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小説家になりたい僕と異世界転生した僕  作者: しかわ
第一章 小説を書きはじめた僕と異世界転生した僕
2/12

能力発動!

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 古い木製の橋を渡り、川を越える。裸足で歩くと意外と痛い。靴って大事だなあ。川を渡って、また森に入る。日は明るいが、結構涼しい。コンクリートジャングルに比べれば森の中ってのは随分と涼しいんだなあ。というか、少し寒い。腰に布を巻いているだけで、ほぼ全裸だしな。


「20分も歩けば村に着くわ。大丈夫?」


「えぇ、ちょっと足の裏が痛いですが、だんだん慣れてきました。あぁ、そうえいば村って何人くらいいるんですか?」


「50人くらいかな。うちの村は元々ハンターの集団だから。農業をやってる村と比べたら人数は少ないわね」


「ハンター? それって何をやるんですか」


「動物を狩って、その毛皮や肉を交易品とする人たちよ。だから、こんな山深い場所に村を作って住んでるのよ」


「へぇ、そうなんですか」


「だから私も結構強いわよ……。変なこと考えないでね」


「滅相もない。そんな……変なことなんてしませんよ」


 他愛もない会話を続けながら村に向かって歩いていく。まだ少し警戒されているみたいだ。当たり前か。突然現れた全裸の男をすぐに信用できるわけがない。


 その内、自然と会話が途切れ、下を向きながら歩いていると突如あたりが暗くなった。おかしいな、まだお昼くらいのはずだけど……。すぐに生暖かい風が頭上から吹いてきた。それにバッサバサと聞こえてくる。


「タクト! 上!!」


 アイネさんが僕の方に振り返り叫んだ。とっさに僕も後ろを振り返り、頭上を見上げた。そこには、見たこともない巨大な鳥が飛んでいた。僕の3~4倍はありそうだ。

 頭には派手な飾り羽があり、長く鮮やかな尾羽根も生えていた。綺麗な鳥だったが、それに不釣合いな大きな鋭いツメと、鋭利に輝くクチバシが明らかに僕たちを狙っていた。


「クェー!!」


 巨大な鳥はけたたましい叫び声をあげながら、僕たちの方に急降下してきた。やはり、僕たちを狙っているのか!! とっさに僕とアイネは横に呼び、鋭いツメをかわす。間一髪だった。アイネが教えてくれなかったら、避けることができなかった。


 鳥は空に舞い上がり、遠くの方へ飛んでいく。かと思ったら旋回し、再びこちらに向かってきた。まずい、次は避けられるか?


「森の中に飛び込め! 森の木々が守ってくれる!!」


 アイネ叫んだ。なるほど、木がガードしてくれるかも! 僕はとっさに森の茂みに飛び込んだ!! あ、腰に巻いていた布が茂みに引っかかった。やばい、取れない。


 鳥はアイネの方ではなく、僕の方に飛んできた。僕のほうが肌が露出しているからか。鳥はグングンとこちらに迫ってくる!! 森の木々をなぎ倒しながら!! なんてこった。森に隠れても無駄だった。早く避けなければ。しかし、茂みに引っかかった布が取れずに動けない。俺は咄嗟に布をほどいた。全裸になった僕は一生懸命逃げた。


 だが、無駄だ。鳥はゆるやかに方向を変えて、僕の方に向かってくる。目の前まで巨大な鳥が迫ってくる。僕は体勢を崩して倒れてしまった。そのせいで、M字開脚のようになってしまい、股間が丸見えになった。


「殺される!!」


 とっさに目をつむり、頭をガードした。ひときわ大きな風が吹き、小さなホコリや枝が体にビシバシ当たる。もうダメだ。短い人生だった。一回、死んだ気もするが……。とにかく死んでしまう。


 ……。風がやみ、周囲が静かになる。


 いつまで経っても衝撃は来ない。あたりは静寂に包まれている。僕はそーっと目を開けてみる。


 そこには先程までこちらを狙っていた巨大な鳥がいた。地に足をつけ、翼をたたんで、しきりにクビを傾げながら僕を見ている。


「タクト! 大丈夫!?」


 アイネの声が聞こえる。


「来ちゃダメだ、アイネさん! ま、まだあの鳥がここにいる!!」


 視界の隅でアイネが近づいて来ているのが見えた。手に斧を構えているが、そんな小さな手斧では、この巨大な鳥には敵わないだろう。


「今のうちに逃げてくれ、アイネさん!!」


 それまで僕を見つめていた鳥が、ゆっくりと頭を僕の方に近づけてきた。食われる!!



 鳥は僕の顔に自分の頬をこすりつけ、優しく「ククルゥー」と鳴いた。え?


「……お、お前。僕を食べるんじゃないのか?」


「ククゥー、ククルゥー」


 目を細めて、甘えたような声で鳴く巨大な鳥。明らかにもう敵意はないように感じる。それどころか、僕に懐いている? 何でだ?


「驚いた。ロックバードが人に懐くなんて……。やっぱりタクトはマロードだったんだ……」


 結局、逃げずに僕のところまで来たアイネが、口を開けたまんま突っ立っている。この鳥、ロックバードって言うのか。


 ロックバードは相変わらず僕に甘えてくるが、その大きい頭をこすりつけられて結構痛い。僕はおそるおそるロックバードの頭に手を伸ばし、なでてみた。よーしよし。


「ククゥー」


 嬉しそうに鳴き声をあげるロックバード。これは完全に懐いている。なぜ急にロックバードは僕に懐いたのだろうか。


「話によると、マロードは条件を満たせば、モンスターを使役できるそうなの。普通は人に懐かないロックバードが懐くなんて、間違いなくあなたはマロードだわ」


「そ、そうなんですか」


 条件を満たせば、モンスターを使役できる……、それがマロードの能力。僕が満たした条件とは……?


「タクトの場合、アソコを見せるとモンスターを使役できるみたいね」


 なんだ、その悪ふざけみたいな条件。ふざけてんのか。


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 何だこれ。いや、モンスターを使役できる能力っていうのは良いけど。……最初に全裸にしたせいだ。アイネから貰った綺麗な布を腰に巻いていたのを伏線に使ってしまった。その布が取れて、窮地を脱するという展開を思いついてしまったのだ。


 まぁいいか。思い切りシモネタだけど。ところで、最近の若い人にはM字開脚って言葉、通じるんだろうか。あれは僕が若い頃に流行った言葉だ。辞書にも載ってないだろうしなー。まぁ検索すれば分かるだろうから、このままでいいや。


 ついでに綺麗な布にも何か設定を追加しておくか。

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