──*──*──*── 廃墟近く
〈 魔法陣 〉が出現した場所は≪ 廃墟 ≫から徒歩で約30分程の離れた森の中だった。
マオ
「着くの早っ!
≪ 魔物の村 ≫に1番乗りだな!」
セロフィート
「此処からは歩いて行きましょう」
マオ
「うん。
森の中を歩いて行くのか?」
セロフィート
「何故です?
此のまま≪ 魔物の村 ≫へ向かって歩きます」
マオ
「えっ?!
森に隠れて行かないの??」
セロフィート
「はい?
何故隠れなければいけません?
堂堂と≪ 魔物の村 ≫へ入れば良いです」
マオ
「マジですか?!」
セロフィート
「マオとワタシは唯の〈 旅人 〉です。
〈 旅人 〉足るもの見付けた≪ 村 ≫へ立ち寄るのは御約束です」
マオ
「誰との約束だよ〜〜〜」
セロフィート
「何もされません。
安心してください」
マオ
「本当かよ……」
マオは疑心を胸に抱きながら、森を出て行くセロフィートの後を追った。
──*──*──*── 平地
マオ
「なぁ、セロ。
オレ達の格好ってさ、目立たないかな?」
セロフィート
「目立つでしょうね。
全身白ずくめですし」
マオ
「だ、だよな〜〜。
注目の的になっちゃうよな?」
セロフィート
「マオ、フードは被ったままにしてください。
〈 魔物 〉に顔を見せてはいけません。
分かりました?」
マオ
「ええっ??
何でだよ。
フードを被りっぱなしだと周りが良く見えないじゃんか!」
セロフィート
「〈 魔物 〉達を脅えさせない為です。
〈 魔物 〉は賢いです。
マオとワタシが人間でない事を本能で感じ取るでしょう。
正体を見せてしまえば、〈 魔物 〉達は失神してしまうかも知れません」
マオ
「そ…そうなのか??」
セロフィート
「〈 魔物 〉にとって、マオとワタシは畏怖の対象です。
敢えて顔を隠す事は〈 魔物 〉達への優しさです。
分かってくれます?」
マオ
「………………。
何か大袈裟な気もするけど……。
取り敢えず、フードは被ったままにしとくよ」
セロフィート
「お願いします」
マオ
「〈 魔物 〉と話は出来るかな?」
セロフィート
「出来ます。
マオは人間ではないですから、〈 亜人種 〉の言葉も理解出来ます。
フィンと会話が成立しているのが証拠です」
マオ
「言葉が通じるなら安心だよ。
仲良くなれるかな??」
セロフィート
「ならない方が良いです。
〈 時空の亀裂 〉が消えてしまえば、死に絶えてしまうのが〈 時空の亀裂 〉を渡って来た者達の運命さだめ。
深ふかく関かかわれば必かならず後こう悔かいします」
マオ
「そんな……。
何なんとかならないのかよ?」
セロフィート
「〈 時じ空くうの亀き裂れつ 〉を通とおり、≪ エルゼシア大たい陸りく ≫から去されば、死しに絶たえる事ことはないです」
マオ
「そうなんだ?
じゃあさ、元もとの世せ界かい故こ郷きょうへ帰かえれるんだな!」
セロフィート
「其それは難むずかしいです」
マオ
「難むずかしい??
何なんでだ?」
セロフィート
「〈 時じ空くうの亀き裂れつ 〉は神しん出しゅつ鬼き没ぼつです。
繋つながる世せ界かいは常つねに変へん化かします。
自じ分ぶん達たちの世せ界かい故こ郷きょうへ戻もどれる確かく率りくは低ひくいです」
マオ
「〈 時じ空くうの亀き裂れつ 〉を通とおっても自じ分ぶんの世せ界かい故こ郷きょうへ帰かえれないのかよ……。
其それってフィンもなのか?」
セロフィート
「フィンは≪ 妖よう精せい界かい ≫へ戻もどれます。
『 戻もどる気きはない 』と言いってましたし、戻もどれる事ことは知しっていたのでしょう」
マオ
「フィンって変かわってるんだな。
そんなに故こ郷きょう妖精界に帰かえるの嫌やなのかな?」
セロフィート
「フィンにはフィンにしか分わからない事じ情じょうがあるのでしょう。
フィンは特とく別べつな〈 妖よう精せい 〉です。
フィンが自みずから望のぞんで〈 神かみの遣つかい 〉へ頼たのめば≪ 妖よう精せい界かい ≫へは戻もどれます」
マオ
「そうなのか??」
セロフィート
「虹にじ属ぞく性せいの〈 妖よう精せい 〉ですし」
マオ
「そうなんだ……」
セロフィート
「マオ、≪ 魔ま物ものの村むら ≫が見みえて来きました」
マオ
「そうなんだ!
どんな≪ 村むら ≫だろう??
どのくらい発はっ展てんしてるのかな??」
セロフィート
「楽たのしみですね、マオ」
マオ
「≪ 都と市しゼヌカーナ ≫ってさ、『 幽ゆう霊れい都と市し 』って言いわれてたんだよな?
本ほん当とに幽ゆう霊れいゴーストが出でてたのか?」
セロフィート
「いいえ。
幽ゆう霊れいゴーストは実じっ体たいの無ない存そん在ざいです。
本ほん来らいは肉にく眼がんでは見みえない存そん在ざいです。
見みようと思おもって簡かん単たんに見みえる存そん在ざいものではないです」
マオ
「──でもさ、実じっ体たいの無ない幽ゆう霊れいゴーストを見みちゃう人ひとだって居いるんだろ?」
セロフィート
「居いますね。
其それは人にん間げんが好すき好このんで見みている訳わけではないです」
マオ
「そうなのか?」
セロフィート
「〈 久く遠おん実じつ成じょう 〉が見みせておられるだけです。
実じっ際さいに肉にく眼がんでは見みえない存そん在ざい幽ゆう霊れいを態わざ態わざ見みさせて迄まで〈 久く遠おん実じつ成じょう 〉は其その人じん物ぶつに用よう事じがあります。
教おしえたい事ことがあっても、残ざん念ねんながら人にん間げんは〈 久く遠おん実じつ成じょう 〉と意い志し意い思しの疎そ通つうが出で来きません」