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死にたがりの義勇兵。~死にたいのに、どんな逆境でも生き残ってしまう。そんな才能を持った主人公が多くの者を死ぬ気で救っていく物語~  作者: コヨコヨ


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第三幽閉施設へと向かう

 先に目を覚ましたのはルーナらしく、俺の腕の中にはいなかった。外から二輪車の起動音が聞こえ、眠気が飛ぶ。


「ふぅ……、出発時間か」


 俺は重装備を身に着け、天幕の外に出た。レインの姿はすでになく、ルーナしか見当たらない。加えて二台の二輪車が置かれていた。


「キースさん、おはようございます? こんばんわ? どちらが正しいんでしょう」


 ルーナは挨拶に迷い、首をかしげていた。


「そんなこと、今さらどっちでもいいだろう。気にするんじゃねえよ」


「キースさんの顔色は月明りだけじゃよく見えませんが声からしてよく眠れたようですね」


「ああ、おかげさまでな。俺からは月光だけでもルーナの顔色が良く見えるぞ。あんな状況で熟睡できるなんてな」


「私も驚きですよ……。でも、好都合です。今なら簡単に死ぬ気がしません。最後まで抗いますよ。死ぬにしても、敵の戦力を限界まで削ぎます!」


「そうだな。じゃあ、行くか」


 俺は一台の二輪車に乗る。ルーナからゴーグルを受け取った。するとルーナが俺の後ろに乗り、抱き着いてくる。


「なにしてるんだ? もう一台あるだろ。そっちに乗れよ」


「あっちはレインさん用の二輪車です。使用方法は紙に書いて張り付けておいたので走るよりも早く移動できると思います。ゴーグルも置いて来ました」


「たく……、最後まで過保護な奴だな。まあ、いいか。んじゃあ、ルーナ。俺の背中にしっかりと捕まってろよ」


 俺はゴーグルをつける。すると、暗視の効果で真っ暗な夜道でも視界がはっきりと見えた。


「わかりました。では、私の魔力で経路を出しますから、光の道筋に従ってください」


 ルーナは背中にギュッと抱き着いた。重装備のせいで抱き着かれている感覚はほぼ無い。きっと巨乳のミルに抱き着かれていたとしても何も感じられないだろう。


「しゃっ! 行くぜ!」


「はい! ぶちかましに行きましょう!」


 俺は右ハンドルを思いっきり捻り、時速一八○キロメートルで走行する。地面には光の道筋が浮かび上がっており、迷いようがない。


 二輪車を走らせて二時間後……。


 俺とルーナは第三幽閉施設から一キロメートルほど離れた山脈の入り口にやって来た。視界の先にカンデラを持った敵兵が見回りをしている。山脈に入りやすい位置に兵を配置している点からして突破されたくない場所なのだろう。敵も背後からの奇襲に警戒しているようだ。


 ――ここからは徒歩のほうが良さそうだな。


「ルーナ、走るぞ。あと光りが反射する物はすべてしまった方がいい。鎧なんて脱いだ方がいいんじゃないか? 反射した光で居場所が知られる」


「安心してください。鎧や反射物に魔力を纏わせれば光の反射は防げます」


 ルーナはアイテムボックスに二輪車をしまい、俺のアサルトライフルを手渡してきた。その後、体や反射しそうな品全てに魔力を纏わせた。


「ほんと……、魔力って便利だな」


 俺はアサルトライフルのスコープを取り外し、ゴーグル越しから二発の黄色魔弾を撃った。見回りをしていた敵兵の眉間に当たり、魔弾が破裂した影響で黄色い光が舞った。すると、敵兵は地面に倒れ込む。


「よし……。走るぞ」


「ここから敵兵まで一五○メートルは離れていると思うんですけど……。照準器と光指示具(レーザーポインター)無しで敵兵の眉間に魔弾を完璧に当てるのは流石に気持ち悪いです。どんな目をしているんですか」


 俺とルーナは小言を言いながら、山脈の入り口に走る。なるべく音を鳴らさないよう、慎重に移動し、山脈に侵入成功。


 山脈の山道は傾斜が一五度ほどあり、木々が生い茂ていた。


「敵兵、経路、罠、確認よし。キースさん、ゴーグルだけじゃ罠を見つけるのは無理ですから、ここからは私が先に進みます」


「わかった。視界に映る敵兵は俺に任せろ。見えない敵は任せる」


「了解です」


 俺は金属帽子(ヘルメット)を深く被り、ゴーグル内の瞳の反射も防ぐ。


 ルーナは山道を先導し、敵兵が設置した侵入者を認識するための機器を発見した。魔力を使い、数秒間だけ無力化する。

 さらに進むと警報機や爆発物などがいくつも見つかった。数が多く、まるで『内側には来ないでください』と言っているようだ。


 俺達は山道を一時間以上移動し、第三幽閉施設の真後ろへと急ぐ。


 山道の移動は傾斜のせいで重装備だとかなきつい。一歩一歩踏みしめるだけで疲労が太ももに蓄積する。


 ルーナは魔力を使い、身体強化しないと俺についてこれなかった。


 俺は「こんな初っ端から魔力を使われたら体力が後々持たないだろ」と考え、ルーナの着ている鎧を外させ、背負って移動することにした。俺の重装備もいったん外す。撃たれる前に倒せば軽装備でも関係ないはずだ。


「キースさん、山道を一人の人間を背負いながら移動するのは流石に厳しいですよ」


「ルーナの小さな体ならどうにかなる。あとお前の魔力が無くなったら俺達は終わりだ」


「そうかもしれないですけど……」


「体力は使いようだ。初めから二人共消耗したら勝てる相手にも勝てない。短期決戦なんだ。救出の時に全力を出す。逃げる時まで体力が持てばいいが……」


「えっと、鎧の下は鎖帷子と下着なので、見ないでください……」


「こんな時に恥じらってるんじゃねえよ。数時間前にも鎖帷子を見たがブラジャーは見えなかったから安心しろ……。下半身は我慢してくれ」


 俺は重装備を脱ぎ、ルーナに背を向けた。


 ルーナは俺の重装備をアイテムボックスに入れた後、背中に乗ってくる。軽装備なので柔らかい感触が背中に……当たっていなかった。ただ、生尻は滅茶苦茶柔らかいと知っている。

 触ったら殴られると思い、太ももを両腕で挟むようにして背負った。


「よし、走るぞ。さっきと同じように設置罠があったら教えてくれ」


「了解です。では急ぎましょう。日が昇ったら逃げづらくなります」


「ああ。体力が減り切らないくらいの速度で走る」


 俺はルーナを背負いながら走る。敵兵を発見したらルーナが拳銃で黄色魔弾を撃ち、罠を発見したさいは地面に降りて処理する。


 俺は人運びに徹し、聖騎士様を最速で移動させた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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