帝国下っ端雑兵青年二人組が女神のチート受け継いじゃったら女体化した訳なのですが
つまりは初投稿です
「ゼルド…これはどう言う事なんだと思う?」
「アレス…いや、うん、どうなんだとは思うんだけどね」
場所はカーネリオ帝国の魔境、アイン大森林の奥深くに聳えるオーラ火山に開いた迷宮の地下深く。
僕、アレス・イリアスと同じ部隊の友ゼルド・ジンの二人が何故此処に居て何故途方に暮れているかと言うと話は長くなる
長くなると言っても短くも出来ると言えば出来る つまり…迷宮に入ったら地下に落ちた そう言う事だ
まぁ最初から言うと…うん…まぁ良いか追々で
大事なのはこの状況 僕らの状況 不可思議奇天烈奇想天外のこの、この現在だ
「何故僕ら…女の子になったんだろうか?」
「仰ってたじゃない…説明は受けたでしょ…?私達はさ、ほら、その…」
ゼルド
彼は僕が帝国の兵士に志願した時からの知り合いで茶髪に翠の猫目が印象的な穏やかな性格の少年だった
何を隠そう僕アレスは料理が趣味で腕っぷしの方はからっきしと言っても良い感じの下っ端雑兵ど真ん中な男だったのだが
彼もまた僕と同じ趣味で境遇だったものだから一目会った時から気が合っていたのだ
そんな訳で同じ部隊に配属された幸運から日頃から良くつるみ、いびりも一緒に乗り越えて来た酸いも甘いも共有してきた親友同士なのだ
今日も雑兵ライフワークとして帝国の第三王女フィリア様が何の思いつきかは知らないけど火山の迷宮に入ると仰るので随伴部隊として
御供したのば僕らの部隊だった
王女様の近衛には名だたる騎士の部隊が追従していたので僕らは同心円の一番外のいわば迷宮のカナリア
やばい時は最初に死んで後続を生かす為の試金石と言う奴だった
その為に下っ端の僕らは迷宮探索委部隊の先頭に居た訳なんだけど…そこで落ちた
面倒な小物モンスターをちびちび捌きながらとりあえず迷宮そこそこ深くまで進んで来たのだけどそこの通路が崩れたのだ
巻き込まれたのは僕とゼルドの二人だけ
落ちる時チラッと後ろの部隊の連中と目が合ったが助けようともしてくれなかった
まぁ気持ちは分かる 今生きてる身としては腹も立つが後ろの連中と同じ立場だったら僕だってどうせ同じ反応だったろう
崩れた道の欠片と共に僕らは奈落の底へ真っ逆さま
結構な高さを落ちて結構な衝撃を受けたがなんとか助かった僕ら
しかし灯りは壊れてしまい自分の出せるライトの魔法だけを頼りに痛む体を宥めながら進みだした
幸いな事に魔物に出くわすことも無かったが道も判らない、出口があるのかさえ定かではない地の底を僕らは体感で2日程彷徨った
元々もさほどまともな装備も荷物もなくあるのは僕ら手製の行動食が想定では一応3日分である
チョコレートにナッツとかいろいろ固めて作った硬いチョコバーを一日一本齧りながら進み僕らが辿り着いた場所は…出口のない袋小路だった
他に道はない 上にも下にも道は繋がっていなかった
岩で囲まれた成人男性が6人位でいっぱいになる程度の狭い空間
此処が僕らの墓穴なんだろうか
疲れていた僕とゼルドはその部屋の中に入って奥の壁に触れ無言でどちらともなくその場に腰を下ろした
ぼんやりと壁に背を預け暗い闇の奥を見つめた僕はふと背中に何か当たって痛いな、と思って振り向いた
なけなしの魔法の灯りを近づけて良く見ると石壁になにやらでっぱりと言うか石筍の様なものがある
丁度僕の背中に当たる大きさで何とはなしにその石筍の様なものに触れ少し擦ってみるとボロリと土が崩れ落ちた
何か硬い芯が脆い土に覆われている様子だ そのままポロポロと土を崩すと中のものがキラリと光を反射した
「…? なんだろう 金属製の何かがあるみたいだな」
「どうしたの…?…何か…あった?」
僕の様子にのろのろと顔を上げたゼルドを横目に僕はそのまま両手で土を崩し続けた
そう時間もかからずに現れたのは…金の様な、銀の様な見た事も無い材質で出来た女性の像だった
