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運命改革物語  作者: ケブカ
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第五話 時を越えて

僕はただ闇雲に走り続けていた。

 病院を出て、坂を下り見慣れない町を駆け抜けていく。

 もちろん行く当てなどなかった。

 僕にはこの世界で居場所なんてないのだ。

 誰一人、受けて入れてはくれない。

 町の人、学校の先生、生徒、祖父母、尊敬していた忠さんでさえ。

 そして、一番の理解者であった家族たちはもうここにはいない。

 何故ここに僕は存在している?

 僕の存在には何の意義があるのか?

 できるだけ遠くへいこう・・・。

 遠く・・・遠く・・・誰も存在しないところへ。


全速力で走り続けていると、僕の体内から聞こえる鼓動も次第に大きくそして早く波打ち始めた。

 息切れがしてきて、胸が苦しくなるのを感じた。

 けれど、このまま心臓が張り裂けて倒れても構わないとさえ思えてきた。

 僕が死んでも誰も悲しまない。 むしろ喜ぶ人がいるのではないか。

 ならばこのまま息絶えるまで走り続けてやろう・・・。

 僕は、生きたい、楽になりたいという本能的な体の欲求に鞭を打ち自ら死に向かって走り続けていた。

しかし、途中で僕の足に「ガッ」と何か固くてやや大き目な物質が引っ掛かった。

 それと同時に僕の視界は反転し、気が付けば空を仰いでいた。

 何が起きたのか一瞬理解ができなかったが、右腕からひじにかけて徐々に染み出てきた痛みで転倒してしまったことを認識した。

 右腕を見ると、擦りむいた傷口は出血と砂や石がまじりあって赤黒くなっていた。

 傷口は凍てつくような外気に晒されて、ガラスの破片が突き刺されたような痛みにさえ思えた。

 僕は思わず、左手を傷口に押し付けた。

 仰向けになったまま、痛みが引くのを待っているが収まるどころか痛みが増してきているような気がした。

 あたりを見渡すと視界の左手の下あたりに河川が見えた。

 どうやらここは河川の堤防敷のようだ。

 僕は右腕を抑えつつも、両足で最大限の力を振り絞って立ち上がった。

 体勢を戻すことができたので、右腕以外は軽症ということを理解した。

 僕は振り返り、転倒した元凶である物質をさがした。

すると堤防敷の道の真ん中に手のひらいっぱいぐらいの大きさの石が置かれていた。

 その石には人間の顔のようなものが落書きがされており、控えめな笑顔でこちらを見つめている。

 その笑顔は僕にとってとても不快に思えた。

 なぜなら、その石の顔がこのような状況の僕を嘲笑しているようにも見えたからだ。

 僕は腹立たし気に左手でその石を鷲掴みした。

 そして砕け散ってしまえと力いっぱい遠くへ投げようした。

しかし、冷たい風が急に舞い込み、僕の右腕の傷を切り刻むように通り抜けていった。

 「くっ・・・!!」

 僕はとっさにのけぞってしまった。

 ジンジンと痛みが右腕から伝わってくる。

 痛みに耐えきれず、僕は近くにあった河川敷と堤防敷をつなぐ階段に腰を下ろした。


一心不乱に駆け抜けてきたため気が付かなかったが、雪が降り始めていていた。

 小さなフワフワした白い粒が草むらや地面に降り積もっていく。

 いつもならこのような景色は綺麗で美しいはずだ、

 しかし、今の僕には儚げで悲しい風景のように感じた。

この前の忠さんは、人のためになることは自分の幸せとも言っていた。

 だから、僕は命を助けてくれた忠さんを心から感謝し、何か手助けになることがあれば進んでやりたいと思っていた。

 けれど、さっきの忠さんはやっぱり自分も助かりたい。 それが誰かを犠牲にして自分が助かるとしてもとも言っていた。

 人のために我が身を尽くす、奉仕精神といえど結局は利己主義が優先される。

 それは忠さんだけが特別持っている思考ではない。

 あらゆる地球上の人間。 そして僕もその考えを持つ集合体の一部だ。

 僕も忠さんの完全なる復帰を心から願ってはいた。

 ここまで優しい心の命の恩人は助かるべきであると。

 しかし、その裏側には僕が巻き込まれた事件のせいで忠さんに不運を背負わせてしまった事実を消したいという気持ちもあった。

 お見舞いというのは、僕が自身がその事実を帳消しにする罪滅ぼしでしかないのだ。

 結局は、忠さんの完全なる復帰が本目的ではなく、僕がそのことで罪悪感を味わたくない、そこから逃れたいというのが最終的な望みだった。

 客観的に自分を見て、自分自身が悪魔のように卑劣な人間に思えてきた。

 こんな悪魔なんぞこの世から消すべきなんだ!

