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ダブルデート③

「ちょっとショップ入ってみてもいいですか?ラッチュに行きたいです。」


美穂ちゃんがショッピングモールの前で言い始めた。


「いいよ。」


すぐに同意する。ラッチュ来るの冬以来。久しぶりかも。


「じゃあ、行くか。」


ショッピングモールの中に入り、ラッチュへ行った。色んな香りが混じり合った、何とも言えない香りがする。


「実は買い溜めしてた冬季限定のシャワージェリーが無くなっちゃったんですよ。新しい香りが欲しいです。」

「去年の冬季限定も良かったよね。私も使ってた。妹もお母さんも使うからすぐ無くなっちゃったけど。」


色も綺麗だし、ぷりゅりゅんとしてて気持ち良かったです。すぐ手から逃げちゃうから量が減ってくるとそこだけ大変だったけど。


「香りが堪りませんよねえ…夏に使うのは勿論良いんですけど、冬季限定のはまた別格で。今は何使ってます?」

「今はポードフルールのフレグランスボディシャンプー。香りは2種類あるけど、うちで使ってるのはローズの方。すごーく良い香りでしっとりする。」


良い香りで癒されるのだ。お風呂上がりちょっぴり肌に香りが残る感じも好き。ボトルのデザインも素敵だし。少量でも結構泡立つし。


「いいですねえ。私はどんなのにしようかな。」


美穂ちゃんが楽しげに石鹸を選ぶ。

雪夜君と正哉君は二人でおしゃべりしているようだ。彼女はどんな匂いがしてて欲しい?とか中々興味深い話題っぽいけど。お風呂上がりは石鹸の匂いがしていてほしいそうだ。私も雪夜君のお風呂上がりの匂い好きだな。水曜、私と典子さんがお夕食の準備をしている間に雪夜君は道場から帰ってきてお風呂に入る。夕食の時は湯上りなんだけど、結構、なんていうか、色っぽくて私はドキドキしてたりする。そうすると雪夜君が近付いてきて、からかわれたりするけど。

色んな世間を嗅ぎ比べているけど…コレちょっと良い香りかも。


「結衣さん、こっちとこっち、どっちが良い香りだと思います?」

「うーん…こっちかなあ。こっちのは甘すぎてちょっと苦手。洗ってみたら匂い薄まって、丁度良い匂いが付くのかもだけど。」


石鹸って大体薄まった匂いつくし。近寄るとシャンプーとかの匂いの方が強く感じるし。固形のままではちょっと匂い強いくらいの方が良いのかも?わかんないけど。私はお風呂の中でたっぷり楽しみたいから、周りに広がってちょうどいい匂いのを選んじゃう。


「結衣さんは良い香りがしますよね。香水ですか?」

「うん。雪夜君配合のまる秘レシピ。」

「えっ!七瀬君が作ったんですか!?」

「うん。マーキングなんだって。」


照れ照れしてしまう。


「凝ってますねえ…独占欲ですか。」

「えへへ。」


はにかむと美穂ちゃんにナデナデされた。


「なんか可愛がりたい気持ちがわかっちゃいます。」


えー?どんなや。私はママレード石鹸を購入した。シトラスの香りがとてもいい香り。美穂ちゃんは砂の配合されてるちょっと変わった石鹸を購入していた。いい匂いだったけど。


「これで正哉君もメロメロですな?」

「だといいんですけど…」


美穂ちゃんがはにかんだ。かわゆい。


「でもあんまり誘惑しすぎると食べられちゃいそうなので、程々にしておきたいです。」


うーん。そういう悩みがあるんだね。雪夜君は色っぽく迫ってきたりはするけどどこまで本気なのかよくわかんないや。考えが読みにくすぎる。


「正哉君って普段優しい?」

「大抵優しいですよ。私がはしゃいでたり凹んでたりすると、大きな手でナデナデしてくれます。今日はお団子作ってるので頭撫でてはこなかったですけれど。」


なんかその光景が目に見えるようだなあ…


「怒られたことある?」

「一度だけあります。」

「何したの?」


興味あります!彼氏が怒っちゃうこと!


