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Aフリカ  作者: summer_afternoon
VR歴史体験
17/82

去勢しなければ連邦追放

読んでくださってありがとうございます。

「去勢しなければ連邦追放」の話にルツの妄想を数行加えました。ストーリーの内容は変わっていません。

VRを作成したサミュエルさんが言ってた。一緒に体験する人は同期するだけ。つまりー、私を「女」として感じちゃってるのは、まぎれもなく森羅の脳内変換。

頭がお花畑のルツは、踊りたいくらい嬉しかった。けれど、現実は甘いものではない。


「イスラム圏ってさ、男女別々でさ。大学なのに、女の子、席が別だし。パキスタンじゃ、思いっきり布被ってて目しか見えねーの。びっくりだよ。何百年伝統守ってんだよ」

「……」


森羅にルツが女に見えたのは、単に生物学的な性別の違いを意味しているだけだった。


「カレー食おうぜ」


誘われて、ルツは森羅をカレー屋に案内した。

のに、カウンターで席を1つ空けて座る森羅。イスラム教徒は異性と1対1で会うのは不自然なのだとか。なので、たまたま同じ店で席が近かったことにされた。

カレーは野菜がごろごろと入っていて美味しい。


「どこに住んでんの? 森羅」

「この近く。まだ引っ越したばっか」

「知り合いは?」

「いない」

「1人で?」

「そ」

「ご飯とか、どーしてんの?」

「作ってる。ハラルとかあるから。ルツは?」

「研究者設定だった。デザイナーベイビーで有能っぽい」

「いーじゃん」

「森羅、この後、ウチ来る?」

「ダメ」

「用事あんの?」

「イスラム教徒は、結婚してない男女が二人きりってのはダメ」

「厳し」

「慣れた。ってか、だいたい、女の子の知り合いがいない」


安心。


「1人なら、もうイスラム教、やめちゃえばいいじゃん。家族で暮らしてるなら、そーゆーのできないけど」

「なんか、体に染み付いてるんだよなー。夜明け前に祈ってるし」

「マジで?」


朝が苦手な森羅が。

森羅は夜、ゲームをしたり怪しげなアプリを作ったりし、人間らしい一般的な活動時間には寝ている。


「すっげー腹減ってんのに断食がんばったし」

「ええーっ」


見かけによらず大食いの森羅が。

単に成長期。


「一人で部屋にいるだけってのもなんだから、なんかしようって考えてる」

「どんな?」

「タイムマシンに必要な、空間を歪める理論を知りたい。それはイングランドの大学なんだよなー」

「行くの?」

「入学できねー。オレ、連邦外の国にいたから、入学基準の他大学の在籍実績も認められなくてさ」

「イングランドって今は連邦なんだ?」

「うん。2649年に自然交配禁止になるとき、連邦から抜けるはず。おーっと」

「どしたの?」

「黄色い文字が点滅してる。不適切な発言ですって」


そーいえば、最初のVRのとき、見た。黄色い文字。


「偽学生になって講義を聞きにいくとかは? ルールからの逸脱はやめといた方がいいんだっけ。じゃ、教授に個別にアクセスしたら、ちょっとは教えてくれるかも」


ルツは提案した。


「そーじゃん、熱意だよな。熱意」


森羅はカレーをもう1皿注文し、その場でメッセージを送った。

すると、


ルツは、VRから目覚めてしまった。

見覚えのある休憩スペース。イスから身を起こすと、隣で同じ姿勢をしている森羅と目が合った。


「困るよ。ここからだったのに」


背後から声がした。リクライニングしたイスの後ろにサミュエルさんが立っていた。


「「サミュエルさん?!」」


サミュエルさんは宙に画像を静止させていた。1つはカレー屋の店内を上から見た図。1つは会話が文字になっている。もう1つは、森羅が送信したメッセージ。


「ルツはもう、自然交配禁止への流れが分かっただろうし、森羅は、やることが独特すぎて対応できない。終了終了」

「自然交配禁止は、能力の低い人間が増えることを防ぐためですか?」


ルツは残酷な結論に辿り着いていた。


「ご名答。食料不足は本当の原因じゃない」

「ひっでー」


森羅が顔をしかめた。


「このVRは、この後、2人が恋に落ちるってのに」

「ええーっ。続けてください。私だけでも」


サミュエルさんの言葉を聞いて、ルツは即、イスに横になった。

恋。自然交配禁止へのプレリュード。きっとR18。森羅が信仰心と欲望の間で苦悩するとこ、観たい!

ルツの頭の中では、妄想が炸裂していた。「本当は、今すぐルツが欲しい」と森羅は真剣な目で訴える。森羅の熱い手が、僅か5mmを保ち、触れないようにルツの体の線を辿る。たまらなくなったルツは……。


「イングランドの大学とのやりとりなんて、VRのパターンに用意していない。空間を歪める理論は専門外だ。それに、ルツがVRに戻っても、森羅はいないよ」

「え」


ルツは妄想をストップさせた。


「森羅のようなタイプは、興味あることに没頭する。『レッツゴー連邦』の動画を作るとき、ラマダンでもないのに飲まず食わずだった。これまでも、連邦以外の国々に情報を広めた行動パターンはいくつもあった。SNS、ビンに紙を入れて海に流す、ステルスバルーンでのメッセージ。けど、ニュースジャックをしたのは、森羅、君が初めてだ」


