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運命改革物語  作者: ケブカ
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第一話 悪夢の始まり

それは、12月末に起きた出来事だった。

 僕は、家族と一緒に伊勢に旅行へ行くことになった。

 けれど、旅行は心の底では全然楽しみではなく、むしろ面倒な気分だ。

 なぜなら、もうすぐ高校受験という中学校3年生の中では人生をかけなくてはいけないといっても過言ではない大イベントが迫ってきていて、旅行にあてる時間を勉強に費やしたいからだ。

 この旅行は、「いつもがんばっているから、たまには息抜きしないとね」と普段切羽詰まっている僕に対して、気を使って母が計画してくれたのだという。

 いつもは勉強しろしろと口うるさく言ってくる厳しい父親もこの旅行の計画には賛同だった。


「わぁ! 雪が積もるんだって! わーいわーい! 雪だるま作りたい!!」

 車内に明るく無邪気なハイトーンが響き渡る。

 妹の有紗が、車内をまるで飛び跳ねるかのようにはしゃいでいる。

 いいよな~小学生は・・・。 自分も雪が積もるだけで幸せな気分なれた小学生に戻りたいと僕は横目で有紗を見た。

 「近畿圏、今日の夜から明日にかけて大雪みたいね。 車はチェーン装備してないから用心していかないと。」

 母は不安そうな表情を浮かべつぶやいた。 

 今週は非常に強い寒波が入ってくるせいで、雪が比較的少ない近畿圏でも大雪になると車のラジオから天気予報が流れている。

 「この車は性能がいいから、多少の雪でも難なく走れるだろう。 安心しろ。」

 父は運転しながら自慢げな表情を浮かべた。

 そして、ここぞとばかりに自分の車の詳細なことを話し続けた。

 誰一人として真剣に話は聞いていない様子。


僕は少しの間、社内の窓から見えるハイウェイ沿いの景色を眺めていたが、はっと我に返りカバンから持 参してきた英語の参考書を取り出して読み始め、隙間時間を有効に使おうと決めた。

 う~ん確か入試は英作文も出るんだっけ? この旅行に行くっていうの英語に直したらなんだっけ?

 I will go to trip??

 なんか違う気がするなぁ・・・。

 「兄ちゃん勉強してるの? ありさにもおしえてよ~」

 有紗が僕の参考書に手を伸ばしてページを勝手にめくろうとした。

 僕はとっさに本を持っている手を有紗の届く範囲外のところまで持っていき、

 「邪魔すんなよ! 兄ちゃんは忙しいんだよ!!」

 とただでさえ時間がなくてイライラしていたので、そう吐き捨ててしまった。

 有紗はさっきの明るくはじけそうな笑顔とは一転してムッとした表情をみせ、「フン!いじわる!」とそっぽを向いた。

 その一連の流れを聞き耳立てていたのか父が1秒足らず一瞬振り返り、

 「勇夢! 旅行に来てるんだから今日はリフレッシュの日だぞ! 切り替えが大事だ! お前は普段から だらだらと勉強して効率悪いことしてるから試験が迫ってきて焦ることになるんだ。 旅行中は勉強のこ とは一切考えず、旅行が終われば、切り替えてしっかり勉強する! これが勉強ができる人の考え方だ! わかるか?」