「正哉君宛てのラブレター他の女の子から預かってきちゃって、渡したら『…ありがと。じゃあ、俺、この子と付き合うことにするから。』って言って物凄い怒ってて、何言っても冷たく流して相手してくれなくなりました。」


あ…もし雪夜君が同年代だったらその可能性もあったな。私もやってしまいそう。美穂ちゃんの失敗談を肝に銘じて絶対やらないようにしよう。


「謝った?」

「米つきバッタのように謝りました。でも『俺に他のコと付き合うように勧めてきたの美穂でしょ?』って言って全然相手にしてくれなくって…どんなに謝っても靡いてくれないまま2週間連れなくされて、『もういい!私も他の人と付き合う!』ってやけっぱちで言ったら『そんなの許すわけないし。』って言ってキスされました。その後お説教されましたけど。絶対やっちゃいけないんだって身に擦り込まれた感じです。」

「うは~…気ぃつけよ。」

「その方が良いです。やっぱりショックだったみたいですし。」


「雪夜君のこと紹介して!」と「雪夜君にこの手紙渡してくれない?」は私の中で最重要禁止ワードに指定された。

雪夜君に悲しい思いをさせるなんてとんでもない話だし、もし雪夜君に冷たい態度なんて取られたりしたら私はきっとすぐに心が折れるに違いない。想像しただけで嫌な汗が流れるよ。


「結衣さんは七瀬君に怒られたことありますか?」

「まだない。」

「それが一番ですよ。」


だよね。雪夜君と正哉君は二人で楽しそうにじゃれ合っていた。やんちゃな感じがしてちょっと可愛い。


「教室ではあんな感じ?」

「はい。2人ともすごい仲良しで、薄くてきれいな本を作り始める女子がいるくらいです。」

「?」

「ボーイズラブ同人誌のことです。」

「ええっ!?」


雪夜君と正哉君のラブラブな同人誌!?


「美穂ちゃん読んだことは…?」

「ないです。何となくそれも怒りそうな予感がするので。」


うーむ…ボーイズラブの同人誌とか読んだことないな。流石に自分の彼氏が出演してるとあっては、あまり良い気持ちはしないけど。3次元も美味しい貴腐人は自分の彼氏もネタとして美味しいのだろうか。貴腐人の心はわからない。里穂子ちゃんどうなんだろう?というか里穂子ちゃんは自分の趣味を倉持君にカミングアウトしてるのだろうか…


「結衣!」


雪夜君に呼ばれて振り返る。呼んでいるようなので美穂ちゃんと一緒に雪夜君たちの元へと向かう。雪夜君と正哉君の他にもう一人男の子が追加されてた。お友達かな?見たことない子だ。中学生には見えないけど。高校生くらいに見える。

