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死にたがりの義勇兵。~死にたいのに、どんな逆境でも生き残ってしまう。そんな才能を持った主人公が多くの者を死ぬ気で救っていく物語~  作者: コヨコヨ


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救出

「敵兵発見! 撃て撃てっ!」


 前列にいた五名の敵兵がサブマシンガンを構え、銃口を俺に向け、発砲しようとした。


「おらあっ!」


 俺は身を屈めて敵兵に突進する。


 敵兵との距離が短かったおかげか、敵兵が引き金を引くよりも俺の反射神経の方が早かった。仲間を重んじる奴らにとってちょこまかと動く一人の敵兵は狙い辛くて仕方ないはずだ。


 俺はすでにライフルをこの部屋の床に置き捨てており、両手が開いていた。拳銃を右手で腰に付けたホルスターから引き抜くと同時に安全器を上げ、銃口を敵の眉間に向けながら遊底を左手で後退させる。

 遊底が戻る瞬間に引き金を引き、黄色魔弾を五名の額に撃ち込んだ。

 遊底が五回後退すると黄銅色の空薬莢が脱出口から飛びだし、そのままコンクリートの床に落ちて甲高いキーンっと言う音が連続し、耳の奥に響く。その頃には拳銃を右腰に付けてあるホルスターにしまっていた。


 俺が体勢を整えると同時に気絶した五名の敵兵は口から泡を出し、床に力なく倒れる。


 俺が入った部屋は敵兵が集まっているのに加え、狭かった。と言うのも、地下施設は一部屋一部屋が案外狭い。

 敵兵は休憩所として使用しており、特に何も置かれていなかったおかげで、俺は速行動ができたのだ。


「やっぱり、ルーナの訓練が利いてる。体が恐ろしいくらいに良く動くな」


 俺の体はルーナの扱きで以前の倍は動きやすくなっていた。たった五日でここまで成長させてしまうなんて……、と思ったが、ルーナ曰く、緑色魔弾を撃たれすぎて疲労困憊の肉体が何度も無理やり活性化した影響らしい。


「強くなれるのは願ったり叶ったりだな……。だが、そのぶん死ににくくなっているのは由々しき事態だ。保険金が下りるのは大分先になるのだろうな……」


 メイの治療費欲しさに大量の保険金を自分に掛け、知り合いの娘を助けるため危険な義勇兵になり、掛け金を稼ぐ。そんな人生を送っているのにも拘わらず、俺は充実していると感じてしまうのはなぜだろうか。


「俺に普通の幸せは金よりも手に入らねえだろうな……」


 俺は自分のアサルトライフルを回収し、幽閉施設の中を暴れながら進む。移動中にライトとエナの死体は見当たらなかった。きっと生きて動いているのだろう。


 俺が黄色魔弾を撃ちすぎて敵兵の数が減ってきた。だが黄色魔弾の数が残り少ない。


 ――黄色魔弾は二〇〇発くらい上備していたんだがな。もう、拳銃の中にある五発しか残ってねえ。あとは回復用の緑色魔弾が二〇発と身体強化の赤色魔弾が五発だけか。黄色魔弾を使い切ったら実弾を使うしかねえ……。実弾は無駄に転がってるからな。だが指揮官が相手を殺すなと言う無茶な命令を下しているし、どうしたものか。


 俺が悩みながら進んでいると、通路の奥の方から大量の発砲音が聞こえた。


 俺は銃声が聞こえた方に向って走る。半開きの扉を蹴破ると、コンクリート壁に血痕をまき散らしながら虚ろな目をしているライトの姿があった。


「はは……、しくった……。だが、丁度……よかった」


 俺は緑色魔弾が装填された拳銃を右手で持ち、左手で遊底を後退させ、銃身に緑魔弾を装填する。そのまま緑色魔弾をライトのこめかみ目掛けて放った。静かな発砲音が聞こえるとライトのこめかみに命中。緑色魔弾が瞬時に弾け、緑色の光を散乱させた。