 僕は左手に握りしめている石を自分の頭へ力いっぱいぶつけようと思った。

ゴンという音が脳内に響き渡ったが、たんこぶができる程度の小さな衝撃だった。

 自分の中に潜む防衛本能が自動的に働いてしまったのだろう。

 これは悪魔の仕業だ!

 こいつが僕をかばっている。

 僕を消さなければ悪魔も消えない。

 次こそは殺してやる。 

 この世の混沌の元凶を断ってやる!!

僕は、左手で石を握りしめた。

 握りしめた手は小刻み震えている。

 この震えは恐怖によるものか、興奮しているかどちらかはわからない。

 体内の交感神経が高ぶっているのがわかる。

僕は石を握りしめて手を精いっぱい体から離し、そして僕の頭を石で壺をたたき割るイメージで描き、思い切り振りぶった。

 まさにその瞬間だった。


急に僕の手首当たりに誰かの手が伸びてきて僕の手首をガシッと捉えた。

 見上げると髪はつやがなく白髪交じりで、顔は浅黒く、無精ひげが生えている男が立っていた。

ところどころ穴の開いたボロボロの黒いダウンジャケットにいかにも寒そうな灰色のスウェットパンツを身に着けている。

 いかにもホームレスといった風貌の人物だった。

 年齢は60代といったところだろうか。

 やや堀の深い眼窩から眼球が心配そうに僕を見つめていた。

 その瞳は見た目から想像できないほど、生気に満ち溢れ光り輝いているように見えた。

「さっきから遠目でこんな雪の中、傘もささず何してるねんってみとったんや! そしたら急に石を頭にぶつけだすんやからな。 びっくりするわ! 一体何をしてるんや??」

 僕は、唐突な質問に返答することができなかった。

 自ら命を絶とうと思っていたなど言えるはずがない。

「兄ちゃんなんか嫌なことでもあったんか? 右手ケガしてるやないか! 喧嘩でもしたか?」

 依然として僕は答えない。

 その男性はしばらく返答を待っていたが、僕が黙ったままというのを悟ったのか「はぁ」と少しため息をついた。

「何があったかわからんけども、兄ちゃんまだまだ若いやろ? 学生やんな? その歳でそういった変なことは考えないことやな! 人生辛いこともあれば、絶対いい時だって訪れるようになってるねん! 今は辛い、俺だけなんでこんな不幸やねん。 神様もへったくれもないやんけって思うかもしれん。 けど、それを耐えたら生きててほんまによかったわって思える時が来る!」

 男性は僕の肩にポンと手を置いた。

 ぼくは俯いていたが、思わずその男性を見上げた。

 無精ひげが目立つが、自信ありげの顔が印象的だった。 

「俺を見てみ。 こんな汚い顔と服装。 俺もほんまはこんなしたくないし、風呂にも入りたいわな。 ある時、会社も辞めさせられて、借金背負わされ、家も売り飛ばされこんな感じや! 生きてんのがつらいって思う時もあったよ。 けど、俺は本心では死にたくないし汚い生き方でもええから生き抜いてみたろって思っていままでこれてるねん。 汚いなりに仲間もできたしな。 こういう生活もわるくないねん。」

 その男性は地面に置いていた笑顔の落書きがされた石を拾い上げた。

 それ持ったまま話し続ける。

「何があったかは話したくないんやったら話さんでええ。 けど、悪いことは考えやんことや! まだまだ若いのにしたいこともできずに終わるんとか嫌やろ? 楽しいとか幸せとか不幸とか悲しいは自分の足で選びに行くもんやねん! からわざわざ悲しいほうへ歩いて行かんでもええねん! 幸せになれるようもがきながら歩け! そしたら遠くても絶対にそこへたどり着けるから!」

