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死にたがりの義勇兵。~死にたいのに、どんな逆境でも生き残ってしまう。そんな才能を持った主人公が多くの者を死ぬ気で救っていく物語~  作者: コヨコヨ


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退院

「キースさん、子供に好かれやすいんですね。心が子供っぽいからですかね」


 ルーナは口もとを右手で覆い、吹き出しそうになっていた。


「うるせえ……。はあ、あの子供達が国の未来を背負っていると考えると感慨深いな。俺が命を懸けた甲斐があったんだろうか」


「そんなの、当たり前じゃないですか。あの子達は皆大貴族の子供達です。政治や教育に大きく拘わってきますから、キースさんの思いをしっかりと受け取って良い大人になると思いますよ」


「…………あいつら、大貴族の子供だったのか。俺、あんなにベタベタ触ってもよかったんだろうか。病気にでもなったら、死刑とか言われそうなんだが」


「考えすぎですよ。でも、大貴族でも親は人間なんです。時には失敗しますよ」


「おい、遠回しに死刑があり得るみたいな言い方するな。死刑じゃ保険金が下りないだろ」


「はは……。その時は私がかくまってあげますよ」


 ルーナは苦笑いを浮かべ、呟いた。まあ、ルーナの後ろ盾があれば少々無茶しても何とかなる気はする。


「じゃあ、私はもう行きますね。三週間後、キースさんが無事退院したら、まとめて話をします」


 ルーナはパイプ椅子から立ち、軽く一礼した後、病室の扉に向かう。


「そうか。わかった。他の皆によろしく言っておいてくれ」


「わかりました。キースさんが多くの看護師とイチャイチャしていたと伝えておきます」


「ちょっ! それは違うだろ」


「真実じゃないですか。キースさんの近況報告をするのも、私の仕事の内なので。べー」


 ルーナは病室を出る時、むくれ顔になりながら小さな舌を出し、俺を小ばかにしてきた。


「むむむ……。あんなデカい乳が並んでいたら、男に反応するなと言う方が無理だろ……」


 俺は腕を組み、ベッドに寝ころぶ。隣の小さな机に置かれた花の絵を見て和む。


「はぁ……。あと三週間か……。長いな~」


 俺はニマニマの笑顔になり、ゲスイ顏をしていただろう。

 だが、次に俺の部屋を訪れた看護師は熟練のお婆さんだった。


 ――あぁ、ルーナ。本当にすまなかった。俺、治療訓練に専念するよ。だから美人の看護師に戻してくれ! 


 俺の願いはとどかず、三週間、熟練のお婆さんだった。ただ……、さすが熟練、ものの数秒で全弾発射してしまう時もあった。魔法か?


「ふぅ……。はぁ……。ふぅ……、はぁ……」


 病院の治療訓練室にて、俺は一〇〇キログラムのバーベルを持ち上げながら、スクワットをしていた。部屋の中で完全に浮いているが、まあ気にする必要はないだろう。


「本当にもの凄い回復力ですね……。ルーナ様の魔弾を受けすぎた影響でしょうか……」


 俺の治療を請け負ってくれた医者が紙に記録を取りながら、呟く。どうやら、この先生はリーズ先生と知り合いらしい。だから、俺のこともよく知ってくれているようだ。


「キース君、今日で退院ですけど、今の気持ちはどうですか?」


「どうですかと言われても……。妹に早く合いたいです」


「はは……、キース君らしい発言ですね。私達はキース君の味方なので、いつでも来てください。歓迎しますよ」


 俺は彼の発言の意味がよくわからなかったが、とりあえず、お辞儀をしておく。


 俺は良い汗を掻いた後、部屋から出ていこうとしたが、俺と同じように治療訓練室で体を動かしている子供達に泣き付かれた。


 「離れたくない!」と言われるも、俺は行かなければならないので、子供達の頭を撫でてあやした。


「お前たちは自分の体を治せ。そうしたら、またいつか会える」


 子供達は小さく頷くと、俺から離れた。魔力で動く扉の前に立つと、横に滑りながら開く。


「キースさん、退院おめでとうございます。これがあなたの新しい隊服です」


 扉の前にいたのは、白い軍服を着たルーナだった。加えて、俺の服だと思われる黒の隊服を持っていた。あまりにも正反対な色に、苦笑いを浮かべるも、俺は上裸だったので、着るしかない。

 ルーナの視線が熱を帯びている。俺の体でも見ているのだろうか。ま、そんな訳ないか。後ろにいるイケメンの先生でも見ているんだろう。


 俺はとりあえず、上の隊服を羽織り、部屋を出た後に運動着を脱いで黒いズボンを履く。


「はぁ……。更衣室まで待てないんですか?」


「は? この場で渡してきたんだから、ここで着替えろと言う意味じゃないのか」


「そんなこと言ってませんよ。全く……。まあいいです。着いて来てください」


 ルーナは長い金髪を靡かせながら背中を向け、歩き出した。俺は女のデカいケツを追う。


「……ちょっと、お尻を見すぎじゃないですか。視線が刺さりまくっているんですけど」


 ルーナは頬を赤らめながら目を吊り上げ、振り返りながら言う。


「いや、ズボンパツパツすぎないか? 特に尻が……、座ったら破れそうだぞ」


「わ、私の身長だとどうしてもこうなってしまうんです! 恥ずかしいので見ないでください! 騎士の軍服は男物しかないんですよ。だから、ズボンの設計が女とあっていないだけですから! 私のお尻が大きすぎるわけじゃありませんからね!」


「いや、理由なんて聞いてねえよ……」


 ――婆さんばかり見てたからか、若い女でデカい尻と言うだけで無性に興奮しちまう……。だ、だめだ俺のマグナム。押さえろ。相手はルーナだぞ。ガキンチョじゃねえか。


 俺は頭を振り、心の乱れを抑え込む。呼吸を整え、性を静めた。ルーナについて行くと、病院の出口があり、久々に外に出る。今日は天気が良く、白い建物に反射した光が目を焼いた。光に慣れると視界が開け、馬車が視界に入る。


「馬車か。中央区でも使われているんだな。てっきり魔動車ばかりかと思ってた」


「近場を移動するときは馬車の方が便利なので、王都の者は多用しますね。あと魔動車は貴族でも値が張る高級品ですから」


「貴族も渋るほどの値段とか……。お前、一台無駄にしてなかったか?」


「あの時はああするしかありませんでした。テリアちゃんを助けるのが最優先事項だったので、お金の心配をしている暇なんてありませんでしたよ」


「そ、そりゃそうか……」


 俺とルーナは真っ白で波の文様が彫り込まれた木製の馬車に乗り込んだ。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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