近づくにつれ、そのもう一人の男の子の目が大きく見開かれる。


「麻衣ちゃん…」


男の子が小さく呟いた。麻衣と私って容姿は瓜二つだもんね。


「の、姉の朝比奈結衣です。麻衣のお友達?」


なんで麻衣のお友達が雪夜君たちと一緒にいるんだろう?疑問に思いつつにこやかに話しかけた。


「あ。え?あ。えっと…去年麻衣ちゃんと同じクラスだった葛西百介かさいももすけです。」


へー。麻衣のお友達のことはよく知らないけど、多分仲が良かったんだと思う。「麻衣ちゃん」って名前の方で呼んでるし。


「百介。こっち俺の彼女の美穂な。」

「後藤美穂です。よろしくお願いします。」


美穂ちゃんもにこやかに挨拶している。


「よ、よろしく。」


葛西君は少しうろたえ気味。やっぱり美穂ちゃんみたいな可愛い子の前に出たら緊張しちゃうよね。


「こっちオレの彼女の結衣ね。」

「よろしく。葛西君。」


妹ともども仲良くしてやってください。


「よろしく…」


雪夜君が葛西君の背中をばしばし叩いた。


「元気出せって。」


葛西君なんか悲しいことでもあったのかな?雪夜君が元気づけている。


「…うん。雪夜たちはデートどこに行ったの?」

「水族館。」

「その帰りに魚を食べるとか…鬼畜の所業だよ。」


葛西君が唖然としている。


「ですよねえ。」


美穂ちゃんが同意した。


「なんだよ。旨かったろ?」

「美味しかったから悔しくて…」


美穂ちゃんが本当に悔しそうにしょんぼりするので和んでしまった。美穂ちゃんって感受性豊かな子なんだな。


「結衣さんも悔しかったですか?」

「おいしかった。」


魚を見た後に魚を食べることには口で言うほど抵抗はなかった。すっごい美味しかったし。あのお店また行って、今度は違うメニューも食べてみたいなあ…今度は並盛で我慢する…多分、きっと、おそらく、メイビー。


「結衣は水族館にいるときから魚を食べる方の目線で見てたからね。」


雪夜君がからかうように言う。むぅ!


「雪夜君のイジワル…」


麻衣の友達の前でわざわざそんなこと言わなくっても良いじゃない!絶対食いしん坊な姉だと思われたよ!もっとこう「麻衣ちゃんのお姉さんってクールで素敵だね」って思われたいのに!

ぷんすかしてたら雪夜君にほっぺをつつかれた。


「そんな結衣も好きだよ。」


うーうー…そんなこと言ったって誤魔化されないんだから!別に嬉しくなんて…頑張って厳しい顔をしようと思ってるのに上手く表情を作れない。だって雪夜君が私のことを好きだって…うう…やっぱり嬉しい。頬が緩んでしまう。


「くっ。イケメンなんて滅びれば良いのに…!」


葛西君が嘆いた。


「百介もどっちかって言うとイケメン寄りだと思うけど?」


うんうん。葛西君も中々格好良い。目鼻立ちの整ったインテリ系の顔立ちだけど、冷たい感じはしなくて、すごく優しそう。柔和な感じの目つきをしている。雪夜君みたいにセットした髪型じゃなくて、ナチュラルにさらっとした髪をしている。メガネはツーポだ。身長も175~6cmくらいあって、身体つきもスラッとしているのにガリガリではない。なんか変な服着ていることを除けば美男子だ。


「お世辞は良いよ…」

「いやいや、お世辞じゃないし。顔は良いと思うよ?服のセンスはいただけないけど。」

「うん。よくダサいって言われる。」


うん。言っちゃ悪いけど、私もちょっとダサいと思っている。言わないけど。


「改善しろよ。」

「どんな服買ったらいいか全然わかんないんだよ…」


葛西君が困った顔をした。お洒落とか苦手なんだね。雪夜君と正哉君が葛西君の服をじろじろ観察している。


「コーディネートのセンスもないけど、パーツもちょっとな。なんなの?その変な柄のロンT。」


正哉君が指摘する。

私もそれ変だと思った。黒いロンTなんだけど、胸の部分が乳パットのように二つの白い円形の模様が浮かんでて、さらに乳パットの上半分にはモサモサした白いファーみたいなのが付いてるの!むしろ「どこでそんなの売ってるの?」って興味が湧いちゃうレベルでヘン!葛西君美男子だけど、美男子補正を打ち消すレベルの奇抜さだよ。


「てゆーか、黒は使いやすいアイテムだけど、黒のTシャツに黒のカーディガンに黒のパンツって…今日誰かの葬儀?」


雪夜君も突っ込む。そうなんだよねえ。見事に全身が黒い。黒を使うとしたら普通、どこか1パーツだけにすると思うんだけど、どういうコンセプトでコーディネートしたんだろう?


