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3話 探検したんだ、新しい家!


窓から差し込む明るい光で目が覚める。

なんか暑いな…、と思ったら、背中から抱きしめられていることに気がついた。


そうだ、昨日はテオくんと一緒に寝たんだった。

ちょっと居心地が悪いけど、人と一緒に寝るのはいいな…。

なんだか安心する。


もぞもぞと動いて、テオくんの方を向いてみると、彼はまだ寝ていた。

近くで見ると、幼い彼の髪はふわふわで、肌もぷにぷにしてるから天使みたいだ。

テレビとかで見るアイドルとか役者さんは小さい頃から可愛かったりするが、この子もそうなのだろうか。


そんなことを思っていると、私が動いたからかテオくんが目を覚ました。


「ううん、んあ…。あっ、おはよう、レイラ。」


テオくんは薄目を開けて、そのキラキラした紫の目に朝日を反射させながら、ふにゃっとした笑みを浮かべた。


か、可愛い…!何だこの生き物は!


テオくんはそのまま私をぎゅーっと抱きしめた。


え、ちょ、ちょっと苦しいかも…。

でも、幼い彼の体温はちょっと高くて、ふわふわした気持ちになった。


「よし!そろそろ起きなきゃ!シロのお手伝いもしなきゃだし!」


しばらく布団で私を抱きしめていたテオくんは、そう言って布団から出た。


私は抱っこされたまま彼のされるがままである。


時々、テオくんはこっちを見て嬉しそうに微笑んだりする。

自分で温めた卵が孵ったらそりゃあ嬉しいよね。


テオくんが着替えたあと、2人(1人と1匹?)で下に降りると、シロさんが朝ごはんを用意してくれていた。

私の分も、テオくんの分の隣に置いてある。


「おはよう、テオ。レイの分もあるから、食べさせてあげてね。」

「うん!レイはこれ食べてね。いただきます!」


私はテオくんに机の上に乗せらると、彼もその隣に座って勢いよく食べはじめた。

シロさんもちょっと遅れて席に着く。

昨日から思ってたけど、テオくん、けっこう落ち着きのない子なのかも?


とりあえず、私も朝ごはんを食べることにした。

野菜や豆、お肉が食べやすい1口サイズに切られたサラダみたいな感じだ。

丁寧に作ってくれたシロさんに感謝しつつ、口に入れる。


…うん、素材の味って感じだ。

昨日は1個1個食べたからそこまで気にならなかったが、サラダになると味が欲しくなる。


しかしせっかく作ってくれたので文句は言えないな…。

そう思ってもくもくと食べながらテオくんの方を見た。

結構な勢いで食べてはいるが、ちょっと食べ方が上品だ。

フォークもお皿も綺麗に持って食べてる。

隣を見るとシロさんも似たような感じで食べてる。


シロさんはそういうのにうるさいのかな…?

昨日話を聞いた限りだと、結構長い間一緒にいるみたいだったし。


私とテオくんが同じくらいに食べ終わると、テオくんが私の分も食器を下げてくれた。

シロさんもそれに続く。

今私がのっかってる長机の前にあるキッチンでシロさんとお話しながらお皿を洗っているようだ。

自分でちゃんと片付けするなんて…。

テオくんは天使なだけじゃなくていい子なのね。


しばらくすると、キッチンでシロさんと話していたテオくんが戻ってきた。


「僕ね、いつもはシロのお手伝いするんだけど、今日はシロお仕事に行くんだって。だから、レイと僕はここでお留守番!お勉強した後は遊んでいいって!」


あら、シロさん出かけるのね。

星を集めるお仕事って言ってたけど、星が降る大陸はお隣って話じゃなかったっけ?

結構遠出になるのでは?


ちょっと不安になった私を、テオくんは抱えて、そのまま2階に連れていかれてしまった。

まあ、テオくんの様子は先程から変わらないので大丈夫なのかな?


テオくんの部屋に着くと、私はベットの上に乗せられた。


「シロがね、毎日ちゃんと勉強しないと怒るんだ。これやってねって、本とか貰うの。だから、レイはちょっとまっててね。」


そう言って、パタパタと部屋にある小さな机の方に移動してしまった。


勉強か…。

5歳の子ってそんなにちゃんと勉強するものだっけ?

とはいえ、この世界の知識に興味が湧いてきたので、テオくんの机の方へ移動しようと試みる。


この体になって、まともに歩いたことがないのもあってか、よちよちとしか歩けない。

うぅ、これじゃ移動できないな…。

というか、ベットの上から落ちたらめっちゃ痛そうだな、やめよう。


テオくんがどうしようかと思って、あたりをキョロキョロしてみると、ベットの横に本が置いてあるのが見えた。

あれを読んでれば暇が潰せるかもしれない。


そう思ってのろのろした足取りで近づいてみる。


だんだん表紙が見えてくると、それが知らない文字で書かれていることに気がついた。

え、これじゃ読めない…。


あれ、思い返して見れば、テオくんやシロさんの会話は日本語じゃなかったな…。

なぜか理解は出来たけど、よく考えたらおかしいよな…。


そんなことを思っていると、だんだんと本の表紙の印象が変わってきていることに気がついた。

え、これは昔話の本?なのかな?

