高校入学
俺は棚に置いてある写真を取った。後ろから姉の声が聞こえた。
「はやと!友達が来てるよ」
俺は写真を棚に置いて、玄関に向かった。
あの3年間は忘れることのない思い出だ。
♢♦︎♢♦︎
桜が散る少し前、俺、白雲隼人は県立海名ヶ丘高校に入学した。
校門から下駄箱まで少し距離があった。これから俺の新しい学生生活が始まるんだ。
下駄箱の前に着くとクラス分けの紙が張り出されていた。
「えーーっと俺は……どこだ?白雲、白雲……っと見つけた。9組か」
俺は下駄箱に靴を入れ、新品の上履きをカバンから出して履いた。その後、1年9組のある4階に向かった。
教室に入るともうすでにたくさんの人がいた。俺は自分の荷物を机の横に掛けて椅子に座った。
「えーー、私もそこの化粧水使ってるよ」
「ほんと?ここの化粧水マジでお肌プルプルになるよね」
女子同士の会話が耳に入ってくる。
「この近くに昼しかやってないラーメン屋があるんだよ。今日一緒に行こーぜ!」
「のった」
男子同士の会話も聞こえてくる。他の人たちは周りと馴染んでいるようだったが俺は誰かに声をかける勇気があるわけもなく、耳にイヤホンをつけて音楽を聴いた。
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「ねぇー君。ねぇーってば」
そう言いながら前に座っている女子が話しかけてきた。
俺はイヤホンを取った。
「何聴いてるの?」
「miraiの明日の私へ」
「えぇぇ。mirai知ってるの?なかなか知ってる人いなくてさ、マジで神曲ばっかなのにみんな聞いてないってもったいないよね」
「あ、はい」
彼女は初対面にも関わらずグイグイとくる。
「あっ!ごめん。自己紹介まだだったよね。私は東雲葵。下の名前で葵って呼んでね。君の名前は?」
「白雲隼人です……」
「隼人くんかーー。いい名前だね。そうだ、隼人くん連絡先交換しよ?」
そう言われて俺は高校生になって初めて、連絡先を交換した。
すると次々と東雲さんにクラスの人たちが話しかけ始めた。
「私も交換していい?」
「いいよ!」
東雲さんの周りにたくさんの人が集まった。またもや1人になってしまった俺はイヤホンをつけ直して音楽を聴き始めた。
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しばらくの間音楽を聴いていると教室に担任が入ってきた。担任は短い黒髪に整った顔立ちの先生だった。
「みなさん。静かにしてください」
席を立っていた生徒は自分の席に戻った。俺もイヤホンを耳から外した。
「私はこのクラスの担任になりました近藤花蓮です。担任として初めて持つクラスですがよろしくお願いします」
教室がザワザワとし始めた。「めっちゃくちゃ美人じゃね?」や「彼氏とかいるのかな?」であったりなどそういうザワザワが多い。
「えっと……みなさんに自己紹介をやってもらいたいのは山々なんですけど、これから入学式を行うので出席番号順で廊下に並んでください」
俺たちは廊下に一列に並んだ。そして体育館に向かった。
♢♦︎♢♦︎
入学式は前から1組、2組、……と出席番号順に座っていった。俺は東雲さんの隣だった。
入学式では1人1人の名前が呼ばれる。呼ばれると席をたち大きな返事をしていく。
「7組、浅野悠河さん」
「はい!」
「……………………東雲葵さん」
「はい!」
「白雲隼人さん」
「はい!」
「………………森下翔海さん」
「はい」
「………………渡邉翠さん」
「はい!」
「以上40名」
俺たちは再び椅子に座った。座る瞬間、東雲さんがこっちを向いてニコッと笑い、口パクをした。東雲さんが俺に何を伝えたかったのかわからなかった。だけど俺の頭から離れなかった。
