味方
08: 味方
大神殿から紹介されて、ユヴェールが召抱えることになったのは、護衛を兼ねた側仕えと、メイドの二人だった。最初こそどう接したものか悩んだが、それも三日過ぎれば開き直ってしまい、気にしなくなった。なぜかと言えば、ガゼットの紹介云々を気にしている暇がなかったからである。
「ミシェーラ、なんだその布……」
「ああ殿下! 贈り物を改めて居りましたら見つけました。呪いのかかった布ですわ。遊び甲斐がある相手のようです」
「遊ぶな、頼むから」
きらきらと目を輝かせて怪しげな布を検分している長い髪のメイドは、双子の姉のほうでミシェーラという。メイドなのだが呪術師のスキルを有しており、初日早々ユヴェールが溜めてしまっていた郵便物を改め始め、呪い付きの物をいくつも見つけ出した。自分が呪いをかけられかけていたことにもぞっとしたが、にこにこと素手で呪物を鷲掴みにするミシェーラにもぞっとした。長年神殿で暮らしていたことで聖属性を取得しているらしく、呪いが効かないのだという。なぜそれを活かした職業にしなかったのか聞いたら、呪いが好きだからと言われた。
「姉さん、殿下の目にそういったものをお見せしないでください。呪い返しはまとめて夜中に、そのあとは私に引き渡しを」
「ミランダ、まとめてってなんだ」
「布はあれ以外に洋服一着をゆうに作れるほど届いています。他は装飾品がいくつか。良い品ばかりでもったいないことです。呪いを取った後に使うのは業腹ですし、売りでもしたら外聞が悪うございます。まとめて燃やします」
「そ、そうか。気をつけてな」
マッチをかさかさと鳴らしながら立っている短い髪のメイドは、双子の妹のほうでミランダという。こちらもメイドなのだが炎を操る炎術師のスキルを有しており、小さな火種から見事な大火を作り出す。聖属性を取得しているが炎術師にこだわったのは火が好きだからだそうだ。なお、メイドの仕事にも役立てられている。
そして、残りの一人だが。
「ミシェーラ、ミランダ、お茶の用意を。殿下、ちょうど良いですからご休憩をお取りください」
「ありがとう、ホレイショー」
優しく微笑む青年が、テーブルにユヴェールを招く。その青年や、お茶の用意を始めた双子の周りを、半透明の人影が行き来し始めた。いるなぁ、とユヴェールが目線を向けた先、青年、ホレイショーの肩のあたりには、後ろ向きに腰掛ける人影が見える。
「殿下?」
「ホレイショー、肩、重くないか?」
「いえ、特には…。まさか」
「乗ってる」
「殿下、すっかり慣れてしまいましたわね」
「本当にいるのが当たり前になりました」
「「だから方々も大人しいのでしょうけど」」
「も、申し訳ありません。いかんせん、私には見えないもので……」
護衛のホレイショーは、剣の腕も仕事も申し分ないのだが、結構な人数の死霊に憑かれている。素質がある人間の目には映ってしまうそうで、双子はもちろんユヴェールも、フードのついたローブで顔を隠した人影を見て過ごすようになっていた。ミシェーラ曰く、ホレイショーが関わった出来事の死霊であり、ホレイショー自身がその死を背負いこんだためこうなってしまっているという。普通なら色々不具合が起きているはずなのだが、ホレイショーには死霊使いの素質があり、半ば使役死霊と化しているため無害なのだとか。問題があるとすれば、ホレイショーは彼らが見えないため、一切干渉できないということだろう。
「湯が沸いたことや人が来たことを教えてくれますから、助かります」
「まあ、これで殿下が不気味がっていたら、ホレイショーは契約打ち切りの記録を更新していましたわね」
「……うう」
「あー、ほら、最近は一人にならないようついてきてくれるから助かってる」
「ありがとうございます。……いつか、お見送りができると良いのですが」
ガゼットをきっかけに得た縁だが、ユヴェールは三人と出会えたことにつあては感謝しても良いと思っていた。心強い味方が得られたことは、思っていた以上にほっとする。
(それにしても、何がどうなったらこれだけ人が亡くなる事に遭遇するんだろうか……?)