頭の中に文字の意味がぼんやりと浮かぶ。

先程まで読めなかった文字がなぜか理解出来るようになっている。


謎現象に困惑しつつ、私は本の内容に興味を持ったので、本を開こうとしてみた。


あれ、手がちっちゃいし指も慣れてないから動かしづらい…。

ぺち、ぺち、と何回か失敗したあと、ようやくページを開くことが出来た。


読み始めると、先程のように読めなかった文字がなぜか理解出来るようになっていく。

謎現象ではあるが、だんだん慣れてきた私は、本を読み進めた。


内容は、よくある教訓を含めたような話だ。

日本でよくあるようなものと違うのは、内容が結構なファンタジーであることくらいだろうか。

しかし、初めて知る物語は面白かったので夢中になって読んだ。


1時間ほどたっただろうか。

テオくんが動く音がして、こちらへ近づいてきた。


顔を上げるとテオくんと目が合った。


「レイ、お本が読めるの?」


テオくんがコテン、と首を傾げる。

その拍子に前髪が揺れて、可愛いことこの上ない。


私がコクン、と頷くと、


「そっか!じゃあ今度僕のお気に入りの本貸してあげるね!そしたら僕がお勉強してる間もレイはつまんなくないよね!」


そう言うと、テオくんが私を抱っこした。


「今日はね、お外に行こうかなって思ってたんだけど、ティティが来るまでレイと探検することにするね!レイが迷子になったら大変だもんね!」


そう言うと、駆け足で部屋を出る。


ドアに向かってるとき、結構勢いがあったからぶつかるんじゃないかとビビってしまった。


廊下に出ると、まだ行ったことのない方向へ進んでいく。

どうやら2階は、廊下の左右に何部屋かあるようだ。

改めて見ると、2人で暮らしているにしては広い家な気がする。


廊下は、一番端が階段になっていて、その反対側は行き止まりだ。

窓がついてて、外には木が生えてるのが見えた。


テオくんの部屋は1番手前。

窓の方に向かって進んでいくと、テオくんは角部屋の扉を開けた。


「ここはね、物置だよ。シロがあんまり触んないでねって言うんだけど、たまーに1人の時にこっそり覗きに来るんだ。変なものがいっぱいあって面白いんだよ!」


そう言いながら中に入っていく。

部屋の中は色んなものが置いてあったが、結構きちんと整理されている。

テオくんの言った通り、よく分からないものがいっぱいあった。

いわゆる魔道具っぽいものや、なにかの機械の一部のようなもの、植物なんかも置いてある。


テオくんの言う通り、結構面白い。

光を放ってる怪しい人形とかもあるし、綺麗な模様が刻んである物もある。

美術館に来た気分だ。


私を抱えながらテオくんが部屋を1周すると、


「次はシロのお部屋を覗きに行っちゃおう!」


と、部屋を出る。

テオくんの方を見てみると、随分と上機嫌だ。


物置の正面の部屋に入ると、テオくんの部屋よりちょっと大きいくらいの空間だった。

ベットに机、テオくんの部屋と違うのは、クローゼットがあることくらいだろうか。

テオくんの部屋はベット下収納になっていたのて、ちょっと驚いた記憶がある。


「シロはね、お着替えする時以外このお部屋あんまり使わないんだ。あと、寝る時!まあ、僕もそうなんだけどね!」


と言って、特に面白いものもないのだろう、そのまま部屋を出る。


シロさんの部屋の隣は、私が生まれた工房みたいなところだった。

結構な広さがある。


「シロはね、ここでお仕事するの。たまにお外にも行くけどね。ここで、シロはね、色んなもの直せるの!この前はね、僕の頭に雪が降る道具を見せてもらったんだ!」


なんだその道具。

めっちゃピンポイントだな。


部屋は大きな机、作業台なのかな?の上に工具やら紙やらが散乱している。

壁に並べられた棚には何に使うのかよく分からない瓶に入った液体や、道具が並んでいる。


「僕はたまにシロのお手伝いとかもするんだけど今日はシロいないからお休み。レイも一緒にお手伝いできるかもね!」


えぇ…、私は楽々ペットライフを送りたいんだけど…。

でも細かい作業は嫌いじゃないので意外と面白いかも。


「次の部屋はお客さんが泊まれる部屋だよ。といってもだいたい泊まるのはティティくらいなんだけどね。あっ!ティティはね、シロのお仕事を一緒にやってる人なの。シロと違ってずっと外にいるみたいだけど。ティティはね、僕よりちょっと背が高いの。でも、おっきくなったら僕の方が高くなるってシロが言ってくれたんだ!」


ティティさん、という人がいるらしい。

そういえばさっきもその名前を聞いた気がする。

ずっと外にいる、というのは、星が降る大陸にいるのかな?

