第一話 記憶喪失の少年
僕の名前はアルス・クローバー、王都メルスクに住む13歳の少年だ。今日は幼なじみ?のキティ・カレンとトウゴ・トモタカと買い物に出かけていたんだ。
「で、あと買うものはいくつあるんだよカレン?」
「あとは〜さくらんぼと紅茶かな。」
「この後アルスの治療に付き合うことを忘れるなよ。」
「大丈夫、売ってる所はすぐ近くだから。」
そんな会話をアルスは聞いていた。
(いつも通りだなぁ)
「そんなに急がなくても大丈夫だよ、どうせ今日も思い出せないんだし」
「でもよ…」
アルスは一年ほど前に記憶を失っている上にスキルも持っておらず、ステータスも普通だが二人は優しく接してくれている、この二人はアルスにとって記憶のない不安をぬぐい去ってくれる存在だった。
(今の僕には自分に家族が居ないことと自分の名前くらいしか思い出せない。でもこの二人が居てくれるだけで幸せだ。)
この時までアルスはそう思っていた、その幸せが奪われることも知らずに……
「キャァァァァァァ!!」
その時突然カレンの悲鳴が響いた!
「「!?」」
二人が振り向くとそこにはガラの悪いチンピラ達がカレンを馬車に連れ込もうとしていた!
「カレン!」
そう言うとトウゴが飛び出して行った!トウゴはスキル「拳打」を持っているので戦う事が出来る、しかしアルスはスキルを持っていない、つまり見ていることしか出来ない。
「グッ!……」
トウゴも戦えるとは言え複数のチンピラ相手には敵わない、
(くそっどうにかして戦えないのか!?)
するとその時誰かが呪文を唱えた。
「ファイア」