さっすが森羅♪


「VRの中でルールを破るのはセーフなんですよね?」


森羅は確信犯だった。


「まあ。そうだが。本当に君は21世紀の人間なのか?」

「21世紀には、実際にそーゆー事件があったから思いついたんです」

「なるほど。しかし、27世紀は、そんな大昔とはセキュリティのレベルが違う」

「調べました」

「うん。調べてたな。見ていた。こっちはイリーガルな事態の発生に、VRの臨時修正にてんやわんやだったよ」


VRを体験している最中、サミュエルさんは修正していたらしい。そして、修正にギブアップした。


ルツはラブストーリーに興味津々。


「あの〜。もし普通の人だったら、どーゆーパターンだったんですか?」

「ルツ、いい質問だ。もちろん、カレー屋の後、徐々に2人は親しくなる。研究員は、難民が自然交配で不完全な故に社会に翻弄される姿にきゅんきゅんする。難民は社会に溶け込もうとするが、自然交配の者は社会でただ生きているだけだと自問自答。自分とは反対の研究員に憧れ、遂に、一線を越えて……」

「きゃっ。」


ルツは両手で頬を押さえて硬く目を閉じた。そこだけでも味わいたい。


「ヨットでクルージングするんだ」


は?


「それだけですか?」


思わず心の声が漏れてしまったルツ。


「おいおい。主に未成年が体験するVR、イスラム教ってことを考えると、すごいことなんだが」

「はい。ですよね」

「21世紀の方が未成年の規制は緩いのかな? 大昔の女性は、10歳くらいでも結婚させられたという話がある。日本にも児童婚があったのかい?」


確かに21世紀の日本はロリコン気味だとは思う。女性アイドルは可愛い系。けれど、日本の名誉のために否定した。


「そんなことはありません。21世紀の日本は18歳以上しか結婚は認められていません。ただ、森羅とは幼馴染だったので、近所の公園で一緒にボートに乗ったこともありますし……」


……通貨廃止のVR体験では、狭くてエロいタクシーで車中泊だった。


「ところで、森羅はナルシストなのか?」


サミュエルさんは唐突な質問をした。


「「違います」」


ルツまで森羅と一緒に否定してしまった。


「いや、このVRは疑似恋愛をするもの。そうすると対象が要る」


森羅の対象は私に決まってるじゃん。


「一緒にVRするメンバーと同期してるんじゃないんですか?」


と森羅。


「もちろん。ただ、必ずしもメンバー内に恋愛対象がいるとは限らない。片想いの場合は同期させられない。それに、多くの場合は1人でVR体験をする」

「難しいですね」


森羅も考え始める。きっと、自分がVRを作るとしたら、と具体的に想像しているのだろう。


「2人が出会う前、難民は、国境を越えるときや、夜、星を見るときに対象者を思い出すように仕掛けてある。研究者はパートナーが欲しくなるような会話が仕込んである」


そーだっけ?

ルツが首をかしげていると、サミュエルさんは困った顔をした。


「同僚と子供についての会話をしただろう? 普通はあの辺りで恋バナになるんだよ。ルツはO氏のことしか考えてなかったみたいだけどね」

「あー。ありましたね。そんな話」

「で、森羅は会いたい人を考えるとき、なぜか鏡を探す。だからナルシストなのかと」

「いつも一緒だった双子がいるんです」


森羅が言うと、サミュエルさんは納得した。


「なるほど。辛いときや誰かに会いたいとき、兄弟を思うって。ああ、そうか。君たちは21世紀から来たってゆう、特別なパターンだった」


ルツは確認したくなった。白とチュニジアン・ブルーの街で森羅に出会ったのは、お互いが両想いだということかどうかを。


「あの、VRはどーゆー人と会うことになってるんですか?」

「何度も思い出した人」


それを聞いて、ルツは両手を組んで、祈るような乙女っポーズ。


「森羅、私のこと、何度も思い出してくれたの?」


森羅は肯定した。


「当たり前じゃん。前の2つのVRで会ってるのに。絶対にどっかでルツが出てきて、ストーリーが急展開するって思った。ルツが女ってだけで虐げられてるとかさ、自然交配禁止の運動してるとかさ」

「まあ、君達は、2人で21世紀からこっちに来たんだから、お互いを想像するよな。好きかどうかとは別問題だ」


がっかり。

森羅はまだ、VRをもし自分が作るならと考えているようだった。


「複数人で体験するときは同期するってことですよね。研究者と研究者、難民と難民ってパターンもあるんですか?」

「もちろん。VRの目的は、自然交配禁止に動いた理由を示すことだから。自然交配とデザイナーベイビーで能力の差があること、テヘランに水爆が落ちたことをきっかけに、大量の難民が連邦に来たってとこがポイント。恋愛は印象を深めるための味付けだよ。一応説明しておこう。難民は1億人以上だった。難民は基本、個別に住む場所を与えられる。大勢がまとまると、その地域に溶け込むのではなく、その地域を変えてしまうから。多くの独身者は問題なかった。出身はイスラム圏。婚前交渉はおろか、異性と話すこともない」

「問題って、ベイビーラッシュですか?」


ルツは話の先回りをしてしまった。いつも家族からNGを出されている行為。


「そうなんだ。難民の子供が増えた。そして連邦政府が、自然交配を禁止。去勢しない場合は連邦追放と決めた。大問題になった」


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