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ダブルデート②

「夕食どうする?」


聞いてみた。雪夜君と正哉君が顔を見合わせた。


「並ぶけど美味しいものと、並ばないファミレスかファーストフードどっちが良い?」


私と美穂ちゃんは顔を見合わせた。お互い譲り合うような仕草を見せる。先に言った方の意見が通っちゃいそうな気が…でも美穂ちゃんに譲られておずおずと言う。


「私は並んでも美味しい方が良いな…美穂ちゃんは?」

「私も美味しい方が…」


ほんとかな?私に遠慮してるなら申し訳ないけど…


「じゃあ行くか。」


雪夜君が私の手を、正哉君が美穂ちゃんの手を取ってエスコート。


「何を食べに行くの?」

「内緒。着いてのお楽しみ。」


雪夜君が人差し指を唇の前に立ててパチンとウィンクした。こういう仕草が様になっちゃうところが凄いなあ…可愛いし。

着いた所は鮮魚を扱うお店のようだ。飯島鮮魚店と言うお店だった。すごーい行列が並んでいる。私たちも最後尾に並ぶ。


「水族館行った後に鮮魚食べるとか…」

「海のお勉強をした後は食物連鎖のお勉強だよ。」


雪夜君が笑った。


「あんなに可愛かったお魚さんたちを食べてしまうのですね…」

「牧場の敷地に普通にジンギスカン屋とかあるし、別におかしくないだろ?目で楽しんだ後は舌で楽しむんだよ。これ基本。」


正哉君も笑っている。


「何の基本です?」

「物を食べるときの基本。美穂も食べられてみるか?じっくりたっぷり色んな所見せてもらった後で食ってやる。」


正哉君がニヤッと笑った。うわあ…すごい野性的な感じの笑顔だ。最近の中学生ってこんなに色っぽいものなの…?美穂ちゃんは顔を真っ赤にして口をパクパクさせている。


「正哉、顔が18禁。」

「しつれーな。」

「後藤真っ赤になっちゃってるし。」

「可愛いだろ?」

「あー。ハイハイ。ご馳走さま。」


雪夜君が肩をすくめた。


「そう言えば雪夜、合気道の道場の知り合いに朝比奈さんの友達紹介したらしいな?敦士がなんか喚いてたぞ。『俺にも!』って。」


綾ちゃんのことですね。上手くいってるらしくて学校でも結構はしゃいでる。幸せそうな綾ちゃんは可愛い。白兎君に上手いこと乗せられてるみたいで、最近は暴走癖がちょっと良くなってる。


「いや。敦士は無理だろ。どっからその情報回ってんの?」

「どこだろうな?まあ、敦士は無理だけど。ていうか敦士は早いうちに躾けておかないと万年女日照りの駄目な男になりそうな気がする。風俗とかに嵌まって身を持ち崩しそう。」


雪夜君が露骨に嫌そうな顔をした。雪夜君もそういう顔することがあるんだね。ちょっと新鮮です。会話の内容はあまり子供らしくないけど。


「オレは躾けないぞ?正哉がやれよ。」

「俺の手には余る。」

「そこまで面倒みる気ないし。日照りだろうが風俗だろうが好きにしてくれ。」

「放置か。」

「なに?正哉、親身に世話焼いてやりたいの?」

「や。無理だけど。」


雪夜君の「内に入れてる人間以外に対しておざなり」感がちょっと見えた。新鮮。いつも優しいまんまの雪夜君と違って普通に嫌そうな顔とかする。ちょっと年相応にも見えて可愛いかも…きゅんってなる。


「この前お前に借りたゲームでさあ…すごい変なバグが出たんだけど。」

「どんな?」

「初期ローブが売っても売っても減らない。無限に金だけ増えてく。」

「ラッキーじゃん。」

「もっとこう、苦労して装備品そろえるステップ欲しいじゃん。」

「わがまま~。」


雪夜君と正哉君は二人で楽しそうに話している。楽しんで話している顔も少年っぽさUPで可愛い。背は高いけど…


「普段の七瀬君の顔はいかがですか?」


美穂ちゃんに聞かれる。


「可愛くてキュンキュンです。」

「良かったですね。」


美穂ちゃんに微笑まれた。


「でも私の前の雪夜君もすっごい格好良くて可愛くて優しいんだよ。」


雪夜君の態度が可愛くてときめいてると、月絵さんが「ぜぇんぶ計算よ!」って言うけど、可愛いくて仕方ないんだもん。計算でもいいよ。


「優しいですか。」

「うん。トロトロに甘やかされてる。」

「愛されてますね。」

「えへへ…」


嬉しくてはにかんだ。


「結衣さん可愛いです。これがあの氷の七瀬君を魅了する愛らしさなんですね…」


こ、氷の…?


