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神々は天罰を下す  作者: 杏みん
207/222

呑気

 「はぁ……」


 思わず零れた、深いため息。


 「レナぴょん、そう落ち込まないでよ」


 「いや記憶失ってる本人に慰められても」


 「だって、どうにもならない事なら落ち込んでも仕方ないじゃん? 俺の記憶障害は能力を使う副作用であって病気じゃないから、医療隊員にはどうにも出来ない。これ、前からわかってたことだからね~?」


 そう。

 慌てて駆け込んだ医療隊で、得られた回答がそれだった。


 「でも……自分の腕がマヒする程の大事件を全て忘れているって……そんなの、今までもあったんですか?」


 ベッドに座るエミリオを顔を、心配そうにのぞき込むルーク。


 「だから、さっきの隊員さんが言ってたっしょ? 俺はカルラと食堂マダムの夢をのぞきまくったらしいよ。かつてない位ガンガンに。だからその分、しっぺ返しもデカかった。何日も意識不明の状態だったらしいし。目が覚めるまで見守ってくれただけ、医療隊には感謝だよ~」


 ひょうひょうと、自身の身に起きた事を改めて説明するエミリオ。ジルは眉間に皺を寄せた。


 「感謝だよ~、じゃねえよ。なんでそう呑気なんだお前は」


 「だって、何があったかは皆に説明してもらえたし。俺はそれで十分だよ。記憶無くしちゃって凹むより、困った時に助けてくれる仲間がいて良かったな~って喜びに浸る方が、ハッピーだと思わない?」


 笑顔でそう応えるエミリオに、私はジルの言う『呑気』とはまた別の感想を抱いた。


 「なんかすごいわね……あんた」


 「え~うれしい~。レナぴょんに褒めて貰えるなんて」


 「……エミリオがヘラヘラしてても、俺は許さねえからな」


 『へ? なんの事?』と首を傾げるエミリオを無視して、ジルは医務室から出て行ってしまった。


 「レナさん、エミリオさんには僕がついてるので……行って下さい」


 「……うん。悪いわね、ルーク」


 「ちょっとちょっと~! また俺をおいてけぼりにして話をすすめる~!」


 私の背に向けて、若干ぎこちない動きの左手を伸ばすエミリオ。


 ごめん。あんたの事は後でしっかりフォローするから。


 そう、心の中で呟いて……私はジルを追いかけた。

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