セミでしたが、ロリになりました!
八月の炎天下。やっと目覚めて泣いていた日々も終わりを告げ、私の命に終焉が訪れた。
(まあメスだからないてないけど....)
小さな小学校の木から落ち、とても硬く熱いアスファルトに打ち付けられた。
(もう、これで終わりか....ああ、いい人生....いや、セミ生?だった....)
やがて視界がぼやけ、記憶の様なものが見えてきた。
(これが走馬灯か....)
それは死の前に見える記憶、人々はそれを走馬灯と言う。
(....いやずっと気にしがみついてるだけだったな!?一回振られてるし!?)
たった一ヶ月。....もない、そんな短い期間、私はオスを探して飛び回り、小学生に獲られそうになりながらもなんとか今まで生きてきた。
そんな日々も、もう終わりだあ....
さっきからずっと、道路のど真ん中に近い外側に倒れた私は少女にツンツンされている。
可愛いなあ....
(というか!私を木の棒でツンツンするのをやめろ!もう力もないし!時間もないし!それに私はおでんじゃない!だから!やめるんだ少女よ!!!)
小学二年生くらいの女の子が私の体をツンツンしている。
もう動きたくないのに。
絶えず衝撃が伝わる。
やめてよお、羽千切れちゃうよお....
その直後だった。
坂道から勢いよくセダン車が飛び出してきた。
このままでは少女が轢かれてしまう!
惹かれてるのは私だが!
だめだ!少女を守らなくては!
車は速度を落とさず突撃してくる。
速度違反とか言うそういう次元じゃないほどのスピードで、こちらへ向かってくる。当然ながら止まる気はない。
私は最後の力を振り絞り、必殺技を放った。
その名も....
「セミファイナル」だあ!!!!!
作者が大っ嫌いな、いや作者だけじゃなくほとんどの人間が忌み嫌う、セミファイナルを起こして少女を救うのだ!!
「ジジジジ!!!!!」
「ひゃあ?!きもい!!」
なんとか少女を放し、少女が轢かれることは避けられた。
ついでに精神的なダメージも入った。
そして、私は車に轢かれ、ぺちゃんこになった。
視界が白くつつまれ、なんかすごい、心地よかった。
私。いい事したなぁ――
――そして、目が覚めた。
「....あ、あれ....?」
手。足。顔....羽はない。
「私....もしかして....」
肌はもちもち、太ももももちろんもちもち、胸は....ぺったんこ。
そう、私は....
「人間になってるうううう???!!!」
人間になったのだ。
おそらく転生....だけど、なんか服着てるし、体は小さいし....これが俗に言うロリってやつか。
少し歩いて、水たまりの窓に反射した顔を見る。
とっても可愛い。さっきのあの少女に似ている。
「さあーこれからーどんなことになるんだろー!」
呑気に歌いながら歩いた。
これからの人生に、何があるのだろうか。
今からが楽しみだ。
....あ!そっか!もう人生って言っていいんだ!!!
やったああ!!!
――おわり。
人気だったら続編もあるかもしれない
by作者