 この時期に旅行に連れていく両親もどうかと心中で思いながらも、父親がいう間違いない事実が胸に刺さる。

 こつこつと勉強できるタイプではなくて、試験の事前にならないと勉強する気が起きない。

 明日やろう・・・明日野郎・・・って先延ばしにしてきた結果が現状だ。

 僕は、乱雑に参考書をカバンに戻し、有紗と同様にムッと不貞腐れて再び窓の景色に視線をそらした。

 「あなた! 言い過ぎよ! 勇夢もがんばってるのよ! 旅行終わったら勉強モードに切り替えようね! ね?」

 と母がまだ説教を続けようとする父をなだめつつ、苦笑いしてこちらを見た。

 「今日子! お前がそんなに甘いから勇夢も怠け者になったんだ! 俺が仕事に行ってる間にちゃんと教育しなかったお前にも責任があるぞ!」

 今度は母に矛先が向いたようだ。

 おいおい・・・。 出始めからリフレッシュするはずの旅行が説教をひたすら聞く旅行になってるぞ。


少しばかり、空気が悪くなった車内。 それでも一定のスピードで僕たちを旅先へ運んでいく。

 窓の外を眺めていると、厚くて灰色雲が上空に立ち込めてきていた。

 それと同時に白いフワフワしたものが下りてきて、車のフロントガラスに降り注いだ。

 「有紗! 雪よ!! 白くて奇麗だわ。」

 母は少女時代にタイムスリップしたかのように、喜んだ表情を見せた。

 「あら。 有紗寝っちゃたのかな。 朝早かったもんね。」

 ふと見ると有紗は首をシートにもたれかけるようにしてすやすやと寝息を立てていた。

 あれだけ雪・雪ってはしゃいでいたのに、もう寝てるのかよ。

 なんにも考えずに自由気ままにできる有紗を見て、僕は余計にうらやましく思った。 

 その白い粒は次第に勢いを増し、あたりの景色を銀色に変化させていった。

 「大雪になってきたね。 道は大丈夫かしら?」

 少女から大人に戻った母が不安げに呟き、父に尋ねた。

 父は一切表情を変えないまま、車道は凍ってないから大丈夫と暗く一言発しただけだった。

 まだ怒ってるのか?

 

高速を走り始めて2時間弱経った頃、有紗が「おしっこ」と言いながら目を覚ました。

 自宅から出発するときに買ってもらっていたリンゴジュースをがぶがぶ飲んだせいで、用を足したくなったようだ。

 「あと5分くらいしたらパーキングエリアがある。 有紗まだ我慢できるか?」

 と父が重かった口をようやく開いた。

 う~んと足をもじもじさせてうつむいている。

 母がもう少しよ!と有紗をなだめている間にパーキングエリアの入り口が見えた。

 パーキングエリア入口と高速道路を隔てるセンターラインには雪がたくさん積もっており、若干パーキングエリア入口付近に侵入している。

 急激な積雪のために除雪も間に合っていないようだ。

 父はその雪に車輪を踏み込むの避けるように慎重かつスピーディーに入口に入った。

 パーキングエリアの駐車場は隙間のないくらい詰め詰めだった。

 空いているところといえば、パーキング入口付近の2か所のみ。

 なるほど。 店やトイレからできるだけ近い所に駐車していった結果、一番遠そうなここだけ空車なのか。 それでもトラックなどを停める駐車所よりは店やトイレまでの距離は近そうだ。

 「今日は祝日、あいにく大雪による悪天候のせいでパーキングエリアがかなり混みあっているようだ。」

 父は仕方なく入口付近の駐車場に車を停め、「俺もコーヒーを買いに行く」と言って車の扉を開けた。

 母も車から降り、後部座席の有紗がいるほうの扉をあけて有紗の手を取って車から降りるの手伝っていた。

 「勇夢もいかなくていいの?」

 と母は訪ねてきたが、少しばかり眠気が襲ってきたのもあって「僕はいいよ」と遠慮しておいた。

 あらそうと言って母はゆっくり扉を閉めた。

 母と有紗が手をつなぎながら父の後を追っていくのチラッと確認した後、僕はちょっとまどろんでしまった。


ガタン!

 車の後部座席の窓が開いた。

 僕は、その扉の物音とともに一瞬甘い香りが漂ってきたせいで目を覚ました。

 どうやらパーキングエリアの出店で有紗がたい焼きを買ってもらったようだ。

 上機嫌に笑みをこぼしながらたい焼きを頬張っていた。

 「勇夢の分もたい焼き買ってきたわよ。食べる?」

 と母は助手席に乗りこみながら言った。

 若干小腹が空いていてうれしかったが、自分も用が足したくなったため、

 「うん!ありがとう! けどトイレに行きたくなったから行ってきてから食べるね!」

 そう言って僕は車から降りた。

 外はかなり寒い。

 手がかじかんでいて棒のようになり、長く外にいると手の感覚が全くなくなりそうだ。

 車に気を付けつつ、若干小走りでトイレへ向かう。

 パーキングエリア内のお店は結構大きくて、コンビニから食堂、チェーンのカフェ店、様々な出店があった。

 トイレの近くの喫煙スペースに父の姿が見えた。

 ちょうど煙草を吸い終わるところだった。

 「おぉ 先に戻ってるぞ。」

 と父は凍えそうな気候に肩をすくめて車へ向かっていった。

 

