒天みたいなのがついてるまま運んだ方が安全です。ルツが言ってるのは、時空を超えるときに包む寒天の範囲を指定範囲にすれば、2 mの立方体よりも小さな空間で効率よく運べて、エネルギーが少なくて済むってことです」

「思いつかなかったよ。ちょっとプログラムを作ってみよう。物体の識別は、空気じゃないところで大丈夫かな。リング」


ハオラン氏は、自分でプログラムを作るのかと思いきや、リングに発注。リングは驚くほど早くプログラムを完成させた。


「これだと、床が抉れてしまう。リング、床部分は寒天0で」

「はい。しばらくお待ちください」


寒天で通じてるし。


「最初、床部分の指定が難しかったんだ。そのまま指定すると床が損傷する。毛足の長いラグを敷いたら重みで物を乗せた部分だけが沈んで、物が破損した。安いラグを敷くってことで解決したよ。移動先の物にも若干繊維がくっついていって、こっちもにちょっとハゲたラグが残るってくらいにしたんだ」


床。へー。


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