「靴はそろそろ買い換えた方が良いぞ?先端変なシミが出来てるし、踵ボロボロ。」


靴は濃いグレーのスニーカーなんだけど先端部分が黒ずんでいる。かかとも正哉君が指摘した通りボロボロだ。


「鞄もどうなの?そんなリュック背負って。登山帰り?」


なんて言うかリュックはリュックでも若い子が持ってるようなお洒落なリュックじゃなくて、おじさんが子供とハイキングに行く時レジャーシートやお弁当を詰めるような感じのリュックなんだよね。そもそも全体のコーディネートからしたら、荷物がいっぱいあるならトートバックとか持てばいいのに…と思ってしまう。


「うう…そんなこと言ったって…ちょっと個性的なアイテムの方がお洒落かなって思ったんだもん。明るい色を着るのは何となく気後れしちゃうし、スニーカーはコンビニでバイトしてると知らず知らずの間にフライヤーの油シミが…鞄ってあんまり持ってないし、どういうの買って良いかわかんない。学校じゃあ、みんな制服に通学バッグだし。」

「自信がないなら個性的なアイテムを取りこむのは止めた方が良い。淡い色を少しは取りこんだ方が良いとは思うけど、淡い色と濃い色両方で全体のバランスを取るんだよ。コンビニでバイトしてるって言うけど、今バイト帰りなの?」


雪夜君が助言している。葛西君、リュック背負ってコンビニ行ってるの?中々珍しいスタッフだと思うよ。


「違うけど…」


あ。違った。じゃあなんでバイト用の靴履いてるんだろう?


「バイト用の靴と普段の靴は分けておいた方が良いよ。お気に入りの靴が汚れちゃったら悲しいでしょ?鞄は街ゆく人をちゃんと見ろ。色んな鞄持ってるでしょ?自分と同い年ぐらいの男の子がよく持ってるタイプの鞄が平均。別に百介にお洒落になれとか言ってない。普通になれ。服が普通なら百介は美形ブーストかかるから大丈夫だ。」

「うーん…」


多分その『普通』って言うのがわからないんだろうなあ…葛西君は難しい顔をしている。


「俺、百介のクローゼットとか滅茶苦茶興味ある。」

「オレも気になる。」


私もちょっと気になるけど、男の子のクローゼット気軽に「見たいな…」とは言いかねる。下着とかも入ってるだろうし。


「じゃあ、見に来る?」

「行く行く。百介、連絡先交換しようぜ?」

「オレとも。」


なんかすごーく仲良くなってる。男の子同士でワイワイやってるのも何となく微笑ましいな。雪夜君と正哉君は、休日、葛西君のクローゼットを整理しに行くことになったらしい。

葛西君と別れて再びぶらぶら。


「葛西君の服何とかするの?」


敦士君(?)のことは放置らしいけど、白兎君のことも調教していたらしいし、雪夜君って結構面倒見が良いよね。自分の気に入った人に対しては。


「うん。百介は少し磨けばかなり光ると思うし。」

「彼女さんとかと一緒に服選んだりしないのかな?」

「百介ハートブレイク中だから。」

「そうなんだ?」


失恋したのか。可哀想に…美男子だし優しそうだけど、恋は上手くいかないもんなんだね。世の中厳しいです。ピシっと制服とか着こなしてたらモテそうだよなあ…。きっとすぐにいい出会いがあると思う!


「雪夜。そろそろお開きにしようぜ。」


正哉君が言った。私はまだ大丈夫だけど、あんまり夜遅くまで中学生を引っ張り回すのも良くないよね。


「そうだな。正哉、後藤、またな。」

「バイバイ。美穂ちゃん、正哉君。気を付けて帰ってね。今日は楽しかった。ありがとう。」

「こちらこそありがとうございます。朝比奈さんと七瀬君もお気をつけて。」


最後まで美穂ちゃんは礼儀正しいなあ…


「またな。」


正哉君と美穂ちゃんと別れた。いつも通り雪夜君が家まで送ってくれる。


「結衣、ダブルデート楽しかった?」

「うん!ありがとう。雪夜君!」


すっごく楽しかった!美穂ちゃんも正哉君もいい子たちだったし、友達と喋る雪夜君が見られてすごい新鮮だった。私はにこにこだ。

雪夜君がナデナデしてくれた。


結衣ちゃんサイドお終いです。

明日から雪夜君サイドが始まります。

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