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神々は天罰を下す  作者: 杏みん
142/222

再会

 「きゃああああああああ! 放して! 助けてー!!!!」


 「え、ちょ、おい」


 俺は困惑していた。

 予想していたのとはまったく異なる、マリアのリアクション。


 包み込むように抱きしめる俺を、悲鳴をあげながら、ポカポカと殴るわ蹴るわ。

 

 「マリアさん! どうしまし……あ! クオン隊長!!」


 「え!? あ、ホントだ! 隊長!! 来てくれたんすか!?」


 煙の向こうから、次々と顔を出した、ルークとジル。

 二人とも、あちこち負傷しているようだが……命に別状は無さそうだ。


 「二人ともご苦労。無事で何よりだ」


 マリアに暴行されながら労いの言葉をかける俺に、眉を顰める二人。


 「ジルが背負ってるのはアルマンか。無事か?」


 「あ、うっす! 怪我はしてるっすけど、気絶してるだけっす!」


 「ルークが抱えてる女は?」


 「ク、クオン隊長、それよりも今はとりあえず、マリアさんを落ち着かせてあげるべきでは?」


 「嫌! 放して! 何なのあなた! 神族!? それ変装!? クオンさんに化けるなんて、悪趣味にも程があります!!」


 ルークの言う通りだ。

 ポコポコと殴られ続けたままでは、報告も帰還もままならない。

 何より、感動の再会が混乱と暴力で終わるなんて、悲しすぎる。


 「マリア、マリア、落ち着け。俺だ、クオンだ」


 「クオンさんは天国です! もう! さっきの雷神といい、何なの!? 人の心の傷をこれ以上えぐらないで!!」


 「生き返ったんだ、詳しく説明すると込み入った話になるんだが」


 「死人は生き返りません!! それがこの世の理です自然の摂理です!!」


 「マリア、頼むから話を……」


 「ジル君、ルーク君! 私はいいから、二人を連れて逃げて!!」


 ダメだこりゃ。


 相変わらずの頑固さ。いや……死人が生き返るなんて非常識な事を、信じろっていう方が無理なのか?


 ルークが背負っている女は顔色が良くない。恐らく急を要する容体だ。

 仕方ない。手荒な真似はしたくないが、ここはマリアを失神させて、本部で落ち着いてから事情を……


 ガタン。


 「え?」


 「あ」


 色々と脳内で作戦を練っていた時。落ちた。腹に仕込んでおいた、壁掛け時計が。


 そして同時に、ポコポコが止まった。マリアの視線は、足元の時計に釘付け。


 「これって……クオンさんの……部屋の……」


 「そう、そうだ、わかるか?」


 「わかります、だって……ずっと見てたから。あの日……隣で寝てたのに何もなくて……私どうすればいいんだろうって……ずっとこれを眺めてて……」


 「懐中時計なんて持って無いから、慌てて持って来たんだ」


 「……え? じゃあ……え? ほんとに……? え?」


 「いや、え? は、こっちの台詞だろ。やっと会えたってのにタコ殴りにされるなんて、思ってもなか」


 「きゃあああああああああ!!!!」


 俺の言葉を最後まで聞かずに、再びマリアは絶叫した。


 でも……さっきのように、助けを求める悲鳴じゃない事はすぐにわかった。


 堰を切ったように溢れ出た涙は温かく、俺の背に回された細い腕には……肋骨が折れるのではという位に、力が込められていたから。

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