ダブルデート①
綾ちゃんの初カレで出ていた「ダブルデート」の回です。ホント言うとside雪夜の方がメインな感じです。side結衣も書くけども。気ままなデート風景を描いてるだけですが。
時系列的に言うなら「初体験」より前のお話です。
雪夜君のお友達とダブルデートである!午後からだ。お友達どんな子なんだろ?ダブルデートに連れてくるくらいだから雪夜君とは仲良しなんだよね?お友達の前で雪夜君がどう振舞ってるのかも見られる。楽しみ!
白のバルーンっぽい袖になってるしわしわオフショルダーブラウスに淡い水色のダメージサロペットを合わせた。裾はちょっと折って短めにして、浅めのスニーカーを履いた。髪はこないだ買ったキャラメルカラーの姫ラインのロングウェーブのウィッグを、左右で分けて耳の下くらいまで編み込みを入れて縛った。ゆるふわガーリーな感じだ。当然一人でこんな髪型にできるわけもなく、麻衣の監修の元作った髪型だけど「良くできてるから、次から一人でも大丈夫だと思う」と言われた。えへん。私だって成長してるんだからね!瞳はヘーゼルのカラコンを入れた。ピンク多めのちょっと甘めのメイクを施した。
待ち合わせ場所には既に雪夜君ともう一人男の子が来ていた。
雪夜君は黒のソフトハット。白いVネックカットソーに黒のジャケット、デニムパンツを合わせている。足元は赤のスニーカーだ。足元の赤が良く映えててお洒落。
お友達は濃いグレーのワークキャップ。淡いグレーのジップパーカーに白のカットソー、黒のパンツ、茶の革デザインスニーカーだ。
お互いの帽子を交換して被ってみてあーだこーだ言ってる。
「あ、結衣。おはよ。」
雪夜君が私の接近に気付いた。
「おはよう。」
「後藤もすぐ来ると思うから待ってて。」
「うん。」
雪夜君がちらりと私の全体図を見た。
「今日の髪型可愛いね。自分で編んだの?」
「うん。麻衣監修の元自分で編んだ。どうかな?」
「すごい可愛い。肩出してんのも可愛いし。ちょっと色っぽい。」
「えへへ。」
褒められた。嬉しいな~。
雪夜君は私の頭をナデナデしつつ、お友達に会話の続きを話した。
「ワークキャップは良いけど、ベースボールキャップとかは結構苦手。」
「B系ファッションの奴がよく被ってる印象あるけど。雪夜そういう格好しないもんな。」
「B系は苦手なファッションの一つだな。どっちかっていうと小奇麗な感じで攻めてるから。ハマってるやつは似合うのかも知んないけど、オレには合わない。正哉もB系は着ないな?」
「俺もあんまり好きじゃない。」
二人でファッションのお話をしているようだ。雪夜君はものすごーい美少年だけど、正哉君(?)もかなりイケメン。背も160後半…168くらいはありそうだし…。ちょっと眠たげな眼が返ってセクシーな感じの美少年だ。髪型は雪夜君に少し似ているウルフ系だ。
「あ、美穂来た。」
正哉君(?)が言った方向を見ると凄い可愛い女の子が小走りに近づいてきた。
ぱっちりお目々の睫毛はビューラーで綺麗に持ち上げられている。眉も綺麗にカットされている。多分お化粧は化粧下地に数種のルースパウダーを使い分けて顔の陰影を作って、頬にオレンジピンクっぽいチークを載せている。リップは口紅を指乗せした後、淡い色のグロスで飾ってるナチュラルメイクだ。頭の頂上でまあるいお団子を作ったヘアアレンジ。白のロングニットに紺のチュールスカート、ブルーのタイツに黒のハイカットスニーカーだ。ビジューになってるイヤーカフとイヤリングをしていて、それがまた似合う。桃花ちゃんみたいに地顔が飛びぬけて可愛いタイプじゃなくて、程々に可愛い容姿に全力のお洒落で自分を可愛く見せることに成功してる女の子だ。
「お待たせしました!」
