¶ 1.宿泊室 2 ~ 気になる村 2 ~
セロフィート
「人間より強い生き物が、弱い人間を餌と認識し、生き残る為に命を奪う行為を邪魔してはいけません。
責める権利も、抗う権利も人間にはないです。
解ります?
人間が普段から何気無く、当たり前にしている行為と全く同じ事を人間がされるだけの事です。
何もせず見守る事も〈 偵察者 〉としての役目です。
良いです?」
マオ
「………………。
セロの言ってる事が分からない訳じゃないけど……」
セロフィート
「守れないなら行きません」
マオ
「わ…分かったよ!
何時もセロがしてるみたいに傍観してればいいんだろ!」
セロフィート
「そうです。
マオも分かって来ましたね」
マオ
「分かりたくないけどな!!」
顔をムスッとさせたマオは、拗ねた様な声で応えた。
セロフィートは読んでいた分厚い本の頁に栞を挟むと本を閉じる。
分厚い本はセロフィートの掌の上に現れた〈 魔法陣 〉の中へ入ると消えた。
セロフィート
「──では行きましょう」
マオ
「は?
行く……って??」
セロフィート
「≪ 魔物の村 ≫に決まってます」
マオ
「え?!
い、今から?!」
セロフィート
「行きたいのでしょう?」
マオ
「いや……う、うん…。
行きたいんだけど……。
あまりにも急だから……」
セロフィート
「『 散歩がてら 』と言いました。
マオ、コートを忘れないでください」
マオ
「わ、分かったよ」
意外と行く気の満満なセロフィートに言われたマオは、素直にコートを羽織る事にした。
マオはコートを掛けているハンガーに手を伸ばした。
ハンガーから外したコートを羽織る。
ハンガーは壁のフックに掛けた。
マオ
「セロ!
ちゃんとコート羽織ったぞ!
ちゃんと武器も装備してるし!」
セロフィート
「宜しい。
マオ、携帯食は持ちました?」
マオ
「携帯食〜〜??
あっ、セロがくれた瓶に入ってる飴玉の事か?」
セロフィート
「そうです。
忘れてません?」
マオ
「勿論だよ!
セロがくれたオレの大事な命綱だからな!
ちゃんと肌身離さず持ってるよ!」
マオはセロフィートがくれた携帯食の入っている瓶をセロフィートに見せた。
250ml程の瓶の中に入っているのは何れもカラフルな色をした飴玉だ。
食べてしまうのが勿体無いと思う程に美しい飴玉は、甘さ控え目だが、とても美味だ。
瓶の中には飴玉がギッシリと入っているのに重さは無いに等しい。
見た目は瓶だが、素材は硝子ではなかった。
特殊な素材で出来ている瓶は、高い位置から落としてもヒビが入らない程に丈夫で割れたりもしない。
何れだけ重い物を上から落として割ろうとしても無傷である。
特殊なのは伊達ではない。
瓶の底には〈 魔法陣 〉が描かれており、飴玉が半分の量迄減ると飴玉が増える様になっている。
飴玉が無くなり、瓶の中が空っぽになる事もない。
セロフィートに瓶を見せ終えたマオは、専用のホルダーの中に瓶を入れた。
瓶ホルダーはベルトと一体化しており、瓶を無くし難くい仕様になっている。
マオ
「セロがくれた此の飴玉があれば、何時でも何処でも〈 原質の源 〉を補充出来るから便利だよ。
すっげぇ助かってるよ」
セロフィート
「喜んでもらえてワタシも嬉しいです」
マオ
「セロ、フィンとニュイリはどうするんだ?
声掛けるのか?」
セロフィート
「折角ですし、2人で行きましょう。
4人では目立ちますし」
マオ
「あ〜〜〜……。
1番目立つセロが、其言っちゃうんだな〜〜」
セロフィート
「何です?」
マオ
「何でもないです……。
じゃあ、セロとオレだけで行くんだな。
…………何かさ、2人で出掛けるの久し振りだよな(////)
ええと……≪ 街 ≫以来かな?」
セロフィート
「ふふふ。
懐かしいですね。
マオの武器を買う為に出掛けましたね」
マオ
「うん!
あれから4年も経つんだよな〜〜」
セロフィート
「未だ4年です」
マオ
「セロにとっては『 未だ 』だろうけど……。
≪ 街 ≫が解凍する日は遠いなぁ……」
セロフィート
「意外と近い未来ですよ。
直ぐ300年経ちます」
マオ
「………………。
其はセロだからだろ〜〜〜」
セロフィート
「そんな事ないです。
時が過ぎるのは意外と早いものです。
マオも慣れます」
マオ
「慣れたくないよ〜〜〜」
何時の間にかコートを羽織り、左手にお馴染みの杖を持ったセロフィートは〈 古代魔法 〉を発動させた。
床の上に〈 魔法陣 〉が出現する。
お馴染みの〈 転移魔法陣 〉である。
セロフィート
「マオ、中に入ってください」
マオ
「うん。
…………って、言うか!
セロ!
≪ 魔物の村 ≫が何処にあるのか知ってるのかよ?!
オレは知らないよ……」