『草きつね』
「んっ、」
「えっ?」
「これくんるから、」
「、あっ、、すみません。」
「なんも、なんも、」
うだるような夏の汽車の中で、
子ぎつねを一匹もらった。
知らないお爺さんが心配になるほど
ひどい顔をしてたのだろうか………。
去年8月
祖父の納骨をすました帰りだった、
お爺さんがくれた子ぎつねの、
しっぽは柔らかく
ふるふる揺れて、
猫じゃらしでできていた。
耳も顔も草の匂いがして
「スゥー」と息を吸ったら
悲しかったこころに
爽やかな風穴が
スコーンと明いた。
あっ、そういえば、
ちゃんとお礼を言ってなかった。
いけない、(汗))))
急いできょろきょろと
お爺さんをさがした。
お爺さんは まだ、
きつねを編んでいた。
ちいさな子どもたちが
食い入るように
それを見つめていた。
嗚呼、わたしも
あんなだったっけ………
泣いてばいいたらあかん、
天国の爺ちゃんが
言った気がした。
「爺ちゃん、きばるよね~」
と、つぶやいた。
車窓を流れる風景に
爺ちゃんと過ごした季が重なる。
空はどこまでも青く
山はキラキラ光にとけて
ゆらゆら燃える。
追いかけ歩く
わたしの手をひいて
やさしく語る
爺っちゃんのまなざし。
汽車を降りるころには
すっかり元気になっていた。
降りるわたしを見送るように
顔をあげて お爺さんが
小さく笑った。
わたしも微笑みながら
小さく言った。
「ありがとう♪」
こんな感じだった、
ねこじゃらしのキツネ。
草むらから そっとみてる
キタキツネ。