表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
攻撃力0の【救済者】〜魔物を殺さず『元の姿』に戻してたら、いつの間にか伝説級メンバーのリーダーになっていた件〜  作者: おとしごと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/12

012話 黄泉がえりの亡霊騎士戦

□012話


 北門を出てすぐ、街道は大きく二手に分かれた。


 そして、今回僕らが向かう右側のルートには封鎖中の標識。街道を塞ぐように、左右に杭が打ち込まれワイヤーが張られていた。


 道の中央は塞がれているし、これで荷馬車や行商人はこのルートを選択しないで済むだろう。


 まぁ、僕らみたいに徒歩で通り抜ける分には、何の規制にもならないんだけどね。僕らは杭の脇を抜けて、街道の奥へと進んでいくことになる。


「フェイントを教えるね、キリト。魔獣が出たらね、右に行くと見せかけて左に行って――」


 冒険者として先輩風を吹かせるニーナ。これまでミーナさんに見守って貰ってきたみたいだから、遠出の経験としては僕と大して変わらない気もする。とは言え、ムードメーカーとして心強い存在だ。


「モフ吉、あなたはかわいいわね~。良い子ね~」


 ミーナはモフ吉をギュッと抱きしめて移動している。戦闘にウサギを連れてくのは危険だと思うが、モフ吉から離れる事をミーナが良しとしなかった。


 チェイスは最前線で前方を、ベックが最後方を警戒している。リージュは中央でいつでも魔法を行使できるように準備中だ。


 警戒を怠らない三人を余所に、僕とミーナとニーナは遠足気取りだ。これから『黄泉がえりの亡霊騎士』と一戦交えようとしているなんて信じられない。


 しばらく街道を進むと、次第に薄らと霧が目立つようになってきた。チェイスが立ち止まり、後ろを振り返る。


「ギルドの資料によれば、この霧の中心に『黄泉がえりの亡霊騎士』がいるらしい。少し注意していくぞ!!」


 しばらく進んでいくと、霧が濃くなり、上空を暗雲が立ちこめるようになってきた。暗雲と霧の影響で、日の光も碌に差し込まない、陰湿な雰囲気となってきた。


(ナビさん、亡霊騎士の気配は察知できる?)


<<今のところ検知できません>>


「お姉ちゃん、隣から離れないでよ!!」


「はい、はい。いつまで経っても甘えん坊なんだから」


 ニーナが少し不安になってきているようだ。元気印のムードメーカーがこの様子だと、本番が心配だ。


 チェイスの進行速度が少しずつゆっくりになってきた。これまでの冒険者の経験から、何かの気配を察知しているのだろうか。


「兄さん!! 随分亡霊騎士に近づいてきたみたいです」


「皆、そろそろみたいだ。慎重に行くぞ」


 ――とそこで、ナビさんの声が聞こえた。


<<警戒。亡霊騎士まで300メートルを切りました>>


「チェイスさん、僕も亡霊騎士の気配を感じ取りました。でも、この距離ではまだ詳しく分かりません。もう少し進みましょう」


 慎重に、慎重に距離を詰めていく。残り200メートル。チェイスの歩みの幅が徐々に小さくなっていく。


 残り150メートル。ベックが一際強く剣を握り直していた。


 残り100メートル。ここで停止を指示。心臓の音が大きく響いている。


 亡霊騎士に動きはない。ここで亡霊騎士を捉えられるか?


<<亡霊騎士と会敵。計測。亡霊騎士のMP5です>>


 MP5。これまで、オークやホーンラビットはきっとMP1だった。だから一撃必殺で処置できた。


 けれど、亡霊騎士はMP5もある。一撃必殺とはきっといかないだろう。


(ナビさん、もう少し何か分からないかな?)


<<戦闘開始時に消費MP2で身体強化するようです。行使後、硬直時間がある模様>>


 MP3を削りきれば勝てるのか。


(MPダメージって、連射は出来ないよね?)


<<キリトの言葉で5秒の間隔。この間隔で行使できます>>


 一発目を上手く入れたとして、その後約10秒間亡霊騎士を押さえ続けないといけないのか。


 僕はこれまでで分かったことを皆に共有した。秒という概念が伝わるか分からなかったので、「いぃーち、にぃーい……」という小学生みたいな伝え方で必要な時間を共通認識にした。


 それから、戦闘開始直後の硬直時間を利用して、距離を一気に詰める作戦を伝えた。


「チェイスさん、分かったことと僕の考えた作戦はここまで。どうしましょうか?」


「あぁ? このチームのリーダはキリト、お前だろう? なぁんて、野暮なことは言わないさ。オレは倒せると見た。ミーナは?」


「私はモフ吉がいれば大丈夫。具体的にはそうね。キリトの数え方で30までは全力で戦えると思うわ」


「ベック、リージュは?」


 言葉は発しないが、首を縦に大きく振るベック。


「私は魔法で亡霊騎士の足下を拘束します。魔法発動にタイミングを合わせて下さい」


「アタシは避けるのは得意だから、亡霊騎士に突進するよ! キリト、後ろに着いてきなさい」 


「じゃあ、モフ吉、私たちの応援を宜しくね」


 ミーナがモフ吉をカゴに入れて、道ばたに置いた。

  