「それでは合唱部より新入生のみなさんに校歌を贈りたいと思います」
合唱部の生徒たちがステージに立ち、校歌を歌った。すごい綺麗な歌だった。
こうして長かったような短かったような入学式は幕を閉じた。
♢♦︎♢♦︎
俺たちは教室に戻った。
「それではみなさんに自己紹介をしてもらいたいと思います。そうだなーー好きな食べ物と最近の趣味についても自己紹介に入れてください。では浅野くん、お願いします」
すると浅野くんは立ち上がり教卓の前に立った。浅野くんは金髪で絶対陽キャだろと思うようなイケメンだった。
「浅野悠河です。えーっと、好きな食べ物はすき焼きで最近はギターにハマっています。軽音楽部に入ろうと思っているのでよろしく」
「悠河くんめっちゃくちゃかっこよくない?」女子たちがザワザワしだした。次に自己紹介するやつかわいそうと俺は思った。
自己紹介が進み東雲さんの番が来た。
東雲さんは長い黒髪で、整った顔立ちをしている。彼女はラブコメでいうところの高嶺の花的存在なのだろうと思った。
「東雲葵です。好きな食べ物はにんにくマシマシの家系ラーメンです。歌うことが趣味なので軽音でボーカルやろうと思ってます。よろしく」
まさか東雲さんのような人からにんにくマシマシの家系ラーメンなんて言葉が出てくるなんて思わず周りは驚いていた。これがギャップというやつか……。
そしてとうとう俺の番がやってきた。
「白雲隼人です。好きな食べ物は寿司です。音楽を聴くのが好きです。よろしくお願いします」
拍手だけがなった。俺の自己紹介はいっさいザワザワせずに終わった。
さらに自己紹介が進んだ。
「森下翔海です。中学ではサッカーをやってましたが高校では軽音楽部に入ろうと思ってます。趣味でドラムをやっていたのでドラム志望です。好きな食べ物は虫以外です。よろしく」
「虫以外って笑笑」教室に笑いが溢れた。森下くんは赤い髪でスポーツマンガの主人公のような雰囲気を漂わせていた。
そして最後の1人になった。
「渡邉翠です。僕が好きなのはハンバーグです。趣味はギターで、軽音楽に入ろうと思ってます。よろしく」
渡邉さんは童顔、緑髪ショートヘアで幼い感じが漂っている。それに僕っ子なのだ。その2つがマッチングした暁には……
「きゃー、翠ちゃんかわいいーーー!!」
こうなる。女子からめちゃくちゃ人気が出る。
これにて全員の自己紹介が終わった。
「みなさん自己紹介ありがとうございました。今日はあと必要な書類を配って終わりです」
書類を配り終えるとみんなは次々に友達と帰っていった。一方、俺の今日の収穫といえば連絡先交換が1人、友達が0人だった。俺は1人寂しく家に帰った。
♢♦︎♢♦︎
白雲家。
「はやとー。お母さんとお父さん今日帰ってこれないらしいから夕食宅配ピザでいい?」
「うん」
俺の家族は4人家族で、5つ離れた姉がいる。姉の名前は白雲玲奈。姉ちゃんは美容師の専門学校に通っている。母親が仕事だったので今日の入学式は姉ちゃんが見にきていた。
ピンポン。
宅配ピザが届き、姉ちゃんと一緒にピザを頬張った。
「はやと、高校1日目はどうだった?友達できた?」
「まぁ……」
「友達……できてないんでしょ?なんで嘘ついたの」
「姉ちゃんには関係ないだろ」
俺の全てはお見通しらしい。痛いところついてくるな……。
食べ終わり、片付けをして、風呂や歯磨きなど寝る準備を済ませると俺は寝室に向かった。
寝室にあるベッドに横たわり、スマホを開くと通知がきていた。東雲さんからだ。
「明日からもよろしくね」
その一文を見て俺は少し嬉しくなった。そして俺は一言を送る。
「こちらこそよろしく」
俺はそのまま眠りについた。今日はなんだか色々な意味で疲れたな。だけど明日からが少しだけ楽しみだと感じた。




