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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

同性と理性

作者: ウノカグラ

 高校生の時、初めて男性として生まれてきたことを後悔した。僕が異性だったなら、あなたは僕を好きになるでしょうか。考えても無駄だ。ただのないものねだり。教室の隅で気配を消して生きていた僕と、いつも教室の中心で生きていたあなた。釣り合う筈がないことは、目に見えていた。しかし、これは恋ではない。恋ではない。そう信じたくないだけかもしれないが、ただの、憧れ。憧れ以外の何者でもない。恋だとか愛だとか、名前をつけてしまえば、何かが弾けて、終わる気がする。


 高校時代、接点がなかったのに、僕たちは大学で再会した。背が高くなっていた.正直、見惚れてしまった。綺麗だった。整った顔立ち。大きな手。全てを僕のものにしてしまいたいと願った。そんな自分自身に恐怖する。怖い。恐ろしいことを考えていた。あなたを僕のそばに置いておくわけにはいかない。もっとあなたは遠くに行くべきだ。


 女子という生き物が好きではない。授業中に、恥ずかしげもなく大きな声で好きな男子の話をする。まるで、「聞いてください」と言わんばかりに。頭が悪い。僕みたいな人間は、よくそんな女子たちに揶揄われていた。多分、その経験から、僕はあなたに憧れを抱いたのでしょう。同時に、そんな女子に好かれるあなたが妬ましかった。羨ましいとは思わない。太腿が見え隠れするほどのミニスカートを履いて、あなたにすり寄る女子たちを何度恨んだことでしょう。何度、恨んだことでしょう。あなたは何度告白されても断っていた。「興味ない」という真面目な理由。そう断ると、猫のように甘い声を出してすり寄っていた女子たちは、まるで虫を見るような目で、あなたを見る。それが気持ちよかった。口角を下げようと努めても、笑ってしまう。あまりに滑稽だった。


 今、僕とあなたは、同じ部屋にいる。ベランダで夜空を眺め、他愛もない話をする。幸福だった。大学生になったあなたは、煙草を吸っていた。かっこよかった。吸う?と、咥えていた煙草を、僕の口に入れようとする。思わず後退りしてしまった。好きな人にもそうするのだろうか。僕が同性だからだろうか。悔しさを覚えながら、あなたの吸っていた煙草を咥える。湿っている。身体が熱くなっていく。火をつけてくれた。それだけで嬉しくて、不意に泣きそうになる。潤んだ目で見つめると、柔らかく微笑んだ。ああ、僕は、やはり──。そう確信して、あなたの顔に、煙草の煙を吹きかける。

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