とある異界の結末
これは一つの終末。終局である。
ゴォン、ゴォン、と。晩鐘が響き渡る。
【───クハハハハ!是非も無し、是非も無しだ!】
極大の黒孔を背に、漆黒の魔神は少年を見下す。
魔神は、この結末さえも面白い、と嗤った。
【一つの因子によって千年の計画が失敗に終わる……これほど愉快な事があるまい。所詮、世の中は思い通りにはいかぬという事だな】
紫色に染まった空間がより不安定になる。
黒孔を中心に歪曲され、全てが呑み込まれていく。戦いの残骸も、生物も、闇へと消える。
そして、己が体にひび割れた亀裂から崩壊が始まろうとしていた。魔王は、名残惜しそうに傷に触れて、傷だらけの少年に問いた。
【しかし、全ては終わっていない。我が世界を滅ぼそうとも、貴様らの世界の侵食は止められん。唯一人となった貴様に何ができる?】
今にも崩れそうな地盤の上で対峙する少年は、決意変わらぬ瞳で魔神を見据えた。
「一人だろうと、何がなんでも止める。
─────約束の為にもな」
少年の答えに、魔神は小さく嗤った。
【……クク、良いだろう。これは征く者へせめての手向けだ。お前ならば───】
その言葉を最後に、ひとつ異界が消滅した。