いや、ただの女性ではないだろう おそらく何らかの女神像だ
僕らの国は一神教だし主神は男性な筈だ これはよくわからないが異教の女神像と言う奴なのだろう
優美で繊細な彫刻はちょっとしたもので教養などさほどない僕でも随分価値がありそうだとわかる
「女神像…か ハハ、此方をお連れして地上に出られれば然る所に奉納してお祀りも出来るんだろうけどなぁ…」
「…お美しいお姿であらせられる 今の私達にとっては…いや、これも御慈悲かな」
美しい女神像は薄汚れて疲れ切った無力な僕らにとっては後の供養と言うか死出の慰めになるだけだろう
この先の絶望が重く圧し掛かった口はいつしか閉ざされ僕らは無言で女神像を見つめるままになった
祈り方は違うだろうが気は心と言う奴だ
僕らは両手を胸の前で組み女神像に向かって祈りを捧げた
どうか僕の魂の道行きを御見守り下さいますよう
…出来れば、この隣の友ゼルドだけでもお助け下さい…
祈りの姿勢のまま僕らはその場に倒れ伏した
絶望は圧し掛かったままだが少し安らいだ気持ちだ
魔法の灯りは掻き消え暗闇が全てを包みふーっと大きく息をついて僕はそのまま闇に溶ける様に意識を失った
そのままどれほど気を失っていたかはわからないが何だか周りが明るい気がする
己を苛む飢えと乾きもなりを潜め体が妙に軽かった
あ、これはあれだな 天国って奴だろ
僕はピンと悟った 死んだんだな まぁ…苦しくないみたいだし仕方ないか
目を薄く開けてみた ぼんやりした視界に僕と似たような大きさの影が見える ゼルドか?君も来てたのか 残念だな…助かって欲しかったんだけど
僕は息を吸って大きく吐いた 死んでも呼吸はあるのかぁ
呑気な事を考えながら僕はのそりと体を起こしてみた
周りを見ると真っ白い空間…いや?どうもなんだか見覚えがある岩壁だ
灯りが煌々としているから白い空間かと思ったけれど意識を失う前に居た迷宮の奥ではないか?
状況がわからずキョロキョロしてみた わからないままだった
そうしていると隣の影も身を起こした
やはりゼルドだった 倒れる前と同じ格好で同じ場所に居た同じ僕らだ
「起きられたか?ゼル…」
僕は彼にそっと声をかけてみたが途中で言葉を失った
彼の髪の色が変わっていたのだ あれ?たしか彼は茶色い髪だったんだけど…どうも、翠の髪色に見えるのだ
んん?僕の目がもしかしておかしくなったのかもしれない 後は灯りのせいか?
疑問でいっぱいだった僕の声に顔を上げた翠髪のゼルドは僕の顔を見て笑おうとしたが彼もまた怪訝な顔で首を傾げた
「…アレス?だよね あれ?君、あれ?…髪を染めたかい?」
彼の言葉に、は?と思った
僕の髪は少し長いので自分の髪を掴んで目の前に持ってきた
青い
僕の髪は黒髪だった 今目の前のこの髪の束 確かに自分の髪の筈だが青いのだ
「青いな…?」
僕の言葉にうん、青いと頷いたゼルドに僕も君の髪も翠になってるぞと教えてみた
彼は驚いて自分の前髪を掴んで見つめていた
「翠だ」
「あぁ、翠だ そして僕は青いな」
「うん」
訳がわからない
髪の毛の色が変わって元気に回復する部屋なのかな此処
迷宮ってわからないなぁと顔を見合わせていると部屋を照らす光がますます強く輝き始めた
自分の事で手一杯だったがそう言えばこの光源は何だったのか
遅まきながらその疑問に思い至った僕の向けた目の前には正解が佇んでいた
女神像が光っているのだ
気付いた時にはもう眩くて直視できないほどだった
思わず目を閉じると僕らのものではない声がかすかに聞こえて始めた
「お目覚めですか…二人とも」
慈愛に満ちた優しい女性の声
この女神様のお声なのだろう 神の声なんて初めて聴いた
僕の心はもう状況も呑み込めずただ問われた声に頷くばかりが精いっぱいだった
「は、はい、えぇとその 女神様に置かれましてはご機嫌麗しく…」
「お、お、お救い下さいました事を感謝致しますです、はい、本当に」
