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攻撃力0の【救済者】〜魔物を殺さず『元の姿』に戻してたら、いつの間にか伝説級メンバーのリーダーになっていた件〜  作者: おとしごと


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008話 初報酬とお誘い

□008話


 その後、ニーナはウサギを愛で、僕が必死に薬草を採取するという形で薬草採取の依頼を進めた。


(パーティとは一体何なんだろう……)


 何度もこの言葉が頭をよぎったが、手を止めていては依頼が終わらなくなってしまう。今晩の宿代を稼ぐためにも必死で作業を進めるほかなかった。


 薬草採取という点では、ナビさんが手伝いをしてくれたので、他の冒険者より効率的に薬草を集められたはずだ。


 カゴいっぱいの薬草を採取し終わった僕たちは、ナレフの町へ帰ることにした。


 僕が薬草の入ったカゴを背に持ち、ニーナがウサギを抱え、ナレフの南門から町へと戻った。


 入り口で門兵の一人が声をかけてきた。他の門兵が制服と兜をビシッと着用しているのに、制服を少し着崩している。顔立ちを見ると、この門兵はずいぶん年が若い。


「ニーナ。お前が抱えている生き物は何だ? 見たことないぞ」


 ニーナはぽかんとした様子。


「えっ? ウサギだけど」


 そこへ、制服と使い込まれた兜をビシッと着こなしているベテラン門兵が出てきてくれた。


「お前は若いから見たことないのか。そりゃあ、ウサギだ。最近は魔獣が増えてめっきり見なくなったんだがな……」


「うっ、ウサギだって!? 兵長、私は初めて見ましたよ。ウサギなら危険はないですね。ニーナ通って良いぞ」


 なんて一幕があった。この世界ではウサギがかなり減っているみたいだ。


 門をくぐってすぐの所で、見覚えのある人影が――そこにいたのは、チェイスとリージュだった。町を案内してもらった時に別れて以来、まだそんなに時間が経っていない。どうしたんだろう。


「あれ? どうされたんですか? チェイスさん」


 こちらに気付くなり、チェイスは一瞬固まり、ぎこちなく話し始めた。


「アア、グウゼンダナ、キリト」


(いやいや棒読みですって)


 どうやら、何か僕に知られたくない理由があって、ここに滞在していたようだ。


「あの後、キリトとニーナがパーティを組んで薬草採取に行ったとギルドで聞いてな」


 チェイスがウィンクしてきた。すると、少し離れた場所にいたリージュがこちらに気付き、駆け寄ってきた。


「心配したんですよ。キリトさん」


 僕の両肩を掴み、身体を前後に揺さぶる。心配していたというのは本当のようだ。


「僕は攻撃力ゼロですからね。御心配をお掛けしました」


 手で後頭部をポリポリと掻き、アハハ……という雰囲気で話す。


 実際、町の外に出てみて痛感したが、冒険者ではない一般人が町の外を歩くのは危険だ。さっき遭遇したホーンラビットも強い魔物ではないと思うが、それでも心臓を一突きされれば、すぐにあの世行きだろう。


 リージュハッとして、目線を下に逸らしてしまった。


「いえ、そういうことではなくてですね」


 リージュは頬を赤くして膨らませている。何か失礼なことを言ってしまったか不安になる。


 チェイスが僕の耳元に顔を近づけ、


「こいつ、焼きもちを妬いているんだ。分かってやってくれ」


 僕も小声でチェイスに返す。


「えぇ!? 焼きもちって」


「ほら、命の危機を助けて貰ったんだ。王子様にだって見えるってもんだろう」


 改めてウィンク。そういうものなのだろうか。


「あの、チェイスさんとニーナは知り合いなんですか?」


「そりゃあ、ミーナの妹だからな。良く知った間柄よ」


 僕とチェイスの会話を余所に、リージュとニーナが何やら話している。何の話をしているんだ?


<<お二人は、キリト様がちょっと変わった冒険者で、将来有望ということで意気投合しているようです>>


(ナビさん、盗み聞きは良くないって。でも、本当?)