 気が付けば、僕はその男性の話をじっくり聞いてしまっていた。

 男性の言うことは正論だ。

 この人は僕よりも何倍もこの世に生きているに違いない。

 だからこそ説得力があった。

「雪降ってんのにそのかっこは風邪引くぞ! これ着とけ! 雪よけとしても使えるやろ」

 その男性は着ていたボロボロのダウンジャケットを脱ぎ、それを肩から僕にそっとかけてくれた。

 今更になって気が付いたが、僕はコートを身に着けていなかったようだ。

 あの病院に入ったとき、暖房が効いていてすこし暑く感じたので脱いだのだった。

 そして、病室の廊下であのお見舞い品とともに投げ捨ててきていたのだ。

「・・・ありがとうございます。」

 聞こえるか聞こえないかくらいの音量で僕はそうつぶやいたが、その男性の耳にはしっかり届いていた。

「全然ええねん! ちょっと臭いかもしれんけど我慢してな! 別それは捨ててもええから! おっちゃんはもう行くぞ? 雪強くなってきそうやし、気を付けて帰るんやぞ!」

 その男性は再度、僕の肩をポンと叩いた。

 そして、河川敷に降りていき、橋下のほうへ向かっていった。

 確かに、このダウンジャケットはボロボロだし、少し生臭いような気がする。

 けれど、優しい温かみが僕を包んでくれた。

 そこにはあの男性の心の温かさも含まれていた。

 間違った選択をしようとしてしまったが、あの男性は生きろと言ってくれた。

 死んでしまったらそれで終わり、不幸なら不幸のまま死んでいく。

 なら、不幸を変えるために必死にもがき、生きたいとおもってもいいのか。

僕は、すぐさま立ち上がり決して振り向かない男性の背中に感謝の一礼をした。

 そして、ヒリヒリと痛む右腕を庇いながら帰路へ向かった。


しばらく歩くと、高速道路が見えてきた。

 じっくり見てみると立派な柱がそびえ立っていてこれが何百キロもありそうな車や何トンもあるトラックが上を通過しても支えてくれてるのだと思うと感心した。

 この高速道路を利用すれば、遠いところでも短時間で移動することができる。

 ある意味画期的な大発明だ。

 しかし、便利である反面取返しもつかない大事故を引き起こす引き金にもなる。

 その一例が僕たちの家族だ。

 この高速道路を使っていなければ、今頃幸せな生活を送れていたと考えると憎しみの念が湧いてきた。

 12月27日・・・あの時に高速道路さえなければ・・・ここを通ってさえしなければこんなことには・・・。

 僕は高架下にたどり着き、その怒りを地面に落ちていた空き缶に蹴り飛ばすことでそれを鎮めようとした。

 憎しみや悲しみを全部力いっぱい詰めて、空き缶を蹴り上げた。

 蹴り飛ばされた空き缶は当たり所がよかったのか、地面から空中へ持ち上がり高架下のフェンスまで飛んで行く。

 フェンスには少し穴が開いてるところがあり、勢いの止まらない空き缶は見事にそこを潜り抜けて高架下へ消えていった。

それと同時に金属音と機械音が混じったような今まで聞いたことのない音が高架下から聞こえてきた。

 空き缶が地面にたたきつけられたような音ではまるでなかった。

 僕は奇妙に感じ、フェンスの穴から高架下を覗き込んだ。

 あたり一面には空き缶や、ごみ袋、ファーストフード店の紙袋などが散乱しており高架下内の清掃はきちんとされていないようだ。

 その散らばったゴミくずの中に光が差し込んでいるところがあった。

 太陽の光や外灯の光ではない。

 その光は地面から上空のほうへと渦を巻くようにして立ち込めていた。

一体なんだあれは??

