なんで小説は全然売れなくなってるのか?
さて、少し前に書いた”出版における小説などの文字媒体は一般的な娯楽ではなく一部のマニアックな趣味人のものになっていくのでしょうね。”において、文庫と新書をあわせた小説全体としてみて、2019年の市場規模は1651億円で、2006年の3092億円、2011年の2879億円に比べ毎年6%という右肩下がりで激減しています。
じゃあなんで小説が売れないのかというと……昨今の傾向としてはシニア向けの生き方本や終活本、自己啓発書、実用的な内容のビジネス書や児童書は売れているので、金を出して役に立つであろう知識を買う分には問題がないようです。
逆にいえば金にならない、実生活で役に立たないものに金を出すという人が減ってるというわけですね。
作られた「嘘」には目を向けず、「役に立つこと」にしか金を出せないというのは、世知辛いですが、事実なのでしょう。
あとは文字媒体というのは楽しい以前にハードルが高いのですね。
私は幼稚園の頃から絵本や図鑑が大好きだったようですし中学校の時に新井素子さんの小説を勧められてから、読書が大好きな人間になりましたが、「本を読むと楽しいですよ、直接はできない体験をできたり、いけない場所に行けたり、できるんですよ」といっても「いや、いちいち本を読まなくても、ネットをやれば簡単にできるっしょ」といわれてしまう時代になってしまったということなのでしょうね。
でも漫画は売れてるじゃないかという声がありそうですが、そもそも漫画と小説は根本的に全く違うものです。
漫画を読むという表現はおそらく正しくなく、本来的には漫画は視るものだと思うのですね。
そして読むのは視るよりもはるかに大変なのです。
この原因の一つには日本の義務教育では、楽しくなくてもとにかく文章を読め、そして書き手の心情を察しろという国語教育があると思います。
同じことは歴史にも言えると思うのですが、小説は好きだけど歴史の人物や国を覚えるのはちょっとめんどくさいと思う人は、小説という文字媒体そのものが多くの人にとっては、そこに書かれている漢字や単語の意味とかを知るのはめんどくさいとなってることには気が付きにくいのかなという気はします。
その点漫画は絵を視れば大体はそれだけでわかりますからね。
また、小説を読むのは漫画に比べるとかなり時間がかかるというのもあると思います。
私が小説を一冊読むのにかかる時間は2時間くらい、漫画だと一冊30分くらいですね。
昔は同じ値段なら長い時間を楽しめた方がいいという感じでしたが現在はそうではないように思います。
これはゲームでの大作RPGがなくなっている理由でもあると思いますが、長い時間をとられるというのは今はむしろコスパが悪いのですね。
あとは単純にスマホとネット環境の普及でしょうね。
スマホ以前は文庫本は手軽に携帯できる、移動中の暇つぶしの手段としてかなり便利なものでありました。
また昔の小説はゲームや映画や遊園地とかに比べれば安い娯楽であったというメリットもあったのですよね。
むろん携帯ゲーム機とかはありましたがいい年をした大人が電車の中で携帯ゲームをやるというのは少々恥ずかしいと思われていたように思います。
モンスターハンターポータブルサードが発売された直後は電車の中でPSPをいじってる人が結構いましたけどね。
しかし、今どきはスマホのソシャゲをやっている人はかなり居ます。
それだけでなくスマホでアニメやドラマを見たり、漫画を読んだりも簡単にできるようになり、それだけでなく月額500円で見放題だったり最初は無料だったりというサービスが普通になってきています。
しかし、書籍は委託販売制度もあってそういうったことはできてません。
ならば小説が売れなくなっていくのは当然でしょう。
とはいえ映画や歌舞伎のファンが残っていたり、TRPG専門店が生き残っていたりするのと同様に、小説好きがいなくなるということもないかなとは思いますけどね。