 血だらけのライトは撃たれた反動でコンクリート壁に遮られた隅へと弾き飛ぶ。それと同時にライトの頭があった部分に新たな弾の痕が何発も生まれた。


 俺の到着時間が一秒でも遅れていたら詐欺師は気持ちよく死ねたろうよ。


 ――ライト、お前にはこの先も死ぬまで働いてもらう。俺を恨むがいいさ。さてと、弾の連射音からして五名の敵兵がいるはずだ。問題は、生身のまま入っていったら俺が蜂の巣になっちまうことくらいか。


 俺はリボルバーを左手で左腰に付けているホルスターから取り、こめかみに銃口を押し当てた。引き金に人差し指を添えると背筋に氷を入れられた時と同じくらい、ぞくりとする。だが、笑みがこぼれた。その瞬間、引き金を引き、赤色魔弾を撃ち込む。


 ハンマーが金属製の本体に撃ち込まれた影響で甲高い金属音が鳴った。加えて音が響きやすい通路のせいか、金属音が共鳴し、増幅される。うるさいったらありゃしない。

 気づいた時には赤色魔弾がこめかみに当たり、金槌で思いっきり殴られたような一撃が脳内に直撃した。すると脳漿が右耳から吹き出そうになるほどの激痛を得る。


 その時、金属音が敵兵に聞かれたのか、鉛弾が無暗に発射された。


 身体強化の影響で耳が良くなっているため、鉛弾一発の発砲音でも頭が割れそうになる。頭が破裂しそうなほどうるさい音が一〇回ほど鳴った。


 そろそろ弾切れになるころなので、俺は銃声が止んだら突っ込むと決める。


 俺は「黄色魔弾が無い状態でアサルトライフルを首からかけていても何の役にも立たない」と考え、荷物を床に捨て置き、五発の黄色魔弾が入っている拳銃のみを持って軽装備になった。


 三秒後、銃声が止む。俺の耳は敵の荒く浅い呼吸音まではっきりと感じ取った。


 敵はだいぶ焦っているのか、拍数が早い心音まで聞こえてきた。実弾を撃っているのに何に恐怖しているのだろうか。


 攻撃する瞬間を見計らっている間に視界が真っ赤に染まり、身体強化が完了した。


 俺はリボルバーを左腰のホルスターに戻し、左手に緑色魔弾が入った拳銃、右手に黄色魔弾が入った拳銃を持つ。後部照準器を引っ掻けて両側に動かし、二丁の拳銃の遊底を同時に後退させて魔弾を銃身に装填した。


 ――しゃ、行くか。


 俺は敵が弾倉を再装填する瞬間を耳で感じ取り、突っ込む。だが……。


「止まれ! こいつがどうなってもいいのか!」


「なるほど……。そう言うことか……」


 敵兵はエナに銃口を向け、地面に這いつくばさせている。いたいけな少女の頭や背中などを大人が踏み、エナは動けそうにない。


 俺が硬直している間に、敵兵は弾倉をサブマシンガンに装填し、銃口を俺に向けた。


「撃てええ!」


 敵兵は思った通り五名、全員が俺に目掛け、鉛弾を撃ち込んできた。「俺が大きく動けばエナが撃たれる」と思い、俺は左手で持っていた緑色魔弾が入っている拳銃の銃口を自分の左足に向けて引き金を引く。

 緑色魔弾はブーツと靴下の間をすり抜けてくるぶしに当たり、緑色の光が散乱した。綺麗だなと思った瞬間、体の腹部に激痛が走った。


 回転する鉛弾が軍服や皮膚、肉を抉り、体内に侵入してくる。


 あまりにも一瞬の出来事で、コンクリート壁に弾がぶち当たる破壊音が聞こえた。どうやら、鉛弾が俺の体を貫通したらしい。そう理解した瞬間、痛みが脳にとどいた。のろのろと動く弾の数を見るに、痛みが一発で終わるわけがなく、微笑んでいると弾が体に何発も命中した。