「おし。じゃあ自己紹介するか。雪夜以外。まず俺な。多嶋正哉。13歳。中二。趣味はゲーム。街づくりとかファームとかそういうのが好き。RPGもやるけど。好きな食いものはハンバーガー?バンズに挟んであるのが好きだけど、ベーグルサンドとかも意外と好き。あと肉類は大抵好き。嫌いなものはナンプラー。みみずとかムカデとかうにょうにょした生き物は苦手。よろしく。」
ベーグルサンド美味しいよねえ…私は基本気持ち悪い生き物は何でも嫌いだけど。てらてら光る水回りのGとか。動きが素早いとこがヤバい。雨上がりにアスファルトで死んでるウェットなミミズも嫌だけど。
「私は後藤美穂です。13歳で中二です。趣味はゲームとメイク。私は和製のホラーゲームが好きです。洋物のゾンビ撃つやつはなんかちょっと違う感じで…。最近正哉君に影響されてRPGもやるようになりました。あとガールズトークとかも好きです。好きな食べ物はふわふわのホットケーキ。ホットケーキの厚みは幸福の厚みです。太っちゃいそうで怖いですが、ホットケーキ食べるときだけはバターたっぷりつけてます。嫌いなのは特にないかな。何でも失敗してなければ美味しくいただけます。ダイエットだけが悩みの種で…。」
二人してゲーマーなんだ。見た目からは全然わかんないけど。二人ともウィンドウショッピングとか好きそうな見た目してる。すっごいお洒落だし。美穂ちゃんは口ではそう言ったけどすごいスタイル良さそうな感じだ。全体がかなり引き締まってるのに胸とかはぽんとある感じ。メイク好きとか可愛くて良いなあ。そのメイクもけばけばしくなくてナチュラルだし。
「私は朝比奈結衣です。17歳。高3。趣味は読書とお菓子作り…だったんだけど、最近お菓子にかかわらず料理全般が趣味みたいな感じ。雪夜君の喜んでくれる料理を作りたくてネットサーフィンしながらレシピ漁ってアレンジしたりしてます。自分自身の食べ物の好き嫌いは特にないかな。美味しいものは何でも美味しいです。苦手なのは運動。すごい運動音痴なの。体育も苦痛だけど、ボウリングとかもすごい下手。あと、高い所も怖い。観覧車もジェットコースターも平気だけど、タワーによくあるガラス床とか無理。観覧車もできれば昼より夜の方が良いかな。夜景の方がまだ怖くないから。」
自己紹介が終わった。今日は水族館に行く予定だ。
「結衣さんって呼んでいいですか?」
「勿論!じゃあ、美穂ちゃんって呼ぶね?美穂ちゃんと正哉君っていつからお付き合いしてるの?」
「結衣さんたちと同じで小6のホワイトデーからです。」
きゃっきゃとお話した。美穂ちゃんとはかなりすぐ打ち解けられた。多分美穂ちゃんの社交性が異常に高いんだと思う。
「ねえ、雪夜君って学校だとどんな感じ?」
「ふふっ。多分七瀬君は結衣さんにそのことあんまり知られたくないと思いますよ?」
「どうして?」
「七瀬君、自分の内に入れた人間以外にはサバっとしてるって言うか、かなりおざなりな態度とるんです。女子にはすごーく冷たいですし…正哉君には結構優しいですけど。」
「想像つかない。冷たい雪夜君かあ…」
「七瀬君に甘やかされてるんですね。」
美穂ちゃんに微笑ましげに見られてしまった。照れる。
美穂ちゃんの話も聞いた。小学校で雪夜君は女子の間で一番人気だったらしいんだけど、正哉君も二番目くらいに人気があって、超高嶺の花。たまたま正哉君に勉強教わる機会があった時に、すごーく優しくされて、ときめいちゃったそうだ。それからずっと好きで、でも自分は垢抜けない一女子生徒(その頃は今みたいに垢抜けてなかったらしい)。到底無理だろうなと思いつつ諦めきれなくて、バレンタインにチョコレートを渡したんだそうだ。ホワイトデーに正哉君がお返しに来た所で告白してみたら、案外すんなりOKが出て「これは都合のいい夢なんじゃないだろうか…」とすっごい疑っていたらしい。そこから正哉君にお化粧とかファッションとか態度を磨かれて今の美穂ちゃんになったそうだ。正哉君って原石磨きたいタイプなのね…