<<……>>


 おいおい、肝心なところで黙るなよ。気の利かないやつだな。


 チェイスが手をパンパンと鳴らす。僕らの視線は自然とチェイスの元に集まる。さすがは最年長者、且つ、パーティリーダのチェイスだ。


「ニーナ。今晩、我が家へ夕食を食べに来ないか? もちろん、ミーナも一緒に」


「えぇ? 良いの? お姉ちゃん喜ぶと思うなぁ。何かお祝いでもあるの?」


 僕の肩にチェイスが腕を回し、グイと引っ張られた。


「俺たちの命の恩人『キリト』の歓迎会だよ」


「そんなの悪いですって」


 目の前で、リージュが視線を地面に落とし、何やらモジモジとしている。


「あの……えっと……」


 コホン、と一つ咳払いをしたチェイス。


「リージュが手料理をご馳走したいんだと」


「兄さん、そんなストレートに言わないで下さい」


 ドッドッドッ、何だか鼓動が強く感じる。少し緊張しているのか? 女の子の手料理をご馳走になるなんて経験はなかったから、それも当然か……。ここは男らしく――。


「それは嬉しいです。では、今晩夕食をご馳走になりに伺いますね」


 今度は僕がチェイスにウインクをしてみた。『どうだチェイス僕だってやるときはやるんだぞ』という意思を込めて。


 だがmチェイスは僕に顔を近づけ、「男がウインクなんてするもんじゃないぞ」だって。何かにつけてウインクを飛ばしてくるクセに……どの口が言うんだか。


 僕らは納品があるので、一度ギルドへ赴き、チェイスさんのご自宅へ伺うことにした。


 ■  □  ■  □


 ギルドに到着すると、ミーナは受付に大量に積み上げられた書類を捌いていた。


 目に明らかな疲労感が浮かんでいた。


「ただいま。お姉ちゃん!」


 ミーナはその声を聞くと、ハッと顔を上げた。


「ニーナ、おつかれさま。無事に薬草採取できた?」


 にっこりと微笑むミーナ。他の冒険者達も、この笑顔で疲れが癒やされるんだろうな。


「薬草もなんだけど、ウサギも収穫してきたよ」


「ウサギを『収穫』ですって?」


 ミーナは椅子をバンッと倒して立ち上がった。


「本当だ。最近魔獣が増えてしまって、ここ数年ウサギの目撃例も無かったのに。本当、珍しい――」


 ミーナは慈しむような目でウサギを見つめていた。


「この子、ホーンラビットだったんだよ。キリトが角を消しちゃったの」


「はぁぁぁ? 何言ってるの! ホーンラビットはもっと大きいでしょう? これは普通のウ・サ・ギ! それに角が消えるって……」


「角が消えたら、ちっちゃくなったの!」


「んーダメだわ。今日はちょっと疲れてて、もう頭が回らないわ。薬草だけ受け取っちゃいましょう」


 誰だって、このウサギだけ見たって信じられないと思う。それにホーンラビットが小さくなるだなんて、魔法じゃあるまいし。誰がそんなことを信じられると言うんだろう。

 

 ウサギの話を一旦終わりにして、僕はニーナの指示通り、カゴごと薬草を提出した。


 ミーナはカゴの中から薬草を取り出し、品質の確認を済ませた。


「これで、銅貨2枚って所ね。ニーナ、キリトさんお疲れ様でした」


 初めての報酬を受け取る。ニーナと半分に分けても、僕の取り分は銅貨1枚。何とか宿代を確保できたぞ。ニーナはウサギを愛でていただけなのが、少しズルいと感じるけれど……。


「そうだ! 今日、チェイスのお家で、キリトの歓迎会をするんだって! お姉ちゃんも来てだって!」


「えぇ!? そうなの? じゃあ、仕事終わって、着替えだけ済ませたら行くわね」


「お姉ちゃんって、チェイスにお呼ばれすると、いつもおめかしするよね」


「なっ!? そんなことないけれど……」


 ミーナの目が泳いでいるのを、僕は見逃さなかった。

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