用を足した後、近くにあった自販機に目をやり温かいものが飲みたいなと思ったが自分はお小遣いを持参していなかったので両親におねだりする必要があり面倒なので諦めることした。

 そして、厚い雲に覆われている上空を見上げつつ車へ向かっていた。

 上空から降り注ぐ大雪は止む気配を見せないので、いつまで続くのだろうと思っている時だった。


キキキキーッ!


 何かが地面をこするような高い摩擦音が聞こえたと同時に、すさまじい破裂音と地面が揺れ動くような激しい衝撃がパーキングエリアに響き渡った。

 パーキングエリア内がざわざわとどよめき始めた。

 コンビニやカフェ内にいた人たちも、なんだ?なんだ?と外に出てきた。

 中の人たちも聞こえるほどの破壊的で強烈な音だった。

 パーキングエリア内にある公園のような広場に人だかりできていた。

 そこは少し高くなっていってあたりを見渡せる。

 そして、みんなの目線はパーキングエリア内を眺めているようだ。

 僕も人込みを掻き分け、野次馬のようにしてみんなが眺めているところを見つめようとした。

 「事故っぽいな。 トラックみたいなのが横転してるんじゃないか?」

 群衆の中から確かにそう聞こえた。

 「ほら! あそこ。煙が上がってる!! かなりやばそうね」

 カップルであろう20代くらいの女がそちらを指さして彼氏にささやいている。

 まさか!?

 僕は一目散に公園を離れ、女が指さした方へ走り出した。

 公園とパーキングエリア内をつなぐ階段に足を取られつまずきそうになりながらも、どうにか体制を持ち直し走り続けた。

 パーキングエリアの車道を横切りながら車と車の間を抜けていく。

 オイルと何かが焦げたような匂いがあたり一面に立ち込めていた。

 パーキングエリアの真ん中あたりには数名人がいて、携帯を持って警察に通報しているような人や、あわわと驚愕して口をパクパクしている人もいた。

 その付近で駐車していて、車内にいた人たちは慌てて発車したりしている様子だった。

 衝撃音がした場所へと急ぐ。

 焦げくさい匂いは一層増してきて息も出来ないくらいだ。


!?


 その音の正体がやっと掴める所まで来て、僕は愕然とした。

 無残に破壊され鉄のボディを剥き出しに横たわるトラック。

 飛び散っているガラスの破片。

 普通車が3台分下敷きに。

 黒、黒、白。

 白い車体。

 間違いない・・・。

 僕たちを乗せてきた車だ。

 あまりにも唐突で信じたくもない光景だった。

 嘘だろ?? 嘘だよ! こんなの!! 夢なら早く冷めてくれよ・・・!!

 僕は残酷すぎる現実になすすべもなく、膝から崩れ落ちた。


 「おい!」

 近くで呼ぶ声が聞こえ我に返った。

 「お前危ないぞ! オイル漏れしてるし爆発するぞ!」

 事故現場に近づいた少年を勇敢にも安全な場所へ誘導しようとしているのだろうか。

 工事事現場で働いてるような作業服を着た人が僕に話しかけてきた。

 違うんだ!車内には家族が! まだ助かるかもしれない!

 そう叫ぼうとしてもショックのせいか声が出なかった。

 「か・・・家族が」

 「え?」

 その時、まるで至近距離でフラッシュを炊いたかのようなまばゆい光が目に飛び込んできた。

 それと同時に、僕の体が宙に浮かんでいるように感じた。

 固い物質のようなものに体が接触したかと思うとバチッと火花が散った。

 なんだ? この感覚は?

 その後、さっきとは対照的に暗くて冷たい闇に、僕は飲み込まれていった。

 


 


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