「上手くリードしてくれる彼氏なんだね?」
「七瀬君もでしょう?」
はにかんで頷いた。前方を歩く雪夜君を見る。
「亮太があの映画はつまんないって言ってだぞ?」
「あいつ、基本馬鹿だけど、面白い物の批評だけはばっちりだからなあ…多分本当につまんないんだろうな。あの映画はパスか。結衣とどこ行こう。」
私をデートに連れて行ってくれる話か。色々考えてくれてるんだな。外に出るのも好きなんだけど、私は意外とお部屋デートも好きなんだけどな。
「雪夜も、もう定番のデートスポットは回っちゃった感じ?」
「季節の花見とかは行ったし…プラネタリウムとかは行ってないけど、オレ夜景とか夜空はじっくり楽しみたいタイプだから解説欲しくないの。」
「夜景は?」
「結衣がタワー連れて行ってくれたことあるよ。夜景はかなりいいよ。お勧め。」
うんうん。あの時はまだ付き合ってなかったけどいちゃっとしたね。
「夜景なあ…中坊には敷居が高い感じするけど。」
「意外と普通に楽しめるぞ?」
美穂ちゃんちの門限にもよると思うけど。確かにムーディでお勧めではある。
「そう言えば俺花火大会の穴場見つけた。」
「へえ。オレは花火大会は当分自宅のベランダで良いかな。二人きりになれる場所も良いけど、折角花火見てるのにエロい悪戯とかされちゃったら可哀想だし。結衣花火好きだから。」
「二人きりになるとエロい悪戯したくなるんですね。わかります。とても。」
えっちな悪戯かあ…したいと思ってんのかな?嬉しいような、恥ずかしいような…雪夜君は正哉君と二人でじゃれあってる。友達の前ではあんななんだ…噂に聞くほど冷たくはないけど、きっとそれは雪夜君が正哉君のことを好きだからなのだろう。雪夜君にも仲良しの友達がいるんだな…ふふっと笑ってしまう。
水族館に入る所で雪夜君が私に向き直った。
「今日後藤がつけてるイヤリングとイヤーカフ、去年色々後藤に世話になったお礼にオレがプレゼントしたものなんだ。」
そうなんだ?ちょっと妬けるけど、私にそう打ち明けるってことは他意はないんだろうな。
「でも彼女以外の女の子にプレゼントして、彼女に何もプレゼントしないっていうのもオレ的にはちょっとナシ。安物で悪いけど、コレ受け取って。」
雪夜君が小さな包みを渡してきた。開けると片方がクマノミ、もう片方がフエヤッコダイのイヤリングだった。水族館だからこのチョイスなのだろう。とても可愛い。
「今つけてみていい?」
「勿論。」
私はいそいそとイヤリングを付けた。
「よく似合ってる。可愛いよ。」
雪夜君が褒めてくれた。嬉しいいいい!!私も雪夜君に何か素敵なプレゼントとかしてみたいけど、女の子と違って色んなアクセサリーっていうわけにもいかないから悩んじゃうな。
料金を払って水族館に入る。
薄暗い水槽に囲まれた。巨大水槽の中を魚の群れが泳いでいる。ライトが当たりきらきらと銀色に光っている。
「きれい…」
「素敵ですね…」
私と美穂ちゃんがほうっと溜息を吐く。
「マイワシだね。」
雪夜君が言った。
「ずーっとぐるぐる泳いでる。寝るときはどうするんだろう?魚も寝るよね?」
雪夜君に振りかえって聞く。
「魚も寝るけど、寝ながら泳いでるんだよ。寝ているから夜は昼よりゆっくり泳ぐんだって。」
「へえ。あんなに群れになってぶつからないのかな?」
「魚は側線器官っていう水圧や水流なんかの圧力変化を感じ取る器官を持ってるんだ。その側線器官があるおかげで、お互い適度な距離を保つことができるんだよ。」
「そうなんだ…」
雪夜君の蘊蓄を聞きながら銀色に光るマイワシの群れを見つめた。
「雪夜、魚詳しいの?」
「普通だよ。」
