アルド家の決断。
コット・ランダー国に大変な知らせが来た。
この国から千キロ離れた国。サンダーラ・マシャー国の若き王、エバンル・マッシャー・五世の妃を娶るにあたっての各国の皇女並びに大貴族の姫などを募っている。
このコット・ランダー国も例外ではなかった。
私はある日、国王に呼び出された。
勿論、私だけではない。もう1人の重要家臣である、ドミトル・カッタードも一緒だ。
何か知らせでもあるのかと思い、城いで向いた。
「よく来てくれた。急な呼び出しをして悪い。実は私1人では到底、考えられぬ事態が起こった。それで、そなた達に来てもらったわけだ。」
「陛下、どの様なことで御座いますか?我々に何かあるのですか。」
「・・・・・そなた達はサンダーラ・マシャー国を知っておるな。その若きエバルン・マシャー五世を。」
「はい。存知上げております。その王が何か?」
「・・・・大変、困ったことになった!その王が近々、妃を娶るというのだ。そして、国全土の皇女並び大貴族の娘を集めている。言ってみれば妃選びなのだ。だが、コット・ランダーには向こうの基準に達している姫がいない。そこで、そなた達の知っている姫などが居らぬかと思ったな。誰か居るか?」
「陛下。妃選びの基準とはどのようなものですか?」
「それは、まず、年齢が二十歳以下。美貌はそうなんだが品格、才女でなければならない。そして、家柄も必要。言っていたら限がないわ。」
「エバンス。そなたの身内で誰か居らぬか?」
「陛下。私どもの娘並び従妹などは年齢が行き過ぎております。」
「では、アルドは?・・・・そういえばアルドの末娘、フォローレンスが目覚めたとか聞いたぞ。たしか年齢は17歳。そして、神の御加護を受けたそうじゃないか!それに私の従妹カトレーに似ておる。如何じゃ?」
「・・・・滅相も御座いません!フローレンスは目覚めたと言っても今、記憶が無いので御座います。その記憶の無い娘をサンターラに行かせるのは、ちょっと無理かと思います。」
「そうか。フローレンスなら良いと思ったのだが・・・アルド、そこを何とかならぬのか?」
「・・・・・・娘に聞きませんと何とも言えません。そして、ソウとカルにも。彼達のほうが娘の行く末を考えているようですから。」
「そうか。では、即刻、帰って彼等に話せ!アルド、良い返事を待っている。だが、考えてみよ。ドルミト五世の妃にフォローレンスが選ばれたとして、この国にも利益を生む。そして、国民の暮らしも豊かになるぞ。」
「はい。・・・・・・失礼致します。」
「アルド殿。王から大事な事を頼まれましたな。私としては羨ましい限りです。ウチはみな二十歳を過ぎたものばかりです。それはそうと、あなたの末姫は神こ御加護を受けてらっしゃるとかで。」
「そうなのですが、末娘はここ1ヶ月まえ程にアノ病から治りました。本当にもう死ぬんではないかと心配したのもです。だが、娘には記憶が無い。父である私や妻、兄弟までそして屋敷の者たちまでの事も分からないのです。勿論、ここが何処かも・・・・」
「難儀なことですな。アルド殿。でも、記憶など直ぐに治りますよ。一時的なものです。」
「そうだと良いのだが・・・・・」
そして、私は屋敷に戻り、ソウ、カルを呼んで今日の城での事を話した。
本当のところ、フルは何所へも行かせたくはない。
だが、そんなわけにも行かぬ。
「ソウ、カル。お前達はどの様に思う?」
「父上、フルは未だ、記憶が戻ってないのですよ!そのフルをサンダーラに行かせるなんて、私は反対です。カル、お前はどうだ?」
「・・・・そりゃ、ボクだって大反対です。何故、フルなのですか?年頃の姫達は大勢います!」
「それが、居らんのだ!だから困っているではないか!フルの記憶は相変わらず、未だ戻っていないし。どうしたら良いのだ。陛下はフルに期待をしておられる。もし、フルに話して断られても困る。我が国の経済のためにもフルに頼むしかない。」
「父上。妃の条件はどのようなものなのですか?」
「妃の条件とは、二十歳以下。容姿は勿論の事、品格と才女を兼ねそろえている事。それに、皇女または大貴族の娘に限る。という事だ。」
「・・・・・・フルに当てはまる。容姿と年齢だけは。でも、フルに品格と才女には当てはまりますか?フルは結構、ああ見えて大雑把なところがあります。才女と言ってもね~~~。兄上はどうおもいますか?」
「そうだな。品格は今からでも教えても大丈夫だろう。だが、記憶がないのがな・・・・才女・・・これも、つい先ほど目覚めたばかりなのに、それにこの国の事も知らないのではないのか?記憶さえ戻れば全て上手くいくのに今回はフルをサンダーラに行かせる事はこの国が笑われますよ。父上」
「・・・・・・だが、陛下はフルが行くものだと決めておられる。私でも断れない。」
「父上、兄上。良い考えがあります。妃候補には各国の美々麗しい姫君が来られます。その中でフルは見てのとおりまだ、何も知らない子供。その中でサンダーラ国の王が選ばれるでしょうか?ボクなら美人で何所かの裕福な国の皇女を妃に選びます。そうでしょう!父上、兄上」
「・・・・・そうだな。お前の言う事は一理ある。」
「それに、もう国王はフルに決めているのだから、断ったりするとフィルド家の家紋に傷がつくでしょう。一応、フルを行かせてみればどうですか?父上は王にもこの家にも顔が立ちます。」
「・・・・そうだな!カルの言う通りだ。ソウはどう思うのだ?」
「・・・・・私もカルの意見に賛同します。でも、もしフルがイヤだと言えばカル、どうするつもりなんだ?」
「兄上。大丈夫です。フルは必ずサンダーラに行きます。でも、このサンダーラ行きは父上からお話し下さい。」
「エッ!私から言うのか!!」
「父上。この家の家長です。」
「ソウ、お前から話してくれ。私はフルの顔を見たら・・・言えない。」
「・・・・・父上。では私から話しましょう。」
本当に、フルが目覚めてくれたのは良い。本当に嬉しいことだ。
だが、何故、この時期になってサンダーラ国の妃問題が出るんだ?
フル・・・・お前は神の御加護を受けたはずなのに、神に見放されたように思う。
そのように思うのは父だけなのか!!
本当に、ウチの王はどうしようもない!!
父上の性格では断れないのが分かっていいるくせに。
俺がフルに話すなんて気が重い。本当は家長である父上が話さなければいけない事。
俺はこの家の悪役のような気かしてならない。
フル。悪い。この場合は仕方なかったんだ!
だから、ボクが提案したんだ。
でも、フル、大丈夫だからね。
妃候補ともなれば各国の美人さんが大勢、集まるからサンダーラ王の目には留まらないなず。
王妃が決まったら、直ぐに帰ってくれば良いんだから。
そして、国王とフィルド家での会議も終わって、結果的にはフローレンスはサンダーラ国に行く事になった。
そして、何も知らないフローレンスを家族の者が見て、泣いたり悲しんだり。
でも、フローレンスの心は誰にも分からない。