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ただの興味


 第一印象は、緩い空気。

 やる気のなさそうなやつだと思った。


 学園は完全な実力主義だ。そんな環境で生き残るには強い決意や意志が必要だと思っている。血と血で争うような場へ自ら赴くとなっては尚更、決して軽い気持ちでアースになろうとしてなれるものではない。


 でも、訓練で交えた剣を通して気付いた。

 彼の技量はその域に達している、と。


 普段の足捌き、身のこなしまでも洗練されている。

 魔物の攻撃も勿論のこと、対人でも問題なく立ち回れる技量に至っている。


 だからこそ、理解できない。

 いや、したくないだけなのかもしれない。


 彼は───強い、などと。


 同じ近接クラスを得意とするアレンも気付いている。悔しいけれど、その真実は覆らない。それは認めよう。


 しかし、それはそうとして力に見合った雰囲気がないのが気に入らない。確かに多少なりにも最初の印象とは変わったが、ヘラヘラとした頼りのない態度が腹立たしかった。


 私の前になると弱腰になり、顔色を伺ってどうすれば機嫌が良くなるのかとへつらう態度が気に入らなくて、一度、感情にしたがって手を出してしまった。


 こればかりは自分勝手だった。少し申し訳ないと思って彼の様子を伺ったけど、全く気にしてない風で顔を輝かせた。


「……絶招の領域がそんなに軽いわけがない」


 マルコシアスの時は呆けていたけど、体は自然に戦闘態勢に入っていたし、何気なく訓練で私とも剣を合わせられている。どんな動きを見せても難なく合わせて受けているのだ。


 幼い頃、兄から聞いたことがあった。

 狗天流の極致は、自然体であること、と。


 古い言葉では『常在戦場』という言葉が最もふさわしい。

 あらゆる状況下で即座に高い技量を発揮することこそが奥義。彼はその域へ達しているのだ。


「………」


 ───らしくない。アースとなるため、アースとして戦うために他人を顧みずひたすらに突き走ってきた。その過程で何人救えたか、誰を正せたのかなど興味がなかった。


 兄を助けるために、剣を磨いてきたんだから。


「こんなに他人が気になるなんて、今までなかったのに」


 彼に対してはどうにも胸がざわつく。

 これは心の揺らぎだ。信念が揺らいだのだ。


 いや、そんなはずはない。


「……違うわね。うん」


 単に戸惑っただけだ。しつこく自分に関わろうとしてくるからどうすればいいのか分からなくなっているだけだ。


 でも───あの言葉が頭にこびりついて離れない。


『強いつもりだよ』


 彼が隣部屋となった時に言われた。

 普段の様子から想像もできない澱みのない明言だった。


 根拠もなく、説得力を感じた。優しく伝えるような声色の裏にヒリつく炎の様な意志を奥に見た気がしたのだ。


「違う。私が揺らいだ訳ではじゃない。ただの興味よ」


 そう、少しだけ、興味を持っただけだ。


 そうだ。少しだけ気になっただけ。


 少しだけ───……


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