雪夜君が正哉君に笑って返した。雪夜君はいろんな雑学知ってると思うけど…どうやったらこんな子に育つんだろう…。
「雪夜がモテる理由も何となくわかるな…」
正哉君は感心しているようだ。
「あ、飼育員さんが餌あげてます。」
美穂ちゃんが言ったので目を向けてみると、巨大水槽の中に飼育員さんが入って餌をあげていた。
「気分は人魚かな?」
美穂ちゃんが可愛い感想を言う。
「うーん…あそこまで魚に接近したらちょっと怖いと思うけど…」
餌持ってるからもろもろ魚が寄ってきてるし。客用サービスに魚を引き連れてゆったり餌やりしてるけど。
「朝比奈さんはスキューバダイビングとかは憧れない方?」
正哉君に聞かれた。
「生涯の内一度くらいは体験してみたいとは思ってる。」
きれいな海で綺麗なお魚さんを見てみたい。
「こっちの水槽にはタコがいます!大きい!」
美穂ちゃんが別の水槽の中を眺めた。かなり巨大なタコだ。
「このタコなんだかくにゃくにゃずっと踊ってる…」
タコがぐりんぐりん触腕をくねらせ続けている。間近でその様子が見られる。
「それは脱皮してるんだよ。」
雪夜君が言った。
「脱皮?」
「吸盤の表面の古い皮を剥がしてるんだ。ほら。古くなった吸盤が剥がれて水中に浮いてる。」
白いカスのような吸盤の皮がぴらぴら水中を舞っている。
「へえ。」
私がタコを眺めていると正哉君が美穂ちゃんの頬に触れた。
「美穂は何の魚が好きなんだ?」
「グッピー」
「それは水族館にはいねえよ。」
海水魚じゃないしね。可愛いけど。
「うそ。カクレクマノミ。」
くすくす笑ってる。
「やっぱり映画の影響が大きくて。」
ネズミーな感じのあの映画ですか。
「私まだ見たことない。」
広告は一時期いっぱい見たし、ちょっと興味はあるけどまだ見てない。なんかほのかに興味はあるけど、執着するほど強い熱意がないから、わざわざDVD借りてくんのはめんどいなあ…って思っちゃう。テレビ放送とかしてくれるなら見るけど。
「そうなんですか?」
「面白い?」
「うーん…私は昔のネズミー映画の方が好きですね。お姫様が出てきて王子様と結ばれるやつ。もう今じゃああいう設定は古くて流行らないんでしょうね。」
古き良き時代だねえ。私も昔のネズミー映画の方が好きだったな。プリンセスってちょー憧れる。やっぱり女性はいくつになってもお姫様にあこがれるもんだよ。プリンセスデザインのコスメとかついつい欲しくなっちゃうよね。
「好きな話はどれ?」
「アラジンです。結衣さんは?」
「美女と野獣。でもねー…野獣、王子様になる前の野獣姿の方が好みだった。」
「だってさ。良かったな、野獣。」
「うっせーし。人を変な呼び方すんな。」
正哉君と雪夜君がじゃれている。
「夜はエッロエロの野獣なんだろ?」
「やかましい。」
「あれ?まだしてない?」
「そういうお前はどうなんだよ。」
「まだだけど。」
ああ~!!話題がアウトな方向に…!美穂ちゃんも赤くなっちゃってる…私もちょっと頬が熱いです。えっちかー…雪夜君中2だし、やっぱりまだ早いよね?私はもう高3なんだけど…
「美穂ちゃんたちって二人きりになった時そういう雰囲気になったりとかする?」
こそっと美穂ちゃんに聞いてみた。
「たまーに。正哉君は結構興味あるみたいだし。でもしませんよ?まだまだ早いです。高校卒業するころまでにはしたいかなあ…って感じに思ってます。」
高校卒業するころまでにかあ…私は今年で高校卒業しちゃうんだけど…うむむ。去年は「来年が良いかな?」なんて言ってたけど。実際今年になってみるとまだ早いような気も…まあ、大学入ってからでも全然良いよね。気長に雪夜君が熟れるのを待とう。雪夜君ってそういうこと興味あるのかな?ちらっと雪夜君を見たが、正哉君とじゃれ合っていた。まだまだ子供…だよね?
