1.宿泊室 2 ~ 帰宅 2 ~
日常的な光景で、本の角で頭を叩く──という行為を目にするが、此の本の角で頭を叩く等された暁には、間違いなく来世行き決定だ。
此の本の角で頭を叩かれて死なないのはギャグ漫画のキャラクターぐらいである。
叩かれた相手が死んでしまえば、叩いた相手は犯罪者の仲間入りは間違いなしだ。
そんな凶器にもなり兼ねない可能性を持つ重たい本は、静かに空中に浮いていた。
態態指で捲らなくても勝手に頁が捲れてくれる便利な〈 魔法 〉が能いているのだ。
マオはベッドから降りると、椅子に座り読書中のセロフィートの後ろに立った。
先程、心配して声を掛けてくれたセロフィートを無視する形になってしまった事を思い出したマオは、心が痛んだ。
マオ
「( セロ……怒ってるかな?
…………でも、指輪は外してないみたいだし…。
謝まろう……)」
マオは『 セロフィートは怒っているかも知れない 』と思いながら、ビクビクしている自分を心の中で叱咤する。
後ろ姿のセロフィートに抱き付いて謝るか、何もしないで謝るか──、マオは悩んだ。
マオ
「………………セ…セロ……あの…、さっきは……御免……。
…………オレ…、セロの気持ちも考えないで……無理に…付き合わせたりして……。
オレって…何時もそうだよな……」
普段の生意気なマオからは考えられない程の弱弱しい声が背後から聞こえる。
セロフィートはマオのした事に対して、怒ってはいなかった。
2100歳も歳が離れている相手のする事や言動に対して、腹を立てたり,頭に来たり等、目くじらを立てたりはしない。
セロフィートがマオの我儘に敢えて付き合うのは、自分の目が届かない場所で、大事な玩具が傷物にならない様にする為だ。
玩具を傷付けても良いのは、≪ 地球 ≫上に唯1人、持ち主のセロフィートだけなのだ。
お気に入りの玩具に害虫が付かない様に自ら監視する為──、というのもある。
セロフィート
「──マオ、君は謝ってばかりですね」
マオ
「え……」
セロフィート
「ワタシはマオの誘いに無理に付き合ったりしません」
マオ
「セロ……」
セロフィート
「大事なマオの身に何か起きても嫌ですし、少しでもマオと行動を共にしたいと思ってます。
ワタシは好きでマオの誘いに付き合ってますし…。
謝らないでください」
マオ
「セロぉ〜〜〜」
セロフィート
「マオの泣き虫さん。
可愛い弟のする事に怒ったりしません」
そう言ってくれるセロフィートなのだが、椅子に座ったまま読書をしている為、説得力を感じない。
マオは両腕を伸ばすと、後ろからセロフィートに抱き付──こうとしたが止めた。
両腕を下げると、セロフィートの左側に立ち、どんな本を読んでいるのか覗いてみた。
本に書かれている文字はエルゼシア文字ではない為、どういう文章が書かれているのかマオには、さっぱり分からなかった。
マオ
「セロ、此って何処の文字なんだ?」
セロフィート
「≪ エルサッサバル大陸 ≫の文字です。
マオ、ワタシの膝の上に座ってください」
マオ
「えっ?!
セロの膝の上……」
セロフィート
「ワタシの膝の上は嫌です?」
マオ
「──い、嫌じゃないです!(////)
でも、いいのか?
重く……痛くないのか??」
セロフィート
「マオ、ワタシは人形ですよ。
重さも痛さも感じません。
──さ、椅子だと思って座ってください」
マオ
「…………う、うん(////)」
セロフィートの言葉に甘える事にしたマオは、ぎこちなく動きながらセロフィートの膝の上に座ってみた。
セロフィートの胸を背中に感じる。
固いと思っていたセロフィートの膝は意外にも柔らかくて座り易い。
まるでクッションの上に座っている様な感触がして不思議な感じだと思う。
セロフィートは両手をマオの脇腹の横を通して回し、マオのお腹辺りで指を組んだ。
マオが落ちてしまわない様にだろうか。
セロフィート
「マオ、ワタシの膝の座り心地はどうです?」
マオ
「う、うん…。
悪くないよ(////)
吃驚するくらい座り心地良いよ(////)
セロは大丈夫なのか?」
セロフィート
「大丈夫です。
こうしているとマオとワタシ、親子みたいです」
マオ
「親子は止めてくれよ…。
兄弟の方がいいよ!」
セロフィート
「はいはい」
マオ
「なぁ、セロ。
此、何が書かれてるんだ?」
セロフィート
「≪ エルサッサバル大陸 ≫で語り継がれている『 〈 七人の奇蹟の聖女 〉の物語 』の全てが此の1冊に記されてます」
マオ
「〈 七人の奇蹟の聖女 〉の物語??
前、教えてくれた〈 聖女様 〉の話か?」