 敵兵はサブマシンガンでは狙いにくい頭ではなく、広い胴体に狙いを定め、鉛弾を俺に何発も撃ち込んできやがった。


 俺は実弾に撃たれるなんて初めての経験だから、激痛で意思が吹っ飛びそうだった……。ショック死してもおかしくない。だが、微笑みながら舌を噛み、意識を無理やり保つ。


 音速を超える弾が体にねじ込まれる衝撃と骨に当たった反動で身が後方に吹っ飛びそうになるのを堪えるために脚に力を入れているが、なぜ立っていられるのか謎だ。


「だ、駄目、や、止めて! 人が死んじゃう、死んじゃうよ!」


 俺の脳裏に聞き覚えのある声がした。何度も俺を誘惑してきた忌々しい天使の声だ。


「うるせえ! ガキは黙ってろ!」


 敵兵が叫ぶと発砲音が止んだ。


 俺は全身から血を吹き出しながら膝を折った。そのまま、かすれた声を絞り出す。


「て……り……あ……ちゃん」


「え……。ちょ、嘘……。キースさん……」


 俺の真っ赤な視界に映っていたのは檻の中に詰め込まれるように入っていた子供達と寝間着姿のテリアちゃん。加えて俺の方に銃口を向けている敵兵が四名、エナの方に向けているのが一名。部屋は案外広く、敵までの距離は八メートルほどあった。


「う……」


 俺は体を支えきれなくなり前のめりになって床に倒れ込む。自分の血が滞りなく冷たい床に流れ出ていく感覚は何とも表現しがたい……。ただ言えるのは脳からの指令が体にとどかず、心から死を連想した。


