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始まり

現在

雨が降る夜の森を男は走っていた。

マントは破け、身体の所々から血を流している。


目的地は無く、ただ逃げていた。

何に追われているか、それすら分からないまま、ただただ走っていた。


歳は20を過ぎた程度。

乱れたこげ茶色の髪の下、その顔にはまだ少しの幼さを残していた。



―――――



1時間は走っただろうか。

もつれそうな足を止め、岩陰に身を潜めて後ろを振り返る。


雨の葉音がするだけで、他にはなにも聞こえない。

近くに生き物の気配もない。


常人であれば何も見えない夜の森の中だが、数十メートル後ろまで見えていた。



追っ手が来ていないことに安堵しゆっくりと進んでいた方向へ歩き出す。




追っ手。一体自分は何から逃げていたのだろうか?

分からない。


ここがどこなのか。そして自分の名前も過去も何一つ思い出せなかった。



記憶喪失か。

嘆かわしい事実だが、そんなことよりも早くここを離れたい。


「このまま進んだら森を抜けられるのか?」


反応する声はない。

ただただ雨の音が続くだけ。



あー、心細い。






とりあえず進もう。





満身創痍で悲鳴をあげる身体に鞭を振るい歩き出す。




―――――



あぁ、足が痛い。

あれから1時間程歩いだろうか。


ふと前方に気配を感じ足を止める。

腰に備えていた短刀の柄に手を添えた。



木々が揺れる。



木の影からゆっくりと現れたそいつは青黒く、狼のような見た目をした獣だった。



デカいな。筋骨隆々って感じだ。

目線の高さは同じくらいか?



はぁ、死ぬのかな、俺。

殺すなら一瞬で殺してほしいなぁ。痛いのはいやだ。


異様な殺気を放ちながら、ゆっくりとこっちに歩いてくる。

距離は30m程。



距離が20m程に近づいた時、そいつは一瞬足を止めた。

鋭い牙を剥き出してこっちを見ている。



次の瞬間、そいつは飛びかかって来た。

20mの距離を、ほんの2、3歩で。



くそ、速いッ...!!










一瞬そう思った。

いや、確かに速いのだ。かなり。


ただしっかりと目で追えるし、恐らく俺の方がもう少し早く動けそうだ。



腰の鞘から短刀を抜く。

前方空中から飛びかかってくるそいつを右に交わし、短刀を振り下ろす。



短刀を振り下ろす瞬間、どうすれば体内のエネルギーを短刀に伝えられるか、直感で分かった。


切り裂くイメージでエネルギーを込めて振り下ろした。


狼のような獣は空中で首から先が切断され、勢いのまま後方へ転がった。


刀身よりも直径のある太い首が、綺麗に切断されていた。




あれ、俺って結構強いんじゃねえか?



短刀を握った右手を見る。

なぜか扱い方はよく分かった。


おそらく...

刀身を飛ばすイメージで短刀を横に切り裂く。


やはり。

イメージ通りに斬撃が飛んでいき、5m先にあった木が切断されて倒れた。



感覚的にこの短刀は予備の武器かな?

もう少し長い刀の方が扱いやすそうだな。


それによく考えれば、森の中を走っていた時、

さっきの狼よりも速く走れていたな。


うん。自分がある程度戦えることは分かった。


だけどこのボロボロで出血している身体。

何かにやられた証拠だ。全身痛いし。


慢心は気をつけないとな。


倒れそうになるところを踏ん張りながら進んでいた方向へ歩き出した。



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