 僕はそれが気になって仕方なかった。

 フェンスの穴は人が潜れるほど大きくはない。

 その光の正体を確かめるには、このフェンスをよじ登るほかに方法はない。

 僕は、あたり人の気配がないことを確認し、フェンスをよじ登った。

 そして、フェンス上から高架下内の地面へ飛び降りた。

 着地の際にごみ袋を踏みつけてしまい、思わず転倒しかけたがフェンスを掴み体制を取り戻した。

 足場を一つ一つ確かめつつ、光源のほうへ向かっていく。

 何か得体のしれない物体かもしれないという恐怖もあったが、この時はそれを何であるか確かめたいという好奇心のが優っていた。

 ごみをかき分け、ようやく光源の元へたどり着いた。

光源は想像していたよりも遥かに眩しく、発見してすぐにそれが何であるか認識することは難しかった。

 だんだん光に目が適応してきてその形を認識できるようなってきた。

 それはiPadのような電子機器の形にそっくりだった。

 その液晶画面から光が漏れ出し、その光がらせん状に渦巻き上へ上と立ち上っている。

 光をよく目を凝らしみてみると、文字のようなものが移っているのが確認できた。

 それはまるで3Dマッピングのように美しく、綺麗なイルミネーションを見ているようだった。

しかし、こんなに小さな電子機器がここまでの光を生み出すことができるのか?

 これの正体はいったい何なのだ??

 僕は恐る恐るその電子機器の本体に手を伸ばし、液晶画面に少し触れてみた。

 ブォーンッ! と鈍い機械音がした。

 まるで、SF映画にある光の剣を取り出した時ような音だった。

 渦巻いていた光の文字が一斉に集合し、それらは僕のちょうど視界の前で角に丸みを帯びた四角形に姿を変えた。

 その四角形は透明性のある水色で空中に浮かび上がっていた。

 そしてその枠内に、まるでPCのキーボードで入力したみたいに文字が表れ始めた。


TTP system is running...


welcome!!

We will provide you a comfortable travel service.


Automatic input mode...


Please imaging.


何だこれは!?

 空中に英語が羅列されている。

 僕は英語があまり得意ではない。

 受験の時は英語が恐怖でどうしようと思っているほどだった。

 welcomeしか解読できない・・・。

 どうしたらいい??

 そうパニックになりあたふたしていると、浮かび上がっていた文字はスゥーと水色の背景に溶け込んでいき消えていった。

 そして、次には新しい文字列が入力され始めていた。


Analysis...


Language: Japanese


Converting...


日付:2018年12月27日 

時刻:14時23分

場所:三重県 ※※※※(タイムハッキング防止のため暗号化しています)

目的:不明

料金:TTP年間パス適応のため無料


※旅行先でのトラブルにつきましては一切責任を負いかねます。

 また、歴史の改変、人口動態に影響する行為を行った際は時間軸取締法により処罰されます。




それでは、楽しいひと時を! いってらっしゃいませ。


その最後の文字が表示されるとIpadのような電子機器はくるくる回転を始め、空中へ飛びあがり物凄い光を発した。

 眩しくて、全てが真っ白に感じるほどの強い光だった。

 そして、不意に前からとてつもなく強い力で押されたような感覚になった。

 僕の体は高速で突っ込んできたトラックに撥ねられたかのように、後方に吹き飛んだ。

 空中に浮かび後頭部が下の位置になったが、決して地面に衝突することはなかった。

 体が無重力空間で浮かんでいるかのように空中を漂っているのだ。

 視野が物体を確認できるようになると、光の集合体が連続して僕の両隣をこれまで見たことのないようなスピードで走り去っていくのが確認できた。

 いや、それは光が僕を追い越して過ぎ去って行っているのか、突き飛ばされた僕が止まっている光に対してすごいスピードで過ぎ去って行っているどちらかが全く理解できなかった。

 景色は計り知れないスピードで進んでいっているが、体自身に負担はなくむしろフワフワとゆっくり浮かんでいるような体感をしているからだ。

 一体どこまで飛んでいくのだろうか?

 このスピードでもし、着地するところがあれば衝撃ははかりしれないだろう。

 静止しようとすると、僕の体にそのエネルギーがすべてのしかかり瞬時に僕の体は粉々になりそうだ。

 そういろいろと思考を重ねている時だった。

 誰かに首根っこを掴まれたような感じがして、それと同時に頭部をどこかへぶつけた。

 かなりのスピードを乗せたまま、頭部をぶつけたように感じたが不思議と痛みはない。

 しかし、意識は徐々に暗く、遠のいていった。

このまま死ぬのか?

 さっきまで高速で移動しているように見えた光の物体はピタリとも動かず、その実体を認識できるようになった。

 光の物体は数式やみたこともない単語が文字が羅列されているものだった。

 僕は薄れゆく意識の中で、2018 12 27という数字を確認した。

 それを確認した後、僕は深く眠りにつくように意識が無になった。







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