 そして、黒い甲冑に身を包んだ亡霊騎士と相まみえたのであった。


 ■  □  ■  □


 亡霊騎士が僕らを認識したようだ。


「オォォォォォ!!」


 甲冑の周囲が、黒いオーラのようなもので覆われた。


 騎士の威圧感で、一瞬、弱気になる自分がいる。


 今が硬直時間のはずだ。先程皆で決めた作戦を愚直に実行する。


「氷よ、彼の者の足下を氷で拘束したまえ。氷鎖!」


 リージュが杖を地面に突き立てるとほぼ同時に、亡霊騎士の足下が氷で拘束された。


 これで亡霊騎士は拘束された。


 次に、左右からチェイスとミーナの同時攻撃で両手の自由を奪う。


「てやぁぁぁ!!」


「ほらよっとぉぉ!!」


 亡霊騎士は右手に剣を、左手に盾を持っていた。


 だが、チェイスとミーナの攻撃を防ぐため、左右に割り当てざるを得ない。


「さぁて、ついてきてよね! キリト!」


 正面を突破するニーナの後ろをついていく。


 あと一歩の所で、チェイスが振り払われる。


 そして、そのままの勢いで剣がニーナの元へ。


 が、そこをベックが間一髪の所を盾でガッチリ食い止める。


 ニーナは亡霊騎士の横を走り抜け、その抜け際に亡霊騎士の視界を覆う黒布を貼り付けた。


 そして、僕は亡霊騎士の鎧に手を当て――


 ■  □  ■  □


 ――そして、亡霊騎士の悲しみが伝わってきた。


 元々は某国の騎士。愛する家族のため、剣を捧げた主君のため、命がけで剣を振るって生きてきた。


 主君の護衛で通過したこの街道で、命を落とした。


 敵は身内にあったようで、主君の弟がこの街道に手駒を配置し、主君の命を狙ったもののようだ。


 賊側の手練れに見覚えがあった。奴は弟側の騎士団の者だった。


 そうして、ここで命を落とした騎士の不幸は、それだけで終わらなかった。


 どういうわけか、魔素の多いこの地で、亡霊騎士として蘇ってしまったのだ。


 更に、討伐されても蘇り、討伐されても蘇り。何度も、何度も終わりのない死を体験する恐怖。


 解放されたい。解放されたい。誰か解放してくれ――


 ■  □  ■  □


 僕には亡霊騎士の思いが伝わってきた。


(ナビさん、いける? 本当に成仏したがっているんだ。彼の力になりたい)


<<可能です。亡霊騎士MP3に対し、MPダメージ1を与えました>>


「ヌォォォォ」


 ベックが力一杯亡霊騎士を押さえつけてくれている


「ダァァァ!」


 ミーナも短剣越しに何とか耐えてくれている。


<<MPダメージ1を与えました>>


「アァッ!?」


 ミーナの短剣が弾かれた! 重厚な盾が僕を潰しに掛かる。


「甘い!」

 

 チェイスがすかさず、身体を入れ、盾の進行を食い止めた。


<<MPダメージ1を与えました。亡霊騎士MP0を確認>>


 亡霊騎士の身体が淡い光に包まれる。


(あ……り……がと……う)


 黒い甲冑の隙間から、かつての誇り高き騎士の素顔が一瞬垣間見えた。


 ようやく解放されるという安堵の表情だったと思う。少しでも、あなたの役に立てたなら良かった。


 亡霊騎士の身体が光となって消えていき、辺りを覆っていた霧や暗雲も姿を消していった。


「お疲れさま!! キリト!!」


 バシィーンと、ニーナの平手が僕の背中に入る。


 突如、膝の力が抜け、続いて全身の力が抜けて、地面にへたり込みそうになる。


「ちょっと、大丈夫!?」


 倒れそうになった僕の身体を、ニーナが支えた。


「キリトさん大丈夫ですか? 顔色が良くありません」


 リージュも心配して駆けつけてくれた。


「ニーナ、リージュさんありがとうございます。想像以上に精神力を酷使したようです」


 リージュはこんな時でも冷静だ。


「魔法に似たところがあるのかもしれません。魔法も酷使すると、意識を失いそうになります」


「少しだけ休めば大丈夫です」


 僕が弱々しく笑うと、チェイス達も安心したようだった。


 僕自身の力は大したものじゃないけれど、みんなの支えがあれば、頑張っていけそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