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はじめに
この小説は,佐竹四郎という男が山本カンナというグラビアアイドルをストーキングしようと企て,結局未遂に終わる顛末と,その前後に彼の周囲で起こったできごとを綴ったものである。いや,正確には「未遂」ではない。佐竹四郎は彼の友人である川田昇との酒の席で,戯れから山本カンナをストーキングするという妄想を語り,それでは今から二人でストーキングに及ぼうではないかということで意見が一致し店を後にしたが,途中立ち寄ったコンビニで肉まんを購入し歩きながら食べているうちに二人とも忘れてしまったのである。つまり,佐竹四郎はストーキングするという妄想を抱いたにすぎない。