学年練習
三題噺もどき―はっぴゃくななじゅうさん。
ジワリと汗をかく。
まだ夏本番でもないのに、どうしてこんなに暑いのだろう。
帽子をかぶっていても、耐えきれそうにない日差しのせいで、頭が痛くなりそうだ。
体育服は当たり前に半袖だから、じわりと痛みがあるように感じる。気のせいかもしれないけど。
「……」
学校の校庭に、3年生が集められていた。
全員体育服を見につけ、帽子をかぶり、それぞれのクラスごとに固まり、男女別身長順に並んでいる。
私は低い方なので、前から4番目くらいにいる。名簿順なら後ろなんだけどな。
「……」
学年ひとつが校庭に集まるとこんな感じなのかと、毎回思う。これが全校生徒になるとさらに違う風景が見える。
定期的に学年集会や全校集会は行われているけれど、それとはまた違う風に見えるのだから不思議だ。広さが違うから当たり前か。
「……」
なぜわざわざ校庭に体育服で集められているかと言うと。
それはまぁ、今週末に行われる体育祭の練習をするためであって。
決して、生徒を夏の暑さの危険にさらすためではない。
「……」
ジワジワと吹き出す汗を不快に重いながら、目の前で話す教師の話を聞き流す。
もう3年もやっているのだから、大体の流れは分かっているので、もうそんなに言わなくてもいいと思うのだけど。
まぁ、色々と変更する可能性もあるんだろう。
「……」
まだ始まったばかりなんだけど、もう既にこんなに汗をかいている。
私は体質なのか、比較的汗をかかない方なんだけど、それでも鬱陶しいと思う程度には汗をかいているのだから、他の人はもっと大変だろう。
「……、」
適当に視線を動かしてみれば、皆が服の襟をバサバサとしてみたり、帽子を取って仰いでみたりと動いている。以前だったら、それに対しての注意もあっただろうが、さすがに教師も暑さを理解しているのか何も言わず、淡々と説明をしている。
まぁ、言われたところで実際に動いてみないといけない所ではあるが。
「……」
いつもなら横を見ればあの子の横顔が見えるのに、今日は見えない。残念だ。
あの子は身長高いからなぁ後ろの方に居るんだろう。別に身長が高い方がよかったと言う願望はないのだけど、こういう時ばかりはこの低い体が悲しく思える。
「……ぁつ」
思わず漏れる文句も、全員が思っている事だろう。
腰のあたりに挟んで置いたタオルを手に取る、軽く汗を拭く。
今年から練習の時にタオルを持っていてもいいと言われたので、こうして持ち歩くようにしている。水筒は貼られているテントの下にクラスごとに纏められている。
「……」
母がどこかで買ってきたカピバラの模様が入っているハンドタオルだ。
特に気に入っているわけでもないのだが、買ってもらったからには使わないといけないと思って、こうして使用している。全くもって母の趣味はよくわからない。
「……」
しかしもうそんなことはどうでもいいくらいにあまりにも暑い。
まだ5月のはずなんだが、どうしてこんなに暑いんだろう。
風でも吹いていればましだったんだけど、全くの無風。吹いていてもそれはぬるい風で、涼しさというモノはない。水を浴びたくなってくる。
「……」
私のクラスはこの全体練習が終わった後も体育があるのだ。
訳が分からないし意味が分からないが、そういう時間割になっていた。
どうしてだろう……洗濯が増えるだろうからと体育服の替えを持ってこなかったのはよくなかったな。こんなに暑いと思っていなかったと言うか、こんなに汗をかくと思っていなかった。制汗シートは持ってきたから、それだけが救いだな。
「……」
どうやら、ようやく説明が終わったらしい。
とりあえずは入場の練習をするようだ。順番に入って校庭を回って、3年生は中心に並ぶらしい。ここにじっとしているよりは動いた方が気持ち的には幾分かマシだ。
「……」
立ち上がるように促され、ざりざりという砂の音と、ほんの少しの砂埃を立ち上げながら、全員が動きだす。
軽く砂を払い、端のクラスから入場門へと移動していく。
こう、こういう実際の練習をしていくと、体育祭が近づいてくる感じがひしひしとしてくる。嬉しくもなんともないが。
「……」
とりあえずは、今日の子の練習を無事に終えることだな。
ホントに暑い……。
お題:洗濯・帽子・カピバラ