「雪夜君ってそんなに女の子に冷たいの?」

「うーん…正確にいえば七瀬君は『自分に特別な好意や興味を持つ』女の子に冷たいです。私は七瀬君に全く興味がないので割と普通に接してもらってますよ?でもなんせあの美貌にあのスペックでしょう?近寄られる方はときめくつもりはないのにうっかりときめいちゃって、一度でもときめけば、それ以降は道に転がっているクズ石のように扱われます。」

「そうなんだ…」

「結衣さんは初めて七瀬君に会った時ときめかなかったんですか?」

「うん。」


あの頃は恋愛しようなんてこれっぽっちも思ってなかったし。ノートの関係者だったから関心はあったけど、普通に子供だと思ってた。気が付いたら雪夜君のこと好きになってたから、いつ好きになったかって言うのは聞かれてもよくわかんないけど。


「七瀬君の攻略法は惚れる前に惚れさせちゃうことなのかもしれませんねえ…」


美穂ちゃんはしみじみ言っていたけど。

1時間ちょい並んでお店に入れた。

メニューも色々ある…


「雪夜君は何にするの?」

「オレは鮪尽くし丼の特盛かな。」

「特盛…?」

「丼物は100円追加すると大盛、200円追加すると特盛に出来る。特盛はかなりボリュームあるよ。結衣はお腹すいてる?」


きゅるる…と私のお腹が鳴った。雪夜君がふふっと笑った。


「特盛で頼んでみる?残ったらオレが食べるし。」

「じゃあ、私も鮪尽くし丼の特盛にする。」


どうもこのお店は築地の鮪仲卸直営店みたいなので。鮪をたっぷり食べるつもりだ。正哉君は上海鮮ちらしの特盛。美穂ちゃんは上海鮮ちらしの並盛を注文するようだ。

やってきたのはずずんと直径16cm、高さ7cmの器に盛りつけられた鮪尽くし丼が2段重なっている。おせちの重箱のように綺麗にとじられている。


「2段!?」

「特盛だと器に具が乗りきんないんだってさ。」


上段は本マグロの大トロ、中トロ、タタキ、炙り、漬け鮪、赤身がこれでもかって言うくらい器からはみ出して盛られている。結構肉厚!鮪たちの上にレモンと大根おろしとワサビが乗っている。下段は鮪のぶつ切り丼になっている。すごいボリューム…美味しそうだけど。

上海鮮ちらしの方は上段は本マグロの中トロ、赤身、炙り、タタキ、ウニ、イクラ、海老、イカ、タコ、サーモン、サバ、コハダ、ブリ、穴子、白身、ホッキ貝、玉子、キュウリ、ガリ、が少量ずつべろんと器からはみ出して盛られている。下段は鮪のぶつ切り丼になっているようだ。うーん…そっちも美味しそうだ。

お値段も特盛にしても2000円行かないくらいだし。安い…


「じゃあ、いただきます。」

「水槽の中をあんなに逞しく泳いでいた鮪さんを味わってね?」


雪夜君が私をからかった。見るのと食べるのは別だもん!ここの鮪は野生の鮪だろうし。一口食べるととろけるような中トロ。鮮度も抜群。ぷりっぷりの身とじゅわわっととろけ出てくる甘い脂が堪らない。


「おいしー…」


私は思わず笑み崩れてしまう。雪夜君がふふっと笑った。


「美味しそうに食べてる結衣も可愛い。結衣がそうやって美味しそうに食べてくれると美味しさ二割り増しに感じるよ。」


雪夜君甘いなあ…

雪夜君も鮪を味わっている。


「うん。やっぱり旨い。正哉、トロと穴子交換しない?」

「あ、頼むわ。俺トロの方が好き。」


雪夜君と正哉君は具を交換して食べている。雪夜君は結構穴子とか好きだったりするが、自宅では中々出てこないメニューではある。


「美穂。旨いか?」

「可愛いお魚さんは美味しいです。あんなに可愛かったのに…」


美穂ちゃんはうにゅにゅ…と微妙な顔をしている。


「悲しいけどこれ食物連鎖なのよね。」


雪夜君が某名言風に言うので笑ってしまった。


「雪夜君、ライオンに食べられる前の前振り?」

「結衣がオレに食べられる前の前振りでしょう?」


雪夜君はシレッと言った。


「食べていい?」


顎をくいっと持ち上げられた。顔が凄い近い…キスされそう…。眇められた目が凄く色っぽい。雪夜君にそんな目をされると一気にドッ…ドッ…と鼓動が早まる。


「だ、だめ。今はお魚さんを食べてください。」


真っ赤になる。美穂ちゃんや正哉君がいるのに…あうあう。


「そう?残念。」


雪夜君が悪戯っぽく笑った。最近の中学生ってすごい艶っぽいんだな…ジェネレーションギャップを感じる。私が中学の時周りにいた男子なんて、みんな林田君みたいのばっかりだったのに。