「正哉君に本気で迫られたら断れる?」
「……断れないです…。避妊だけはしっかりしてもらうことにします。」
美穂ちゃんも正哉君には弱いようだ。惚れた方が負けってことなのかなあ。
「中学生で孕んだりしたら親がぶち切れるよね。」
「高校生でも切れると思いますよ。家族計画はしっかり!です。」
「将来は雪夜君似の赤ちゃん欲しいけどねー。」
もっと大きくなって結婚した後。私は4つ年上だから、雪夜君は他の人達よりちょっと早めにパパになるかも?雪夜君似なら男の子でも女の子でも可愛いと思う。しっかり雪夜君の遺伝子を継いでほしい。
「それは私も…」
美穂ちゃんも正哉君似の赤ちゃん希望らしい。
少々ピンクな話も交えつつ水族館を満喫。
「あ。美穂ちゃんの好きなカクレクマノミ。」
「カクレクマノミは性転換する魚として有名だね。イソギンチャクに生活している集団の中で一番大きい個体がメスになり、二番目に大きい個体がオスになり繁殖する。他の個体はオスにもメスにもならず、繁殖行動をしないんだ。」
雪夜君が教えてくれる。
「ではあの映画の主人公は?」
美穂ちゃんが聞く。
「特別大きな個体でないなら生涯独身というわけ。」
「夢がないです!」
美穂ちゃんがショックを受けて正哉君に肩をポンポンされてる。
「もうひとつ言っておくと、あの映画の舞台はグレートバリアリーフだから、奴らは本当はカクレクマノミじゃなくてペルクラクラウンフィッシュだね。」
「雪夜。もうトドメ刺さないで良いぞ?」
美穂ちゃんはすっかりショックを受けている。正哉君が色々言って慰めてるみたい。いちゃついてるようにしか見えないけど。
「カクレクマノミって極彩色で如何にも毒持ってそうだよね。」
警戒色バリバリに主張している感じ。
「カクレクマノミ自体に毒はないね。イソギンチャクの方には毒があるけど。イソギンチャクの刺胞はマグネシウムの濃度が海水より低い場合に発射されるんだけど、クマノミは自分の身体から分泌される粘液に海水よりも濃いマグネシウムを混ぜて身体を覆ってるんだ。」
うまいことイソギンチャクと共生してるんだね。
「へえ…食べるならからっと唐揚げかな?」
小さいしからっと唐揚げにして骨ごとバリバリ食べる感じだよね?ちょっと甘辛い感じの味付けにして。
「何故食べることを考えたの。」
雪夜君に突っ込まれた。
「え?魚を見たら一応考えてみるよね?」
「オレは考えなかったけど。」
「俺も考えなかったな。」
「私も考えませんでした。」
ええっ!?あれ?あれ?私普通じゃない?
「ほら、結衣が真剣に食べること考えたりするからカクレクマノミ逃げちゃったよ?」
「ええ?まさかあ~。」
魚にそんな知能ないって。たまたま私の周囲にいなくなっちゃっただけだよ。私がカクレクマノミのいる方に手を伸ばすとすいっとカクレクマノミが逃げてった。
「ほら。」
「うわ~!!食べないからこっち来てっ。さびしいよ~!!」
私が必死に水槽に縋っていると雪夜君がくすくす笑った。やがてひょいっとカクレクマノミが近付いてきた。
「許してくれるって。」
「良かった~…」
私が喜ぶと美穂ちゃんがにこにこした。
「結衣さんって可愛いですよね。」
そ、そうかな?どのへんが?ちょっとよくわからないんだけど…
「カワイイでしょ?」
雪夜君が自慢げに言った。な、なんだか恥ずかしいぞ…
「次は結衣の好きなクラゲのコーナーだよ。」
雪夜君が手を引いてくれる。
「朝比奈さんはクラゲが好きなのか?」
「うん。身体が透けてない肉厚のやつじゃなくて、身体が透けてる透明のやつ!」
雪夜君が私の手を弄りまわしながら言った。
「クラゲは毒がねー…ここにはいないけどキネロックスっていうクラゲが凄い綺麗。代わりに地球上のクラゲの中で最も強い毒を持っていて、人間も死ぬ。」
それは恐ろしい…
「でもアカウミガメには毒が効かなくて食べられちゃうけど。」
天敵がいるのか…
うっとりクラゲを眺める。ふわふわ。キレー…
飽きることなく眺めていたら雪夜君に手を引かれた。
「結衣、次のコーナー行こう?」
フエヤッコダイの実物もちゃんと見たぞ。可愛かった~。雪夜君の好きなマンタも見たし。サメもいっぱい見た。
かなーり充実して水族館を満喫した。
ダブルデートとても楽しいです!