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攻撃力0の【救済者】〜魔物を殺さず『元の姿』に戻してたら、いつの間にか伝説級メンバーのリーダーになっていた件〜  作者: おとしごと


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005話 嵐を呼ぶ少女ニーナ登場

□005話


 引き続きザインはすやすや眠っている。英雄と呼ばれるような一流冒険者であれば、寝ているときも周囲に気を張っているはず。だが、このときのザインの寝顔は緊張感のかけらも無く、子供のように純粋で穏やかな寝顔。


 どれだけの間、ザインが不眠だったか分からないが、ゆっくり寝かせてあげたい。


 新入り冒険者のクセに生意気かもしれないが、僕は人差し指を口元に持って行き、


「皆さん、静かにして下さい。ザインさんを寝かせてあげましょう」


 と周囲を落ち着かせる。


「みんな静かにするんだ」


 ベテラン冒険者の何名かが、静かにするよう周囲に指示を出す。年の功とはまさにこのことだ、ありがたい。

 

「逆らうと蹴られるぞ! 気をつけるんだ!」


 冒険者達が皆一斉に首を縦に振った。


「いや、そっちかい! じゃなくて、僕は暴力反対ですし、ザインさんのためにもお願いします」


「「「「了解しました!!」」」」


 何だか、ギルド内空気感がおかしい気がする。話を切り替えないと僕のメンタルがおかしくなる。


「ミーナさん、このままここでザインさんを寝かせておいたら失礼ですよね。何とかなりませんか?」


 ミーナがにっこりと微笑む。


「大丈夫です。ギルド内に簡単な宿泊施設がありますから、そこで休ませておきます」


 受付嬢一人の指示で、ギルド職員さん達が集合。あっという間にザインを担架に乗せて搬送していった。ミーナがただの受付嬢だと思えない光景だった。


 そして、現在は手際よく冒険者達を解散させている。皆、ミーナの指示に素直に従い、反抗する者はいない。彼女は一体どんな経歴の持ち主なんだろう。


 色々と思うところはあったけれど、僕はここでじっとしている他なかった。近いうちにザインに謝罪させて貰おう。


 冒険者達が散りじりになり、ようやく静かになった。そんなタイミングでミーナがカードを取り出した。


「さて……これがキリトさんのギルドカードですよ」


 僕はカードを受け取る。手のひらサイズの薄いカードだ。


 名前、職業、レベル、ステータスなどが記載されている。


 攻撃力がゼロ。これは誰も傷つけたくない僕にピッタリ……だったはずなんだけど。


 この一日でオークを消し去り、ザインを失神させてしまった。何だかおかしい。


「ありがとうございます。無くさないようにしなくちゃいけませんね」


「カードの出し入れは簡単なんです」


「出し入れですか?」


「頭の中でしまおうと思えば手から消えますし、出そうと思えば手元に現れます」


 本当だった。どんな技術が使われているのか分からないが、とにかく出し入れは簡単だった。


 きっとマジックバッグや魔石と同じで、僕の知識ではまだ分からない『魔法の力』が活用されているのだろう。


「ギルドカードも無事にできたみたいだな。じゃあ、町を案内するよ。キリト」


「いきましょう、キリトさん」


 チェイスとリージュに促され、ギルドを出ることに。


「ミーナさん、ありがとうございました」


「これから期待していますよ。キリトさん」


 握手の後、僕の耳元に顔を近づけて、


(君はきっと、将来いい男になるよ)


 とお褒めの言葉を頂いた。


「さあ行きましょう! キリトさん」


 ちょっとお怒り気味のリージュに手を引っ張られ、ギルドを後にしたのだった。


 ■  □  ■  □


 小さな町だと聞いていたが、そんなことはない。実に大きな町だった。


 例えば宿屋。宿で言えば、食事無しで安く宿泊できることを売りにしている店や、食事やベッドの品質をアピールする高級宿もあるといった感じで、バリエーションに富んでいた。


 武具屋も同じ感じ。初心者用のたたき売りのような剣を樽に雑に突っ込み気に入ったものを選ぶ店もあれば、選りすぐりの剣が陳列され店主に取って貰い初めて手に取れる高級店もあった。


 高級店まで案内してくれるクセに、「あの店は貴族か、一流冒険者しか使わない」というチェイス。どういうわけだか、どの店に行っても店主とチェイス達が顔見知りのような口ぶりだった。


(チェイス達は、ただの冒険者にしてはどの店にも顔が利きすぎじゃないか?)


 なんて思うこともしばしばだったが、知り合ったばかりでプライベートに踏み込むのも気が引けて、この件はチェイス達に聞きそびれてしまった。


 町の様子に驚いたのはそれだけではない。荷馬車の往来も盛んで、物流も盛んなようだったのだ。信号も無く、馬車の交通ルールの分からない僕は、何度もぶつかりそうになってしまった。


 これだけ大きな町なので、まずはこの町を拠点として過ごして、この世界の事を学んでいくべきだろう。


 この世界のお金についてもチェイス達に教わった。


 小銅貨、銅貨、銀貨、白銀貨、金貨、白金貨などがあるらしい。


 小銅貨で串焼き一本。銅貨1枚あれば安宿に一晩泊まれるとのことだが、今の手持ちはゼロ。このままでは野宿するほか無い。昼の様子を見る限り町の治安は良さそうだが、野宿はさすがに怖すぎる。


 宿に泊まるためにお金を稼ぐ方法を聞いたが、ギルドで仕事の斡旋を受けるのが簡単なのだそうだ。


 最後に、チェイス達は自宅を案内してくれようとしたが、僕の事を信用しすぎだ。


 丁寧にお断りさせて頂いた。


 少し寂しそうなリージュの瞳に、僕は心底申し訳なさを感じたが、さすがに失礼だよね。


 ■  □  ■  □


 依頼探しのため、僕は一度ギルドに戻ることにした。


 ギルドに入るなり遠くから『英雄蹴りのキリト凄かったぞ』などと話し声。


 目立って良い事は無いだろうから、フードを深く被り、身体を小さくして自分を隠す。


 依頼掲示板のランクFでは、受注できる依頼は少ないようだ。


 掲示板全体の端っこの方に、ランクF専用の依頼書が貼り付けられていた。


 とは言っても、弱い魔物の討伐、薬草採取、ドブさらいなど町の清掃作業、捜し物の手伝いなど、依頼は多岐にわたる。


 魔物とは言え、生き物を傷つけるのは嫌だから、薬草採取の受注で決定。


 依頼書に手を伸ばすと、横から伸びてきた手に腕を掴まれた。


 隣を見ると、見知らぬ女の子がいた。


「あなた、『英雄蹴りのキリト』でしょう? 私とパーティを組みなさいよ!」


 まだこの世界の事は良く分からない。知らない人とは関わらない方が良いだろう。


「ごめんなさい」


 しっかり、否定の意思を表明した。


 この行為は大切な事だと思っている。ちゃんと発言すれば伝わるし、発言しなければ伝わるものも伝わらないからな。


 けれど、しばらく経っても手を離してくれる様子は無い。


 仕方ないので、依頼書に反対の手を伸ばす。


 ガシッ。


 再び手を捕まれてしまった。これで両手とも使用不可。


 だったら、受付のミーナに頼むか。


 ミーナのいる受付に振り返ろうとした所で、ゴツンと、隣の女の子の頭の上に拳が落ちる音がした。


「ニーナ! キリトさんに絡むのやめなさい!」


 隣に、怒り心頭のミーナが立っていた。


「痛いなぁ。お姉ちゃんが言ったんでしょ! 将来いい男になりそうな男の子がいるって」 

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