シロさんの同僚ってことは何か役割分担とかがあるのかも。


テオくんが扉を開けると、テオくんの部屋と同じような間取りの部屋が見えた。


「この部屋、僕のお部屋と同じだからよくティティにお掃除お願いねって言われるの。ティティが使うんだからティティが掃除すればいいのに…。」


テオくんが頬を膨らませる。

ティティさんはそういうところが可愛くてテオくんに頼んでしまうのでは…?


「じゃあ次は1階ね!」


階段を降りるとちょっと見慣れてきたキッチンと長机が見える。

この辺の作りは日本にいた頃とあまり変わってない気がする。


え、待って、あれコンロIHみたいな感じになってる。

あれは魔法で動くのか?


「ここはキッチンと、ご飯食べるところ!シロがご飯作ってくれるよ!今日のお昼は作ってあるから後で食べてねって言ってた!」


そういえばシロさんはテオくんが勉強してる間に出かけてしまったようだ。


シロさん、ご飯作ってくれるなんてお母さんみたいだな。

テオくんの言った通り、机の上にお皿が乗っているのが見えた。


テオくんはそのまま奥の部屋に入る。

昨日はドアが開けっ放しになっていたにも関わらず中が暗くて見えなかったが、どうやらなにかのお店らしい。

工房や物置で見たような道具が綺麗に陳列されている。


「ここがシロのお店だよ。お店やってるのにシロあんまり開かないから、全然人は来ないよ。でも、定期的に買いに来る人がいるから、シロはそれで稼いでるみたい。」


まあまあ商品があるのにあまり開店しないらしい。

それで生活できてるならまあいいのかな?

商品に値段とか書いてないから価値があんまり分からないが…。


「僕ね、将来はシロのお店で働きたいんだ。でも、シロはお家に戻った方がいいって言うの。僕は嫌なのにね。シロがいなくなっちゃうの寂しいから、レイが来てくれて嬉しかったんだ。レイなら僕がお家に帰ることになっても連れて行けるから…。」


そう言うと、テオくんは少ししょんぼりしてしまった。


お家、というのはテオくんの実家のことだろうか。

私も帰った方がいいのでは、とは思うけど、悲しそうなテオくんを見ると、あまりいい家庭環境てなかったのかもしれない。

5歳で家出するくらいだ。

事情がないわけが無いか。


気落ちしてしまっているテオくんを見上げて、抱き上げられてる腕をポンポン、と撫でてみる。

テオくんと目が合うと、ちょっと笑ってくれた。


「ありがと、レイ。いつかちゃんとなんとかするから、その時はレイも着いてきて欲しいな。」


事情は分からないが、こくこく、と頷いておく。


テオくんは、気を取り直したように立ち上がった。


「よし!じゃあこれでお家の中は全部みたから、お外はティティが来てから行こうね!お店に居ないとティティがびっくりしちゃうから。」


そう言って、テオくんはお店のカウンターのところに座った。

私もテオくんの膝の上に座る。


テオくんはカウンターの上にあった小さいおもちゃをいじり始める。

昔マクド〇ルドで貰ったおもちゃにちょっと似てる。


子供って集中力凄いんだなぁ、と思っていると、お店の入口が空いた。


「あ、ティティだ!」

「おはよう、テオ。相変わらずこの店は埃臭いわね。不真面目な店主の顔が思い浮かぶようだわ。」

「ええー?お掃除はちゃんとしてるんだけどな…。」

「あはは、知ってるわよ。」


ティティさんは140cmくらいの、背の低いお姉さんだった。

黒いフリルの着いたワンピースがよく似合っている。

青い、ちょっと黒のグラデーションがかったストレートボブに、黄色い目をしている。

何より特徴的なのが、背中に生えた羽だ。

髪と同じ色で、随分と大きい。


ティティさんが部屋に入るのに合わせて、テオくんが私を抱えて近づいた。


「見て!ティティ!この子生まれたんだよ!レイって言うの!」

「あら、やっぱりドラゴンだったのね。でもこんな種類見たことないわ。角は特徴的だけど…。」

「シロもわかんないって言ってた。」

「そう、それじゃ私が知ってるわけないわね。」


近くで見るとティティさんは可愛い、というよりキレイな人だ。

この世界の顔面偏差値は地球より高そうだな…。


「でね、レイと外で遊びたいからティティを待ってたんだ!外出てもいい?」

「魔法使うつもりなのね。まあいいわ。ちょっと待ってなさい。荷物を置いてくるわ。」


そう言うと、ティティそんは羽をしまって家の奥へ進んで行った。

羽は出し入れ可能なのね。

さすが異世界、色んな人がいるんだなぁ…。


「じゃあ、先に外で待ってよっか!」


そう言って、私とテオくんはお店の外に出た。

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