「ソレ」
ズル…ズル…
水色の「ソレ」は確実に近づいてきている
正体が分からないその謎の液体に恐怖し、体が動いてくれない……
ズル…
ズル……
大きさは50cm程の水色のゼリー状の固まり
動きは早くはなく
走れば逃げれるのだが、未知の「ソレ」に対して恐怖してしまっている。
「ソレ」は足元までやって来た。
動かない。足元まで来て何もしてこない?
なんなんだこいつは。
ここで足がやっと動いた、おれは即座に立ち上がろうと足を曲げる。
だがそれがまずかったのだろう
「ソレ」はゼリー状の体から細長い触手を1本俺の足に巻き付けた。
俺がそれに気づいた時には景色がぐるりと回った、いや、実際には俺の体が回転しているのだろう。
何が起こったのか訳もわからず近くの木に身体が激しくぶつかる
ゴッ!
鈍い音と共に全身に激しい痛みが広がる
「ガハッ!」
口から空気が漏れる
痛みが全身に感じている時にやっと気づいた
おれは「ソレ」に身体を投げ飛ばされたのだと
そして痛みを感じながら実感した。
ーーここは夢なんかじゃない
ここが現実なのだとーー
激しい痛みの中何とか立ち上がる
「ソレ」はこちらに向けて突進してきた
さっきの身体を引きずって動いていたノロマな動きではなく、跳ねるようにこちらに向かってきた
体にモロに突進を受け、またも木に叩きつけられる
意識がくらくらする
目の前には「ソレ」がいた、名前も分からない
謎のゼリー状の怪物
このままこの怪物に殺されるのだろうか
そんな事を考えた
だが結果はちがった
木に倒れかかり動けなくなっている俺の近くで
「ソレ」は俺と同じように動かない
すると俺が叩きつけられた木から葉っぱが一枚ヒラヒラと落ちてきた
すると「ソレ」は触手を伸ばし葉を掴み先ほどと同じように振り投げた
葉はヒラヒラと遠くに舞っていく
その葉に向かって突進をしている
この怪物はもしかして動くものに反応してるんじゃないのか?
このままジッとしていればやり過ごせるのではないだろうか。
「ソレ」は葉を踏みつけ動かなくなったのを確認したのかまたもやジッとしている
ふと、おれはまだ手に持っているガラスの石に気づいた。
ーーそういえばさっきの説明で支配がどうとか、そんなスキルがあったはず、もし俺の考えがあっていれば目の前にいるこの怪物も支配出来るのではないか?ーー
そんな事を考えた。
動けば触手と突進の攻撃をうけてしまう
しかし、それは逆に動く物にしか反応できないってことだ
生きていると実感した今、俺には生き残りたいという考えが生まれていた
もしさっきの魔族世界の説明がホントならこんな怪物がゴロゴロしているって事だ
頼れる人間もいない。こいつから生き延びてもまたいつこんな化物に出会うか分からない。
目の前の「ソレ」をもし支配できれば…
そんな考えを持った俺は痛みが少し和らいできた身体を動かした…
「ソレ」はこちらに触手を伸ばしてきた
俺は一番早くに動かした右手からガラスの石を「ソレ」に投げつけた触手は方向を切り替え石を掴む
その僅かな時間。
おれは左手を「ソレ」に突き出した
支配の絆
発動のやり方なんて分からない
支配出来るのかも分からない
だが自然と言葉が口から出てきた
「俺の支配下になれ!!」
その言葉と同時にスライムの動きが止まる
なにも聞こえなくなったその時間、俺には自分の心臓の音しか聞こえなかった。
ドクン、ドクン
荒い鼓動音がする、当たり前だ、もし支配が出来ていなければ今度こそ触手で振り回されて
殺されるかもしれない。
「ソレ」の触手がガラスを掴んだままこちらに向かってきた。
あぁ、支配出来ずにこのまま殺されるのだろう。
そんな考えが浮かんだ
触手は目の前で止まり。そっと触手からガラスを出した。
するとガラスから見える「ソレ」の詳細が俺に送られてきた
ーージェルスライムーー
相沢の支配下の魔物個体
レベル3
BP60
[スキル]
なし
相沢の支配下と書いているそのスライム
おれはぐっと拳を握りしめた
スライムはこちらにはね飛んできたしかしさっきのように激突せず、足元に器用に着地すると
猫が甘える時のように足に擦り寄ってきた
おれは触手からガラスを受け取ると触手はするすると引っ込んだ
そっとスライムに触ってみた。ひんやりとしておりジェル状であり心地好い
抱き上げると
「ダポン」と、湖に石を投げ込んだ時のような音が聞こえた。
それはこのスライムの鳴き声だったのだろう
おれは自然とその鳴き声を聞き
言葉を発していた
「お前の名は[ダポ]だ!」
それは支配できた喜びで発していた言葉なのか
[支配の絆]によって発せられた言葉なのかは
分からない
だがこの世界にきて初めて支配した
[魔物]
だった。
思ったより長くなってしまいました