「う、嘘……、ちょ、え……、キースさん……」


「はぁ、はぁ、はぁ……。たく、手こずらせやがて……」


「部長、このガキはどうしましょう」


「こいつは洗脳すりゃあ、化け物みたいな少女兵が出来る。もちろん国に連れてくぞ。さっさと縛って……」


 ――エナの位置とエナに銃口を向けている敵兵の位置は俺が撃たれてからも変わっていないはずだ。


 俺は左手で持っていた拳銃を手放し、左腰についているホルスターから赤色魔弾が入ったリボルバーを手に取る。


 右手に黄色魔弾が入った拳銃、左手に赤色魔弾が入ったリボルバーを持ち、銃口を前に向け、記憶に残っている敵兵とエナの位置に目掛けて引き金を引く。


「ぐはっ!」


「…………やっぱり、キースはすごい」


 エナに銃口を向けていた敵兵の体に黄色魔弾、エナの体に赤色魔弾が命中した。


 エナは赤色魔弾で身体強化し、男にも負けない力を手に入れ、狂犬張りの動きをする。俺に実弾が撃ち込まれる前に、エナは残っていた四名の敵兵を一瞬で倒した。


 あまりの早業で身体強化で時がゆっくり流れている真っ赤な視界でも何が起こったのか、理解できなかった。


「いつつ……、たく、馬鹿みたいに撃ちやがって……」


 俺はリボルバーをホルスターに戻し、手放した緑色魔弾の入った拳銃を左手で握ってもう一発自分に撃つ。すると傷口が完全に塞がり、臓器の再生が始まった。


 左手で持っていた拳銃を右後ろのホルスターに戻す。右手に持っている拳銃は右腰のホルスターに戻した。


「…………キース、エナ、仕事頑張った。あとでいっぱいなでなでして。うぐっ」


 エナは赤色魔弾の効果で超絶強化したのち、副作用でぶっ倒れた。嘔吐物を吐きながらション便を漏らしてやがる。副作用がきつい奴はここまでなのか。


 俺は酷い頭痛に見舞われながら、立ち上がる。気絶している敵兵の中から檻の鍵を見つけ出し、檻の方に向ってよたよたと歩く。


 自分の血が靴裏に付着しているせいで、コンクリートの床を歩くとガムを踏みつけたようにネチャネチャとした気持ち悪い感覚が伝わってきた。


「き、キースさん。キースさん!」


 テリアちゃんは檻から手を伸ばし、大粒の涙をだらだらと流していた。


 ――そんなに泣いたら脱水症状になっちまうだろ……。


「あんまり大きな声で名前を呼ぶな……。頭に響く」


「ご、ごめんなさい……。でも、助けに来てくれたんですね……」


「テリアちゃんの誕生日……、一緒に寝ていてやればよかったって何度も思い返してた。全部俺のせいだってな」


「ち、違います。あの日は私が寝ていた時、扉が叩かれて、キースさんが何だかんだ来てくれたんだって勘違いして……名前も聞かずに玄関を開けたのが悪いんです」


「はは……、ほんとおっちょこちょいだな……。でも、無事でよかった。テリアちゃんを助けられなかったら……、俺は死んでも死にきれなかった……」


「キースさん……。はっ! き、キースさん! 後ろ!」


 テリアちゃんが大きな声で叫びながら後方を指さす。俺はゆっくりと振り返った。すると敵兵の部長が俺に拳銃の銃口を向け、ゆっくりと歩いていた。


 俺は右腰についているホルスターから拳銃を抜き取ろうとするも、身体強化の効果が最悪な所で切れた。膝間づき、視界が歪む。


「はぁ、はぁ、はぁ……。痛ってえな糞が……」


 部長は自分の腕に弾を撃ち込んだらしく、痛みからルーナの麻痺魔法を解いていた。だが、麻痺の効果はまだ残っているらしく、体が震えており照準が定まっていない。そのため拳銃の銃口を俺の眉間に限りなく近づけてくる。


「震えるな……。身に力を入れ、腕の力は抜け……。そしたら照準器をしっかりと合わせて引き金を引け……」


 俺は歪む視界と大きな耳鳴り、体の感覚がおかしい中、声を絞り出す。


「きさま……、なにを言って……、なっ!」


 部長はずっと俺を見ていた。俺がまた何かしでかすんじゃないかと恐怖していた。だからこそ、ガキに目が行かなかった。なんせ、抵抗も出来ない弱いガキだからな……。無視しても問題ないはず……そんな甘い考えが負けを引き寄せる。


「大好きな人は……自分の手で守るんだ!」


 テリアちゃんと部長の距離は二メートルほど。ほんと、ギリギリだった……。


 俺の後方からマグナム弾の火薬が爆ぜる大きな発砲音が鳴る。血が俺の視界に映る部長の首から噴き出した。


 テリアちゃんは部長の頭を狙ったのかもしれないが、いい方向にずれてくれた。首を討たれても脊髄が損傷していなければ即死はしない。加えて気を失わせるには十分な止血量だ。


 部長は後方に倒れ、血を流している。


 俺は部長に緑色魔弾を撃ち、死ぬのを阻止した後、黄色魔弾をもう一発撃って抑止する。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……。て、手が……痺れて」


 俺は後方を向いた。すると、テリアちゃんは俺が誕生日に贈った隠し持てるほど小さい拳銃(デリンジャー)を握りしめていた。


 硝煙が銃口から上がり、火薬が焼けた匂いが鼻に入ってくる。硝煙の香りが良い匂いだと思うなんて初めての感覚だ……。


「よく撃てたな……。そもそもよく隠し持ってたな……」


「パンツの中にずっと隠してました。身ぐるみを剥がされなかったのが幸いでしたね。キースさんを守ろうと思ったら体が動いたんです」


 テリアちゃんは泣きながら笑い、凛々しい表情を浮かべる。もう、どんな感情なのかわからなかった。


「はは……。そうか……。まさか助けに来た方が助けられる方に守られるなんてな。また俺は死の損なったか……」


 俺は自分の体を無理やり立ち上がらせる。そのまま鍵を使って檻の入り口を開け、攫われた子供達を解放した。


「うわぁ~ん。キースさん、怖かったよ~!」


 テリアちゃんは俺の体に抱き着いてきて、他の子など気にする素振りすら見せず、大泣きする。先ほどまでのカッコいい姿はどこえやら……。


「たく、もう大丈夫だ。リーズ先生のところにすぐに返してやる。まあ、移動が少し大変だが、聖騎士がどうにかしてくれるだろ。あ、そうそう。テリアちゃん、外してやらなくてすまなかった」


 俺はテリアちゃんの髪に絡まり、取りにくくなっていたペンダントを外し、リーズさんの贈り物を首に新たに付ける。


 ――これでペンダントも無事回収できた。


 ペンダントの装飾品を開くと暗号らしき羅列がしっかりと残っている。


「わぁ~、よかった~。ずっとずっと着けたかったんです!」


 テリアちゃんはペンダントを見て笑顔に戻った。そのあと俺に抱き着き、キツツキかと思うほど頬に何度も何度もキスしてきた。


 俺は気絶しているライトとエナを蹴り起こす。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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