支配の絆
ーーあれ?おれ、さっきまで歩いてたはず…ー
ーーたしか後ろからクラクションが鳴ってー
ーー「だい……か…きゅう……しゃ…は……」ー
ーー……騒がしい…誰かが叫んでる…ーー
ーーあぁ、思い出した、おれは後ろから走ってきたトラックに引かれたんだった…ーー
「……お……し……なよ!…しっ……」
ーー父さんの声がするーー
ーーそうか、父さんと一緒に帰ってたんだった…ーー
ーー就職祝いに飯食べに行った帰りに引かれたのか、父さんは無事なのだろうか?叫んでるし元気なんだろうーー
「お……がい…………て………れ!」
ーー父さんが無事なら良かったーー
ーーあぁ、なにも聞こえなくなってきた、死ぬのかな?おれ?結局親孝行の一つも出来なかったな…男手ひとつで育ててくれた父さんに初給料でネクタイでも買ってやろうと思ってたのによ…ーー
ーーくそ、……せめて…1回でもありがとうって言えばよかった、なんで恥ずかしがってそんな事も言えなかったんだ……
ーー眠たくなってきた本格的にヤバイんだなーー
ーー真っ暗で感覚もないのに眠たいってのは分かるんだな……ーー
ーー……ありがとう……とう……さ………ーーー
ー
ーーー
ーーーーー
ーーあれ?おれ生きてるのかな?体の感覚があるし、木々のいい匂いもする…おれ、病院のベッドの上で寝てるんだろうか……ベッドにしてはなんかゴワゴワしてる、それに右手に硬い何かがあるのがわかるなんだこれ?ーー
ーー目を開けよう、助かったんだ、まずは父さんを安心させよう…………ーー
目を開けた
ーー眩しい……照明にしては眩しすぎる。ベッドもかてぇし。この病院はダメダメだな文句言ってやる……ーー
目が光に慣れてきたのか、照明の間に枝葉の影が見える、いや、実際には照明では無かった、照明だと思っていたのは枝葉の間から見える太陽の光だった。
風が吹き枝葉が揺れているのがわかる
横を見れば右は草が生え、左もしっかり草が生えている
「はえ?」
思わず変な声が出た、俺が病院だと思っていた所は森の中だった、木が生い茂り根はしっかりと地面に伸びており、風が吹く度に心地よい木々の香りがする。
訳が分からなかった、俺は確かに父さんと歩いて帰って事故にあったはずだ、夢を見ていたにしては鮮明に覚えているし、なによりこんな森、おれは知らないし来た覚えもない。
俺が住んでいた所は都会で森なんて子供の頃ばあちゃんの家に行った時に少し遊んだぐらいだ
体を起こし自分の身体をまじまじを見てみた。
服装は森に似合わない、いや、似合うのかも知れないが
俺が事故にあった時と同じ学生服だった。
学校から家に帰った瞬間、内定を貰ったと連絡を受けて慌てて帰ってきたらしい父さんが涙目で飯に行こうと制服のまま連れて行ってくれたんだった。
頭悪くて高校で就職した俺に、お前は自慢の息子だなんて涙目で語ってきて、そんな立派な息子なんかじゃねーよ
そんな事を思い出してしまいつい俺も目が熱くなってきた
いかんいかん。生きてるんだから泣かずに帰って父さんにありがとうって言わないと
その時おれは右手の中に感じる違和感を思い出した
いま、おれは右手でなにかを握っている。
開いてみると丸い、ガラスの様な物が握られていた
「なんだ…これ?」
ガラスの様な物は少し緑色で透けいた、
おれは左手でガラスを持ち上げた。ガラスから見える右手は少し緑色に見えた、
時間にしては一秒もない、だがおれは無意識にガラスから見える右手をジッと見ていた
するとガラスに赤色の線引かれ、それがミミズのように広がった
広がった赤色の線は文字のようになっていた
おれは顔を近づけ文字を読み始めた…
いや、読み始めたというより、頭の中に勝手に文章が浮かび上がってくる、そんな感覚だった
ーーアイザワーーヒロキーー
ーーレベル1ーー
ーーBP30ーー
[スキル]
支配の絆
頭の中の文章は訳が分からなかった。
相沢 弘樹は俺の名前だ、それはわかる、だかそれ以外は身に覚えがなかった。
レベルやスキルはゲームなんかで聞いたことがある
だがBPや支配の絆ってのはなんなんだ。
ーーBPーー
魔族世界において強さの記号。数字が高ければ高いほどより高い能力やスキルを有している
ーー支配の絆ーー
一般的に魔族と呼ばれる者に対して有効なスキル
魔族を支配することが出来る。
しかし、術者との絆が浅ければ浅いほど効果は薄れていき支配は消えていく。
絆が深ければ効果は強まる。
魔物にも支配は効果がある。
簡単な説明が頭の中に文章として浮かび上がる、
説明され、余計に頭の中は?だらけだ
なんなんだ魔族世界って
ーー魔族世界ーー
3000年前に勇者と魔王の戦いにより勇者が敗れ、魔王の力により魔族が支配した世界
勇者と同じ種族の人族は皆殺しにされ人族世界とは
反対の世界位置にある
また答えが帰ってきた。勇者や魔王、魔族なんて単語でだんだん分かってきた。
これは夢なんだろう
おれは今頃病院のベッドで寝ているはずだ
魔族世界?人族世界?
ふざけるな、早く現実に戻してくれ、早く目を覚ませ!
そう思い自分の頬をつねろうと顔を上げると
木々の間から水色の物体がみえた、いや、よく見ると液体のような
ブヨブヨした……
「ソレ」は少しずつ俺に近づいてきた