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蓮実さんと森野君(仮)

相槌さしすせそ?

作者: 須賀 玲衣

『気になる台詞』に登場した二人の会話ですが、単独で読んでも問題ないと思います。



 そういえば、先輩との会話で適当に相槌を打っていたと言っていたけれど、そんな態度で大丈夫なのだろうか。


「みくびってもらっては困るなぁ、僕は相槌マスターだよ」


 いや、みくびるとかそういう問題ではないような。そして『相槌マスター』って何なんだ。


「会話のさしすせそって言うじゃない?」


……ええと、『流石、知らなかった、すごい、センスある、そうなんだ』だったっけ?

 

「そう、それ。でもさー、他はともかく『センスある』って使いどころが難しいというか、普段の会話であんまり言わなくない?」


 まあ、確かに。料理のさしすせそに準えて無理矢理作った感はあるかもね。


「そうそう、それに、このさしすせそだと、ある程度話を聴いていないと使い分けられないよね?」


 確かに。…いや、そもそも話はちゃんと聴くものでは?


「そこで、僕の相槌術のご紹介です!相槌あいうえお~‼︎」


 あ、話をちゃんと聴けというのはスルーされたか。その態度は如何なものか。まあ、取り敢えずはいいか。それで?


「実は、相槌というものは、あいうえお、というか母音だけで事足りるのです!あー、いえ、うん、えー、おー…これを相手の雰囲気に応じて使い分ければ、君も今日から相槌マスター!」


 いや、さっきからそのTVショッピングみたいな口調とテンションは一体何なの。胡散臭いな。


「あー、胡散臭いなんて傷つくなあ。僕、これでも繊細なんだけど」


 はいはい、いいから続きは?


「つれないなあ、だがそこが良い。……それはさておき、往年の名作演劇漫画を知ってる?」


 知ってる、というか、まだ完結していないんじゃなかったっけ?その漫画が関係あるの?


「演技レッスンで四つの台詞だけを使って相手のアドリブ演技に対応する、みたいな場面があったの覚えていない?それの応用なんだよ」


 まだ初心者だった主人公が、同意と否定と感謝と謝罪を示す四つの言葉を巧みに使い分けて、高スペックなライバルを驚愕させたヤツね。どの曲が好きかと訊かれて、言葉では答えられないからレコードを探して相手に「ハイ」と差し出していたけれど、演技としてはともかく、無言で他人の家の棚を漁るのは許されるのか、と腑に落ちなかった思い出があるけど……いや、ちょっと脱線してしまった。そういうことか。


「そうそう。同じ言葉でもイントネーションとか伸ばし方でニュアンスを変えられるんだよ。例えば、感嘆の『ああ!』と同情の『あー…』とか、拒否の『いいえ』と謙遜の『いえいえ』とか、共感の『うんうん』や曖昧な『うーん…』や否定の『ううん』、といった風に、相手の表情を見て使い分けるのさ」


 なるほど。同意の『ええ』と疑問の『えっ?』、不服の『えー…』みたいな感じね。


「その通り!同じ音なのに、意味に幅を持たせられるって、言葉は奥が深くて面白いよね♪」


 それには同意するけれど、やっぱり話はちゃんと聴いた方が良いと思うよ。


「いやだなあ、聴くべきことはちゃんと聴いているから大丈夫。情報の取捨選択は大事だよ」


 はいはい、もういいよ、それで。

御高覧ありがとうございました。

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