こどく
「……そっちの門をくぐるのか? さっき説明した通り、その道に進むと……」
「ええ、ちゃんと理解しています。その上でそうしたいのです」
「そうか……分かった。通って良いぞ」
しばらくして、また新たな人間がやってきた。この場所の説明を聞いた後、先ほどの人間がくぐって行ったのと同じ門に向き直る。
「……お前もそっちの門をくぐるのか?」
「はい」
「考え直す気はないか? そっちに行くと、二度と戻って来れないんだぞ?」
「お気遣いありがとうございます。でも、それが私の望みですから」
「……分かった。通れ」
一礼して門をくぐった人間の姿を見送って、門番はため息をつく。
憂鬱そうな門番のそばには、白い門と黒い門とが建っている。
白い門の先に続くのは、いわゆる生まれ変わりの道。もう一度人間として生を受けることが出来る。
黒い門の先に続くのは、終焉の道。この道に進むと、もう二度と地上で生を受けることが出来ない。
どうにも最近、黒い門をくぐる者の数が増えているなと門番は感じた。
門番はこれまでにやって来た人間たちのことを振り返る。
人間として再び生まれ変わることを望むのは、他人に気をつかうことなく我を通し、己の思い通りに生きる者が多かった。
さぞかし人生を謳歌したのであろう。生まれ変わりを望むのも当然だ。
逆に終焉を望むのは、他人に配慮し続け、それがゆえに生きづらさを抱えているような者が多かった。
次の人生でまたつらい目に合うくらいなら、いっそ全てを終わらせたいと思っても不思議ではない。
門でのやりとりを長く繰り返してきた門番はふと思う。
このままでは、他人を思いやれる人間がどんどんいなくなるのではないだろうか?
その結果、少しずつ息苦しい世の中になっていく気がしてならない。
生まれ変わった者の中にも、やがて自分本位で生きられなくなり、他人のために心をすり減らす者が出るだろう。
そんな生き方を続けて人生を終えた時、今度は白い門ではなく、黒い門を選んでしまうかもしれない。
二つの門による選別を繰り返した世界。
最後に残るのは、一体どんな人間であろうか?