僕らは続く閃光の前にぎりぎり薄目を開けながらたどたどしく挨拶と感謝を口にした
よくわからないが微笑まれたようなな感じがして光は急速に強さを失って目を開けていられるちょうど良い強さに変わった
いつの間にか女神像の上にその女神様ご自身の少し透けた上半身が浮いていた
とにかく僕らは跪き祈りの姿勢を取ってみた
「お楽にして下さいな…わたくしはお分かりの様ですがまぁ、女神です もう随分古い時代の…」
表情も口も動かないその女神様はそれでも僕らに言葉を告げて来た
「この国の出来る前、この国の神の産まれる前、ずっとずっと前から此処に女神として存在していたわたくしは
もう名前もわからなくなってしまいました
ただ在るのは”女神”の力の器
忘れられても消えることのできない力の容器
わたくしが、いえこの力の容器が消えてしまうとこの世界の均衡が崩れてしまう
だからわたくしはただ此処に在った…
でも でもわたくしは もう疲れてしまった 容器は壊れかけている
それでもこの世を恙無く護ってあげたいと思っています」
はい、はい、何と慈悲に満ちた想いでしょう
僕らは女神様に護られた世界に産まれていたのですね
これまでの貴方様の慈悲の御心に感謝致します
お疲れになっても当然と思います 僕らにはただ感謝しかありません…
「貴方たちにお願いがあるのです この力の新たな器になって欲しいのです
貴方たち二人ならば出来る… 死に向かう時にも友の身を案じ合える貴方たちならば…
この力は大きく、あなたたちのこれまでの生活や運命を大きく変えるでしょう
それでも頼みたい わたくしと貴方たちとの巡り合わせにはきっと意味があった
女神の化身として 貴方達には喜びも悲しみも多々訪れる
優しくあって欲しいの… お願い…」
女神の表情や言葉は段々と悲しみと苦しみそして求め願う気持ちで満ちて行った
それはまるで石に血が通っていく様に
僕らはと言えばただ、その願いに応える事しか出来なかった
それがどう言う結果を僕らに齎すのか あまりに大きくて途方も無くて今の僕らには想像も出来ない事だろうが
頷いた僕たちを見て最後に女神様がどんな顔をしたのかはわからない だが大きな安堵と心配とが入り混じったものだっただろう
目の前がまた眩く光り目を閉じていてもまだ眩しくて僕は両目を手で覆って蹲った
大きな力が膨らんで縮んで僕の体を通っていく…いや、納まっていく
どれだけの時間そうしていたのか、僕は叫んでいたのか 身体はバラバラなっていないのか
なにもかもわからなくなって体の中に納まった溶岩の様な感覚が自分の体以上に膨らんでいく
体が広がって世界中になって世界中が僕になった感覚
そして脳裏に不思議な世界が見えた
この世界じゃない 神の世界だろうか?いろんな知識が流れ込んでくる
神の いや、何処かの 星 それも世界 異世界───
膨らんで弾ける 弾けて縮まる 理解に及ぶ理解の外
滝つぼに落ちた小さな葉っぱになった様な気分だった
そして そして現在に至る
「ゼルド…これはどう言う事なんだと思う?」
「アレス…いや、うん、どうなんだとは思うんだけどね」
女神の光が失われても僕らの周りは明るかった
この青い髪の僕アレスと翠の髪のゼルド自身が光り輝いているからだ
着ている服はそのまんま 土埃で薄汚れた帝国の雑兵の装備だ
背の高さは変わってないが腰や靴など少しぶかぶかになっている
首が、手が なんかいろいろ細くなってて声が高い
細いと言っても一部盛り上がった部分もある 胸、あと尻もか
下着の中も随分スカスカになっている
目の前のゼルド 彼は翠の髪に翠の猫目の聡明そうな可愛い…少女の姿だ
そう言う事か そう言う事なのか
つまり僕らは…
「「女神の力を受け継いだが為に女神の化身になった」」
「ゼルド…」
「アレス…」
「これってつまりは」
「つまりはこれって」
「「異世界チートTSモノ…って奴か」」
異世界の知識、ばっちり受け継いじゃった訳か~…
ありがとうございました~~~