「美穂も食われとく?」

「今食事中!結衣さん、どうしよう。野獣がいっぱいいる。」

「おいしい餌があるのが悪いんだよ?」


ぷちゅっともぐもぐしている唇にキスされた。


「むぐっ!」


びっくりして吹くかと思った。雪夜君、ここ公共の場!頬が熱いです…。見ると美穂ちゃんもちゅっとキスされている。


「食べちゃだめって言ったのに…」

「味見だからまだ食べた内に入らないよ。」


雪夜君は余裕しゃくしゃくで笑っている。うう…いつか雪夜君の余裕を奪ってみたいです。私だけドキドキしてるなんてずるい。


「食べた内に入らないなら私が他の男の人に味見されても良い?」

「結衣に監禁されたい願望があるなんて知らなかったな。」


雪夜君がにっこり笑った。な、なんか怒ってる…?


「監禁して、凌辱して、オレしか目に入らないように壊してあげようか?きっと壊れちゃった結衣もかわいいだろうね。」


なんか怖いこと言ってる…!!まさかのヤンデレ属性!?


「雪夜、家族のいる自宅で監禁するのは難しくないか?」


論点はそこじゃないいいいいいいいいいい!!!!


「そうだね…。どうやったら監禁できるかな?まず最低でもアパート借りなきゃだめだし、食費も光熱費も水道代もかかるしね。アパート借りること自体保護者の同意が必要だろうから、上手い口実作らなくちゃならないし。実際監禁するのって結構難しいかも。お金の方は初期費用はかかるけれど株で増やしていってみるか…」


雪夜君が真剣に考え込んでしまった。本気っぽいから止めてほしい。


「初期費用いくらくらい出せるんだ?」

「こないだ祖父母に3姉弟200万ずつ貰ったからそれを当てれば何とかなると思う。」


七瀬家祖父母…!!子供に大金渡しすぎだから!合わせて600万とかお小遣いの範疇じゃないし!でも桃花ちゃんはこれから先運転免許取得の講習とかあるし200万あったらありがたいだろうけど。月絵さんも一人暮らしを始める初期費用とか、もしかしたら結婚資金とか…あ、以外とお金って沢山必要かも?


「雪夜に限って大損とかはしなさそうだしな。沢山増やしてきっちり監禁だな。」

「ゆ、雪夜君…冗談だから…」


なんか怖い方向で話まとめるのヤメテ…


「ふふっ。オレも冗談だよ?」


びっくりした…怖い冗談はやめてほしい。


「でも浮気はやめてほしいな。」

「絶対しないよ!でも、雪夜君も浮気したら…やだよ…?」


上目遣いでお願いした。雪夜君に浮気されちゃったりしたら例えようもなく悲しい。一瞬の想像にひどく不安に駆られて一生懸命お願いしたら、悶絶された。


「朝比奈さんって小悪魔な?」


なんで!?


「結衣さんって一人でふらふらしてたら、あっという間に悪い男に食べられちゃいそうですよね。可愛いし、か弱そうだし、無理矢理とか。」


そういうフラグは要らない!うう。美穂ちゃんまで…


「美穂も悪い男には気をつけろよ?」

「正哉君みたいな?」

「おお?言うようになったな?」

「毎日躾けられてますから。」


アブナイ話はあったけど、鮪尽くし丼は美味しいです。炙り鮪とレモンの相性も抜群。漬けも味が染みておいしいし。2段目の鮪のぶつ切り丼も肉厚の鮪たっぷりで鮪をしっかり味わってるって感じ。ぺろっと巨大な鮪尽くし丼を食べきってしまった。


「プハァ…おいしかったー…」

「いっぱい食べたね?」

「食べすぎちゃったかな?」


なんかあんなにボリュームあったのに美味しすぎてペロッと食べちゃったけど…


「たまにはいいんじゃない?普段はあんまり食べてないみたいだし。」


うん。たまにならいい…ということにしておこう。明日の夕食はちょっと少なめにしよう…食べても殆ど太らない体質だけど、気を抜きすぎるのも良くないし。いつでも雪夜君に可愛いねって言ってほしいし。反省。


「私は並盛にしましたけど、皆さんの見てたらやっぱり羨ましかったです。並盛でも大分ボリュームはあるんですけど、酢飯だから結構スイスイ食べられちゃって、ちょっと物足りない感じです。美味しかったから余計に。」

「今度来るときは美穂も大盛くらいにチャレンジしてみたらどうだ?」

「そうします。」


お会計をした後4人でちょっと腹ごなしに歩いた。ぶらぶらするのも気持ち良いな。


このバカップルめっ!!飲食店でキスとかしちゃうのはダメだと思います。悪乗りしちゃってますが。

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