~激励された~
かけそうだったのでもう一話……
「勝負あり!…これで、全員3回戦ったな。みんな、お疲れ様、また呼ばれるまでゆっくり休んでいてくれ。」
「「「「はい、ありがとうございました」」」」
ととと、とルナが駆け寄ってくる。
「お疲れ様、凄かったよ。」
「クレスのおかげだよ、ありがとう!!」
結論から言うと、ルナは全勝した。
1回戦目は名も知れぬモブ君が相手だったので特に危ないところもなく勝利。
2回戦目、ガキ三人衆の一人、グレウスというらしい凄く短い茶髪の男の子だ。彼は「斧術A」というものを持っているらしく、中々に強かった。
が、油断したのか、最後の一撃とばかりに振り下ろされた攻撃をルナが強化魔法を成功させて紙一重で躱し、隙だらけの首筋に剣を突きつけ勝利。
3戦目もガキの一人ヒロシカというメガネをかけた黒髪痩せ気味のガキが相手だった。
彼も「槍術A+」とか見た目に合わないスキルを持っていたがルナの強化魔法の前には歯が立たず撃沈だった。
「これで勝ったと思うなよ!!」
「こっちにはまだグレイ君がいるんだからな!!」
「あー、はいはい。わかったわかった。ちょっと黙っとれ。」
負けたのにうるさい二人を適当に相手してルナと雑談を楽しむとしよう。
「それにしても凄いね、強化魔法。」
「でもまだ完璧には制御出来なかったわ…完璧に制御出来れば肉体への負担はほとんどなくなるもの。」
そう悔しがる彼女の腕は少し痙攣していた。
向上心が高いな。いい事だ。
俺はそっと彼女の両手を包み、諭すように
「誰でも最初から完璧に出来るなんてないよ。今回は不完全でもちゃんと発動させることが出来た。素晴らしい進歩じゃないか。魔力制御はこれからゆっくりでも大丈夫だよ。」
「~~ぁぅぁぅ…。」
「…ルナ?」
「ひゃい!!だだ、大丈夫!!頑張る!!頑張るからぁ~!!」
「うおっ!?」
真っ赤になって暴れるルナ。
びっくりして手を離してしまった。
「あっ…」と声が聞こえた気がしたが多分気のせいだろう。
「大丈夫?」
「だ、大丈夫…恥ずかしい所をお見せしました……。」
真っ赤になって反省するルナ。かわいい。
そしてここで俺の方を引っぱる輩が…
「お…?」
「………」
そして胸ぐらを掴んで
「なっ!」
「おお?」ニヤニヤ
「っ!!…ふんっ!」
「なんだ…何もしないのか…。」
いい判断だと思うけどね。青春じゃのう。。。
ガキ大将とでもいっておくか、彼はお供を連れて控え室の方へ去っていった。
「なによあいつ!感じ悪いわね…いつものことだけど。」
ルナは怒るとツンデレっぽい喋り方になるのかな?
「ま、彼のプライドが傷つかない程度に勝つさ。」
「それは疑いようがないんだけど…」
うーん、と何かを考え込んでいるルナ。
すると
「にぃーたまー!!」
と、さ行がまだ言えていないが確かにこれは兄を呼ぶ妹の声…!!
「えっ?」
「その声は…ミント!?」
ふと上を見上げると父母妹が観客席からこちらを見ていた。
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「は、はじめまして!!クレス…君のお友達をさせて頂いております!!ル、ルナです!!!!」
控え室の出入口に面会室というものがあったためそこで家族+ルナで時間まで雑談でもしようとやってきた。
「ルナ、緊張しすぎじゃない…??」
「だだ、だって!!?ストレイ様と言えばアームストロング王国の黒十字騎士団の団長だよ!??黒十字騎士団は国の闇を葬る団体って言われてるんだけど団長のストレイ様は王国で一番強い騎士なんだよ!!?!??!」
「は!?なにそれ!聞いてないんですけど!父上!!?」
ルナがとんでもない爆弾を投下してきた。
「あのストレイ様に奥様がいるってことも驚きなのにお子さんが二人もいるなんて…しかも一人は同年代…。」
「あはは…隠すつもりは無かったんだけどね…。」
「だったら剣術くらい教えてくれても良かったんじゃ…。」
「いやぁ、だって俺の剣術は他の格闘術とかも混ざって少し変だからさぁ。」
「僕も十分変な戦い方してたじゃないですかあ!!」
「あ、自覚あったんだ。でもまあ、俺が教えるよりも先に戦い方見つけちゃってたし…。」
「それはまぁ、そうなんですけどね…?」
「それにしても、最初試験を受けるなんて聞いた時はびっくりしたよ」
「そういえば、こっちに来てから決めたのでそちらには伝わってないはずなんですが、何故?」
