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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

公の秘密

スクリート家の団欒

作者: 薫風


 ヴィンセント・スクリート・ディフォンの生い立ちは、よくあることだが少しだけ複雑だった。


 父は女好きで手当たり次第に自分の身分をかさに相手を蹂躙するような愚かな行為の末に手を出してはいけない女性に強引に関係を迫り、紳士としてあるまじき強引な行為と一目瞭然で分かる姿で発見された女性が放心から半狂乱になり、狂乱の中で男児を出産後自害した。


 ヴィンの母は王家に連なる家の令嬢であり、その醜聞の中で父は破滅し惨めな最期を迎えていた。残されたヴィンは母の実家から養子に出され、引き取り先に後継ぎとなる子供が居なかった為、大切に育てられたが自分の両親の醜聞は口裂がない大人達の噂から知っていた。


 そして、ヴィンが年頃になると母の実家から食事の誘いが届くようになる。母の実家には立派な跡継ぎもおり、醜聞を嫌って養子に出されたはずのヴィンには会いたくないと一切の接触もしなかったのに今更、何故?と思うが養父母も断り難い家でもありヴィンは年に数回の家族の団欒のと言う茶番に出席することになる。


 実の祖父母、叔父夫妻、従兄弟に当たる嫡男との食事会は毎回、都でも有名なレストランで行われた。その場に居る他の者達に見せつけるような仲睦まじさを披露する様にヴィンは毎回、内心で溜め息を吐く。


 従兄弟は自分より二つ程年上だが、年が近くヴィンは仲良くするようにと言われているが、興味は無かった。上辺を取り繕い、温厚に見える笑みを浮かべ、それに見合う振る舞いで周りを欺いて居ることにこの場の誰も気付かないのか、気付きながらそれを受け流しているのかは分からない。何せ祖父母、叔父夫妻は貴族として上辺を取り繕う事など当たり前の社交の中で生きているのだ。年若いまだ未熟なヴィンの取り繕いなど見破っていてもおかしくない。


 帰宅すると申し訳なさそうな顔で待つ養父母が出迎え、ヴィンはフッと力が抜けたようなホッとしたような笑みを心から向ける。


 ヴィンはこの養父母が好きだし、大切に思っている。養子として育ててくれた養父母もこの屋敷に使えている者も良くしてくれた。実の両親を知らないからこそ養父母の愛情を受け、その受け継ぐ者として後ろ指を指されるような振る舞いも養父母が悲しんだり、落胆させないようにと頑張り、育ててくれた恩を返したいと勉学に励み、剣に乗馬にと稽古も励んだ。


 そして、気付いた。目立ち過ぎてはいけないと…目立てば、目をつけられる。その警告のように届いた食事会の招待にヴィンは上辺を取り繕うことを覚えた。そして、今に至る。


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