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死にたがりの義勇兵。~死にたいのに、どんな逆境でも生き残ってしまう。そんな才能を持った主人公が多くの者を死ぬ気で救っていく物語~  作者: コヨコヨ


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安全の確保

「おらああああああああああああああああっ! 国に戻っても生きる道はない! 戦え!」


 敵兵は大きな声を出し、吠えながら進んでくる。だから俺も吠えた。喉が潰れそうなほど大きな声でだ。


「おらああああああああああああああああっ!」


 吠えている者同士の剣が頭上から振り下げられてぶつかり合う。だが、ルーナのサーベルの切れ味は異次元だった。

 紙を着るカッターナイフのように敵の剣がすでに真っ二つ。こんな切れ味の剣身を敵の体に当てたらどうなってしまうのかと冷や汗をかいたが、刃は人の体を切り裂かず、当たるだけだった。そうはいっても黄色魔弾と同じ効果がある剣身だ。敵兵は泡を吹いて気絶し、地面に倒れ込む。


「人の体を切り裂かないサーベル。でも命の無い物はよく切れると……」


「くっ……。うおらあああっ! 切られやがれ!」


 敵兵は一一〇センチメートルほどの剣を持ち、頭上に振り上げながら切りかかってくる。

 俺に剣の心得はないが、敵を見て、どのように動くのかを予測すれば攻撃を躱せるのではないかと考える。

 実際、弾を避ける時も同じように狙っているところから身を反らすように半歩左に動き、右肩を後ろに引く。すると、敵の剣が風を切り、俺には当たらなかった。あとは俺が持っている剣の刃を敵に当てればいいだけだ。


「ぐあああああっ!」


 体に刃が振れた瞬間、敵兵は白目をむきながら膝を折り、地面に顔面から倒れ込む。


「す、すごい効き目だな」


 俺が少しよそ見をすると、背中が痺れた。反射的に膝を折り、姿勢をさげる。すると、バンっという鼓膜を劈く銃声が鳴り、鉛弾が頭上を通過する。

 音と弾の飛んできた方向から考え、狙撃兵は北東の方角。距離二〇〇メートルにいた。それを知った地面に倒れ込んでいるレインがアサルトライフルで二〇〇メートル先にいる狙撃兵を一発で打ち抜く。


 ――俺も負けてられねえな。


 俺は心の底から込み上がってくる闘争心が心臓の鼓動を早め、脳内からドバドバと溢れ出る快楽物質のせいで微笑み、全ての要因が活力になる。荒れた大地を靴裏で一歩一歩踏みしめながら歩みを進め、狂犬のように血眼になりながら縦横無尽に走り回り、敵に牙を向けた。

 実際に向けているのは刃だが、あまり変わらないだろう。


「あはははははははははははははははははっ! 一人! 二人! 三人! 四人!」


「あの死に急ぎ野郎、突っ込み過ぎだ。にしても動きが狂ってやがる……、人間技じゃねえだろ……」


 一〇メートル先にある三メートルほどの大岩に敵兵が一人隠れた。


 俺は大股五歩進んで一メートルほどの岩を踏み台に、地上から三.五メートル地点に跳躍、大岩のてっぺんに手を当てて減速し、裏にいる敵兵の頭上からサーベルを振り下ろす。

 すると大岩に刃が食い込み、一瞬焦る。だが、切れ味が良すぎる刃によってゼリーを切るよりも簡単に岩が割け、敵兵に攻撃が打ち込まれた。


 俺は柄を捻り、刃を大岩に食い込ませて地面に直撃するのを防ぐ。敵兵の身長が一八〇センチメートルだったため、俺の足が一五センチメートルほど地面から浮き、静止していた。


 柄を捻り直し、靴裏から着地。すると、大岩が真っ二つに切れ、左右に転がる。大きなちゃぶ台が二台作られていた。

 

 ――まあ、戦車を細切れにするほどの切れ味なんだ。大岩を切るなんて訳もない。


 俺とルーナ、レインの三人の奮闘によって敵の残党以外いなくなった。だが、死んだふりをしている輩がいるかもしれない。気を付けないとな。


 俺はルーナの位置に戻り、辺りを見渡す。


「はぁ、はぁ、はぁ……。ルーナ、レインと二輪車に乗ってナリスの車に移動しろ。その後、車と子供、お前ごとバリアで包め。大きなバリアだとしても敵に集中砲火されない限り、安全なはずだ」


「キースさんはどうするつもりですか?」


 ルーナはしゃがみ、小さなバリアを張って身を守る。


「俺は不意打ちを狙っている敵を倒す。レイン、アサルトライフルとゴーグルを貸してくれ」


「別に構わないが、黄色魔弾はもう無いぞ……」


 レインは小さな声を言った。


「大丈夫だ。敵を殺さなければいいんだ。あと、車が逃げられるだけの距稼げればいいいい。なら、武器を壊すだけでも十分だろ」


「はっ……、なるほどな」


 レインは肩紐を外し、アサルトライフルを俺に渡してきた。


 俺はアサルトライフルの弾倉を外し、弾ホルダーから九発のマグナム弾を手に取り、入れる。

 マグナム弾は全部爺のお手製だ。暴発する可能性はゼロに近い。


 ――こういう時に信頼できる弾があると心強いな。


 俺はマグナム弾を入れた弾倉をアサルトライフルに再装填。槓桿を引き、黄銅色の空薬莢を空間に跳ね飛ばしてマグナム弾を銃身に入れた。


「おい、魔動車みたいな乗り物が見えた。あれに向かえばいいんだな」


 レインは黒い自動車を指さす。指先にナリスが運転している自動車が移動していた。


「ああ、そうだ。あと、二人は囮役だ。すぐに向かわないとナリスが撃たれる。まあ、あいつは撃たれてもいいが、車に乗っている子供が撃たれたら終わりだ」


「なんなら、一番狙われるのは私です。子供達を狙う理由がありませんからね。でも、危険なのは確かです。私を守ってくれるというなら、狙われるのもありですね」


 ルーナは目を光らせ、微笑む。バリアがすっと消えた。


「おいおい二人共馬鹿か? ルーナはバリアで俺と自分を守って魔動車に安全に向かい、そこから大きなバリアで魔動車を包めばいいだろ」


 レインは頭を叩きながら言う。


「バリアを解いた瞬間に撃たれるかもしれませんし、あれは魔動車ではなく、自動車です。使用している燃料はガソリンですから、タンクに弾丸を受け、火花が引火したら大爆発を起こします」


「大爆発……」


「なんなら、今にも敵に自動車のタンクを破壊されたら子供達と焼死するかもしれません。囮で敵をおびき出し、子供達の安全を確保します。レインさん、指揮官の命令は?」


 ルーナの綺麗な髪が淡く光る。


「絶対! って、ふざけんな! 魔法で言わせただろ!」


 レインは吠え、囮役を渋っていた。時間がないのだからさっさと動け。


「なら、俺が囮役をやってもいいが、隠れている狙撃手の武器をお前は正確に狙えるか?」


 レインは黙り、倒れている二輪車をしぶしぶ起こし、またがる。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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