ちょっとした親子喧嘩のようなものも済んで、俺は親父たちがどうしてここにいるのかが気になったので聞いてみた。
「仕事中に、ね?」
「ね?じゃわかりませんよ!もっと詳しく!」
「いやなに、俺に似ている子供が貴族らしいのにわざわざ試験を受けるって同僚が報告してくれてね。」
「僕と父上って似てるんですか…?個人的には母上似のほうが嬉しいんですけど…。」
「ぐふぅ!!これが反抗期か…。早いな…。」
あ、ちょっとダメージ受けてる。
「冗談です、父上もかっこいいのでどちらに似ていても嬉しいです。」
「クレス…。」
なんか感動している親父ィ…。
と、ズボンを引っ張られるぞ?と下を見たら天使が
「おにーたま、だっこ!」
「いいよ。ほれ!」
「わー!たかーい!!」
「まあ、ミントったら…よかったわねえ。」
「うん!!」
ああ、ミントはかわいいなぁ…。
「妹さん、かわいいねぇ。」
「だろぉ?自慢の妹だよ。」
「まったく、クレスったら…うふふ。」
俺達は暫くだらしのない笑みで雑談に花を咲かせた。
別れ際に、
「そういえばクレス、お前が試験受けるって聞いたから貴族用入学の話は無しにしといたぞ、お金勿体ないし。」
「え!?僕対人戦とか初めてなのに!?絶対負けますよ!!」
「俺の息子だろ?余裕だろ。大丈夫、見ててやるからよ!」
「見るだけなら誰でも出来ますよぉ!!」
「クレス、頑張ってね。」
「おにーたま、はーいとー!!」
「今なら神だって殺せるかもしれない。」
「なんて調子のいいことを…。」
「それでこそ俺の息子だ!じゃあな!全勝しろよ!」
「余裕ですよ。軽く捻ってやります。」
「「ハハハハハ!!!」」
なんていう茶番があったりもした。
ーーーーーーーーーーー
試験会場に着いた。
既に全員集合しているみたいだ。
「遅れましたか?」
「いや、まだ3分残っているよ。」
「よかったです。」
試験官さんに確認をしてギリギリセーフだったと安堵する。
「クレス、勝ちなさいよ?」
「もちろん。さっきも言ったろ?今なら誰にも負ける気がしないって」
「そんなことは言ってなかった気がするけどね…」
なんて冗談でほどよく緊張をほぐしていると、
「おい、本当に来てやがるぞ。」
「まじかよ!恥知らずって奴か!?」
「「ギャハハハ!!」」
ガキ三人衆が現れた。
雑魚二人はスルーするとして、大将と向かい合う。
「名乗るのが遅れたね。俺の名前はクレス。クレス=ハーレィだ。」
「ハーレィ…?どこかで聞いたような…。まあいい、俺はグレイ。グレイ=アルスターだ。」
緊張で冷静になれているのか、後ろの二人よりは大人しいグレイ。
「よろしく、いい戦いにしようね。」
「ふんっ、勝つのは俺だがな。」
「いい気合いだ。」
腕にそれほど自信があるのか、ちょっと不敵に笑っている。
だが連む人間を間違えちゃだめだよな。
「グレイ君はスキル「剣豪A」を持ってる天才騎士って言われているんだぜ!!」
「今泣いて謝れば許してあげないこともないぞ!!」
「「ギャハハハハ」」
こうやって身内の手の内を勝手にばらす。
流石に我慢の限界だ。
「お前ら」
「な、なんだよ!やろうってのか!!」
「お前くらいだったら俺達でも勝てるっつの!!」
「あまり強い言葉を使うな……。」
「「ギャハハハハ」」
「弱く見えるぞ。」
「「はっ……!?」」
「あー、一応教えておくが、クレスは私よりも全然強いぞ?もちろん、強化魔法を使った私よりも、だ。」
それはー…買いかぶりすぎなんじゃあ…?
「ふ、ふん!!嘘をつくな!こんな冴えない奴が強いわけないだろ!!」
と、ヒロシカが言う。
究極的おまいう。
不意に、今まで黙っていたグレイが口を開く。
「…確かに、弱く見えるな。」
「え!?」
「そ、そんなあ…」
「君達は下を見過ぎている。上を見た方が人間的にも成長しやすいと思うよ。」
「…フッ、そうだな。忠告感謝する。お前ら、もうすぐ時間だ。下がれ。」
「「は、はい…」」
グレイにまで弱いと言われ落ち込みながら下がっていく二人。
「クレス…絶対勝ってね。」
「父上達も見てるしね、無様な戦いはするつもりないよ。じゃあ、行ってくる。」
「うん。気をつけて。」
俺の勝利を信じて下がっていくルナ。
さてと、勝つための短い短い作戦会議と行こうじゃないか?
怒られないかなぁ…とか考えちゃう。
好きでやってるので開き直ってやるしかないんですよね~笑笑