綾ちゃんの初カレ①
番外編その①です。気が向いた時にだらだら書き足してく感じで。「綾ちゃんの初カレ」は3話で終了します。一話目では雪夜君まだ出てきません。
高3になった!今年も里穂子ちゃんとは同じクラス。二宗君や林田君や倉持君とは別クラスだけど。代わりに桃花ちゃんと長谷川さんと同じクラスになった。やっぱり1年の頃のクラスが一番楽しかった気がする。でも桃花ちゃんとはますます仲が良くなっているので同じクラスなのは嬉しいな。
相変わらず水曜日は七瀬家へ花嫁修業をしに行っている。雪夜君が好きな実家の味もかなり覚えたぞっ。物によっては私が作る新しい味付けの方が好きみたいだけど。
私と里穂子ちゃんと桃花ちゃんと長谷川さんでおしゃべり。
「朝比奈さんの恋人って桃花の弟の雪夜君なんでしょう?雪夜君優しい?桃花んち行く時たまに見るけど、かなりイケメンになってきてるわよね。年の割に背も高いし。」
長谷川さんが話題を振ってきた。そうなの。最近の雪夜君、以前にも増して格好良いの。ちょっと男らしくなってて…それなのに時折やっぱりあざといくらい可愛くて…あのギャップはずるい。私はメロメロです。私が「雪夜君は可愛い!」って言うと月絵さんは「騙されちゃダメ。あれは計算よ。」なーんて言うけど、可愛いものは可愛いんだから仕方ない。
「…優しいです。すごく。」
惚気るのが恥ずかしくて照れてしまった。雪夜君は性格も態度も優しいし、ナデナデもハグもキスも優しくって私は大好きだ。雪夜君みたいな素敵な人が彼氏で浮かれてしまう。
「やだあ。照れてる~。」
「ユキったら、結衣ちゃんにばっかり甘々なんだよねっ。少しは家族にも優しく接してほしいものだよ。ほんと家では生意気で。」
桃花ちゃんはそう言うけど、私は優しい雪夜君しか見たことがないので『生意気な雪夜君』が上手く想像できなかったりする。どんな感じなんだろう?雪夜君に聞いても笑って教えてくれないし。あゆみさんが言ってた『クールな雪夜君』も実は未だに想像できていない。雪夜君がお友達とおしゃべりする所とか見てみたいなあ…普段どんな態度で接してるんだろう…。
「長谷川さんは良い人出来ましたか?」
「もういい加減私のことも綾って呼んでくれない?」
「…綾ちゃん。」
「ヨイヨイ。私も結衣と里穂子って呼ぶよ?私にはまだ運命の出会いが…」
林田君みたいなことを言っている。
「林田君みたいなことを言ってると婚期逃すよ?」
ずばっと里穂子ちゃんが切りつけた。里穂子ちゃんってホントどっしり地雷踏んだりするの好きだよね。自分は倉持君がいるからって…
「うあああん!私だって好きで一人でいるわけじゃないいいいい!!ご、合コンとか付き合ってくれる?従兄あたりに何とか頼み込んでみるから!従兄社会人だから、相手は社会人になっちゃうけど。」
「聡君が怒るから無理。」
聡君とは倉持君のことだ。倉持聡ね。因みに林田君の名前は林田努だ。里穂子ちゃんは倉持君とラブラブである。夏くらいまでにはサッカー部引退しちゃうからって、サッカーの試合によく応援に行っている。最近はお手製のお弁当をつくってあげたいから…とレシピサイトなんかを見ながら頑張ってるみたい。器用な性質ではないけれどマンガのようなベタな失敗はしない。普通の上達速度だ。
綾ちゃんが里穂子ちゃんに断られ、縋るような目で私を見てきた。
「私も雪夜君に嫌われたらやだから行かない。」
雪夜君も怒ったりするのかな?私はまだ雪夜君に本気で怒られたことはないけど……雪夜君は、なんて言うか、笑顔で静かに怒りそう……雪夜君を怒らせるのはなんだか怖い気がする。ぶるっと身震いした。
「桃花ぁ~!!」
綾ちゃんが桃花ちゃんに縋った。
「え、えーと…」
桃花ちゃんはへどもどしている。
「雨竜先輩怒るんじゃない?」
一応言ってみる。
「わ、私雨竜先輩とはそんなんじゃ…」
雨竜先輩は今年△△大学へ入学した。一応桃花ちゃんの志望校もそこだ。
誕生日に指輪までプレゼントしたというのに、雨竜先輩はまだもたもたしているようだ。やっぱり桃花ちゃんはガード堅いな。そのガードの堅さにある根底のものを知っているから、早くコクっちゃえとか無責任なことは言えない。雪夜君は優しく私の心を解いてくれたけど、はたして雨竜先輩に同じことができるのだろうか…そこまでは責任持てない。ごめんね。桃花ちゃん、ガンバ。
「じゃあ行って来れば?」
里穂子ちゃんがあっけらかんと言った。
「雨竜先輩とそういう関係じゃないんでしょう?ならもっと良い人見つかるかもしれないし、合コン行って来れば?」
里穂子ちゃん…崖の上に立っている人の背中を押すのは感心しないよ。
「行こっ!心の友よ~!!」
綾ちゃんは桃花ちゃんと合コン行く気満々なようだ。桃花ちゃんは何と言っていいかわからずおろおろしている。
「桃花ちゃん。嫌ならはっきり嫌って言わなきゃとんでもないことになっちゃうよ?」
老婆心で忠告しておく。雨竜先輩だって流石に嫌な気持ちになると思う。こんな詰まんないことで嫌われちゃったら取り返しがつかないよ?
「綾ちゃん…ごめん。やっぱり私…」
「桃花まで~!!私も優しくて格好良い彼氏が欲しいっ!」
綾ちゃんが嘆いた。綾ちゃんもねー…美人なんだけど。ショートヘアにきりっとした目鼻立ちで、モデルのように背が高くてすらっとしてて…それでいてそこはかとなく女性らしい部分もあって。モテると思うんだよ?ただガンガン前面に出てくる積極的な姿勢を好ましいと思うかでしゃばりと思うかは人によってくると思う。私は結構嫌いじゃなんだけど。かなりムードメーカーだし。
「長谷川さん、合コン、私たちと行かない?丁度大学生の友達の伝手で人が集められそうなんだけど、女の子側が一人足りなくて。」
声をかけてきたのはクラスのギャルグループ。化粧バッチリ、スカート超短い、イケイケ(死語)な感じの女子高生グループだ。3人いる。私たちの話を聞いていたようだ。
「えーと…山根さんたちと?どこの大学生?」
「△×大学の経済学部の子。」
△×大学は可も不可もない感じの大学だ。そんなに悪い印象はない。
「いつ?」
「今週の日曜。来る?」
綾ちゃんはちょっと迷ったが頷いた。山根さんらと打ち合わせに行った。
「綾ちゃんにも素敵な彼氏ができるといいな。」
桃花ちゃんはにこにこしてる。正直バリバリギャルってる山根さんの伝手じゃあんまり期待できない気がする……って思うのは失礼かな?
結衣ちゃんの日常のお話。